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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] メダリオン作戦 秘密諜報員モンティ・ナッシュ |
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リチャード・テルフェア | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
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No.1 | 6点 | 人並由真 | 2022/08/19 18:11 |
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(ネタバレなし)
全世界にスパイ網を張り巡らす秘密諜報組織「DCI(対敵諜報部)」。「私」こと30歳代初めのモンティ(モンゴメリー)・ナッシュは、今は同組織のロンドン本部に在籍する辣腕の実働工作員だ。そんなナッシュのもとに、無二の同僚である工作員ポール・オースチンが死亡し、しかも彼に裏切者の嫌疑がかかっていると情報が入る。そしてナッシュ自身も何者かによってDCI内の身辺調査書を偽造され、ポールの共犯の疑惑を掛けられた。ナッシュはDCIを脱走し、ポールが接触していた人妻でアマチュアスパイだったヘルガ・ド・ルーンに接触を図る。そんなナッシュの向かう先には、ポールが内偵を進めていたらしい秘密組織「メダル結社」の影があった。 1959年のアメリカ作品。20代半ばまで新鋭弁護士だったが、何らかの事情からスパイ稼業に鞍替えした青年工作員モンティ・ナッシュを主人公とするシリーズ、その原書での第一作目。 なおAmazonデータは不順だが、ポケミスは1966年2月に刊行。 日本では後年にリチャード・ジェサップ(『摩天楼の身代金』『シンシナティ・キッド』など)の筆名で改めて意識される作者が50年代の末に、007などのヒット(フレミングの本家は、この時点で6~7作刊行されていた)を背景に出版した、エスピオナージ活劇シリーズ。 ドナルド・ハミルトンのマット・ヘルムものが「~部隊」シリーズの邦訳タイトルで刊行されたように、こちらは5冊ほどだっけ? が「~作戦」の邦題シリーズでポケミスから発売されている。 ちなみに作者テルフェアは、あの『プリズナー№6』の前日譚と一部世代人からウワサされる(ホントかね?)連続ドラマ『秘密情報員ジョン・ドレイク』の小説版も60年代に手掛けている(ポケミスから邦訳あり)。 で、評者の場合は少し前に久々に、寝床で就眠前に石川喬司の「極楽の鬼」(早川版/講談社版)を読んでいたら、そーいや、マット・ヘルムものは最近になってちょびちょび読み出したが、こっちはいまだ手付かずだなあ、と再認識。くだんの「極楽の鬼」のレビューで、本シリーズの別作品について語った気になるポイントも目につき、気が向いてネットで格安のポケミス古書を入手して読み始めてみる。 (それにしても、ネットでの感想を漁っても、21世紀には本当に誰も読んでないシリーズだね。) それでシリーズ第一弾の本書の印象だが、主人公ナッシュがいきなり裏切者の嫌疑をかけられ、本来の所属組織から追われながら本当の敵らしい? 組織に接近するという大技(まあ、当時のシリーズものの一冊めとしては)から開幕。基本的にプロスパイの世界では孤立無援になったナッシュが続々とピンチに遭遇。または謎の組織の計画に協力の態を装いながら、諜報員としての経歴のなかで知り合ったアマチュアの友人知人に協力を求め、少しずつ反撃の手段を固めていく流れはそれなりに面白い。 小説面の文芸味(ある種のハードボイルドティスト)としては、ハミルトンなどの方が上だが、これはこれで読ませる。中盤、メインヒロインとなる「メダル結社」の年若い美女マリアが活躍するが、その愛犬で、よく訓練された犬を頼りにしながらナッシュが己の作戦を遂行するくだりなども結構、読ませる。 (一方でナッシュが注意して、外部に警戒した言動をとっていたつもりながら、ついありがちな人間らしい失敗をしてしまうあたりも、一人称での内省の叙述が効果を上げている。) 終盤の二転三転のどんでん返しについてはありがちなものながら、うまくサプライズの演出を考えてまとめてあるとも思うし、当時のB級(というか一流半か)スパイ活劇としては、思っていた以上に楽しめた。 ただし一方でこの時代~60年代の後半には、本家007やら前述のマット・ヘルムやらナポソロやらマルコ・リンゲやらボイジー・オークスやら、さらには上位クラスのクィーラーやら名無しの諜報員やらのスーパースターエージェントが群雄割拠。21世紀の今じゃ、忘れられているのも仕方がない、とも思う。 (あ、そういえば評者はまだ、スピレーンのタイガー・マン、一冊も読んでないな。) まあいずれにしろ、本シリーズも読めばそれなりに楽しめるということは確認。先に書いた通り、このシリーズの後々の巻でちょっと気になるっぽい作品があるので、少しずつ読んでいこう。 評点は6点だけど、悪い評価では決してない。 |