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[ クライム/倒叙 ]
気ちがいピエロ
ジョゼ・ジョバンニ 出版月: 1970年06月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1970年06月

No.1 7点 クリスティ再読 2025/07/02 16:48
本書の裏表紙でも訳者の岡村孝一の解説でも、ゴダールの映画にうまくひっかけて「ゴダールの同題の映画の原型となった奔放なギャングの破滅までを元ギャングの作者が生き生きと描く!」と書いていたりする。ウソを書いているわけではないが、そりゃゴダールの映画の原作だと誤解するよ(苦笑)なかなか早川書房も商売が上手である。というか、本当は「ル・ジタン」の原作という方が近い。

「気ちがいピエロ(pierrot le fou)」というのは、そもそもこの本の主人公である、実在のギャング、ピエール・ルートレル(Pierre Loutrel)の異名である。とはいえサーカスのピエロとは無関係で、そもそもピエールという名前の愛称の一つがピエロだったりするわけだ。このルートレルはフランスでは、ディリンジャ―みたいにちょいとしたサブカルヒーローになっていてマンガまであったそうだ。
本書はこのキャラクターを使ってジョゼ・ジョバンニが書いたフレンチ・ノワールのわけで、いや読んでいて面白い。ほぼ一気読み。評者はフランス産ギャング映画は好物だけど、ジョバンニは初読。趣味にはストライク。シモナンやブルトンは訳書が少ないから、一番訳書が多いジョバンニはちょっとやってもいいなあ。

本書はこの「気ちがいピエロ」の家族的な一味、貫目のあるボスのピエール、美男のサブリーダーのリトン、過激な若者のジプシーのジャック、地元情報担当のマルセルの4人組による、現金輸送を狙った強盗事件と、逃亡潜伏とそれに付随するいくつかの抗争事件から一味の壊滅に至るまでを描く。それぞれのキャラはキッチリ立っていて、会話も生き生きしてリアル。さらに話の半分ほどは流行りのバーを経営する堅実派のギャング(金庫破りのエキスパート)であるヤンの身に降りかかった妻の事故死と逃亡生活の話が交差する。ピエロ一味とヤンとどう交差するのか?というのがプロットの大きな興味。
ピエロ一味、ヤンを巡る人々に加えて、ジョバンニのシリーズキャラクターでもある捜査側のブロット警部たちを交えて話が進行する。

訳者は岡村孝一だから、もうそれこそ岡村節は絶好調。下世話で伝法な語り口が心地よい。国定忠治とかそういうものか....というと、いや何かホントに最後なんて水滸伝。いづれが林沖か魯智深か。


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