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[ パスティーシュ/パロディ/ユーモア ]
死体狂躁曲
パミラ・ブランチ 出版月: 2022年11月 平均: 4.50点 書評数: 2件

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国書刊行会
2022年11月

No.2 4点 ボナンザ 2023/06/25 19:55
これまたまあ埋もれていても・・・な一作。この手のユーモア系は波長が合わないと楽しめない。

No.1 5点 人並由真 2022/12/29 09:10
(ネタバレなし)
 第二次大戦からしばらくたった英国のチェルシー地方。 青年ベンジャミン(ベンジー/ベン)・カンは、恋人レイチェル・ボルガーを絞殺して逮捕されるものの、なんとか捜査陣と法廷を欺き、無罪の判決を勝ち取った。そんな釈放されたカンに接触するのはクリフォード・フラッシュなる人物。実はこのフラッシュは、三人の人物を殺した嫌疑で逮捕され「ペリオール(地方)の殺戮者(ブッチャー)」の異名をとりながら、やはり無罪の判決を受けた過去があった。フラッシュがカンを招いた組織「アスタリスク・クラブ」。そこは、フラッシュやカン同様、殺人の嫌疑で法廷に立ちながら、無罪の判決を受けて釈放されたものばかりが集う組織である。クラブには、さる入会の条件があり、仲間となるか一時的に判断を保留したカンは、フラッシュの計らいで、クラブの近所の、二組の若夫婦が共同経営する下宿家にとりあえず宿をとった。だがそんな下宿の周辺で、いきなり死体が登場して。

 1951年の英国作品。
 作者パミラ(パメラ)・ブランチは、あのクリスティアナ・ブランドの盟友だった女流作家だそうで、その辺の事情もあって、日本でも1990年代から一部のマニアが注目。今回の「奇想天外の本棚」叢書の一冊として刊行された本作『死体狂躁曲』も、すでに同じ翻訳者・小林晋氏の同人翻訳『殺人狂躁曲』として刊行されていた。
(というか正確には、ほぼ30年前の翻訳『殺人~』の訳稿を推敲して一般販売の商業刊行物として発刊したのが、今回の新刊であろう。)

 評者も30年前の同人版は購入できなかったので(というか正確には当時は存在すら知らなかった)、今回の新刊でのある意味、復刻的な刊行を楽しみにしていた。

 で、感想だが、う~ん、つまらなくはないが、正直、そんなに面白くもなかった、という感じ。

 今回の新刊での邦題が暗示するように、物語上のある「場」に思わぬ死体が登場。さる事情というか、個々の人物の思惑のすれ違いから警察への通報は控えられ、その死体の処理、隠匿をめぐってドタバタ騒ぎが発生するという趣向である。
 いや、たしかに設定だけ聞くと、ブラックユーモア味を盛り込んだスラプスティック・ミステリという趣で、楽しそうなのだが、個人的には、「え? その程度の理由でそういう事態になるの? もっと話し合ったらいいじゃん」という作劇上の了解にしくい側面が目立つのが、まず減点材料。
 さらにドタバタ大騒ぎはいいのだが、山場の起伏を考えてあるようで、実際には悪い意味で、串団子状に以降も事件が続発(くわしくは中盤のネタバレになるので控えるが)。
 お話にメリハリが乏しく、いささかお全体的に冗長。
 正直、最後の方は結構、眠かった(汗)。

 また、クライマックスの手前で、登場人物たちの意識が、そもそも真犯人は誰なのだ? というフーダニットへ関心を向けていく。そんな流れ、タイミングで謎解きものっぽくなるのは、とてもいい。
 が、まあ、このパターンなら、犯人はあの人で、動機も……なんだろうと予見したら、これが見事に正解(笑・汗)。
 ああ、やっぱりという思いで、あまり高い評価はやれない。
(ただし、動機の奥の動機というか、犯人の原動の事由の伏線などは、ちょっと面白かった。)
 
 というわけで、全体的にはちょっとこれは微妙かな? という感触。
 登場人物たちも書き込みはそれなりではあるものの、あまり、これという魅力的なキャラクターがいないのもちょっと残念。
 今年の同じ作者の、もう一冊の新刊『ようこそウェストエンドの悲喜劇へ』の方が、本作よりも楽しめるといいなあ。
 評点は、正に「まあ楽しめた」なので、このくらいの点数に留める。


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パミラ・ブランチ
2022年11月
死体狂躁曲
平均:4.50 / 書評数:2
2022年08月
ようこそウェストエンドの悲喜劇へ
平均:5.00 / 書評数:1