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[ ホラー ]
吸血鬼カーミラ
シェリダン・レ・ファニュ 出版月: 1970年04月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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東京創元社
1970年04月

亜紀書房
2015年01月

No.1 6点 クリスティ再読 2022/04/10 21:05
「ドラキュラ」「フランケンシュタイン」は書評済なんだけど、まだ本作やってなかった。「ドラキュラ」と並ぶ吸血鬼モノの真祖である。
でも「カーミラ」は中編。創元文庫のこの本は、レ・ファニュ傑作選のカラーも強くて、「白い手の怪」「墓堀りクルックの死」「シャルケン画伯」「大地主トビーの遺言」「仇魔」「判事ハーボットル氏」の6編を収録。

ホラーとミステリの違い、というと、ミステリは最後には謎をすべて解明することで結末になるわけだが、ホラーの場合には謎が謎のままで残ってもいい。というか、全部解明したりせずに、多少は謎のままで残っていた方が、よりホラー「らしい」。それでも20世紀のホラーでは「謎を解き明かす」ことに力点があることも多い。ゴーストハンターが名探偵の変形になるわけでもある。なら解明重視は「ホラーのミステリとの交雑現象」と見てもいいのかもしれない。
でもレ・ファニュは19世紀的なホラーだから、「解明」のウェイトが薄いんだよね。だから「なぜ」が語られないケースが結構、多い。そこらへん、ミステリ読者のニーズをやや外している印象がある。

それでも超越的なモンスターなら、「なぜ」はあまり重要じゃないか。「悪魔」を思わせるキャラが登場する作品も多いから、民話みたいなカラーも出てしまうこともある。「大地主トビーの遺言」は親の意固地な遺言で対立しあう兄弟の話で、その親が憑依したブルドッグが...という展開になるんだが、訳者は平井呈一で洒脱かつ下世話な東京弁で訳されるので、あたかもシュール系落語を読んでいるかのような読み心地。いや「らくだ」とか不気味ネタ落語ってあるし、怪談噺も落語のうちだからねえ。

なので、今一つピンとこない作品も多いのだが、さすがに「カーミラ」は面白い。生きて動く死体、という側面はあるのだけども、具体的なカーミラの描写ではエキセントリックで悪魔的な女性、という印象。物理的な怖さとかおぞましさではなくて、メンタルな部分での怖さが強い。レズビアン色が強いしねえ。やはりカーミラに誘惑された女性の体験譚として語った語り口の勝利、というものだと思う。

(どうでもいい話。本当はジョセフが名前で、シェリダン・レ・ファニュが姓らしい。「白い手の怪」みたいな手の幽霊、だと評者オススメはつげ義春の「窓の手」)


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