海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ ホラー ]
吸血鬼カーミラ
シェリダン・レ・ファニュ 出版月: 1970年04月 平均: 5.50点 書評数: 2件

書評を見る | 採点する | ジャンル投票


東京創元社
1970年04月

亜紀書房
2015年01月

No.2 5点 メルカトル 2026/09/05 22:19
幻想文学の古典、57年ぶりの完全版新訳
1872年に発表され、ブラム・ストーカー『ドラキュラ』にも影響を与えた怪奇小説。レズビアニズム色の濃密な作品でもあり、「百合族」のバイブルともされる本作が、平井呈一訳以来の完全版として美麗装幀でよみがえる!にしざかひろみによるカバー画・挿画。
Amazon内容紹介より。

『吸血鬼ドラキュラ』より若干楽しめました。しかしこちらも児童書の為か、あまり過激な表現は控えられている気がします。それでも、このカーミラの存在を知れただけでも話のネタにはなりそうなので、まあ良かったのではないかと思います。百合族がどうこうと云うのはそれほど感じさせませんが、美女たちが主役であるのは間違いありません。

ドラキュラに似ているのは確かです。ではなくて、ドラキュラがカーミラに似せた訳で、その意味で歴史的価値はあったのでしょう。本作で既に吸血鬼の弱点や生活様式なんかが確立されていたのも貴重だと思います。吸血鬼と言えばドラキュラと世間では思われていますが、実は本家では女だったというオチも個人的には面白かったです。

No.1 6点 クリスティ再読 2022/04/10 21:05
「ドラキュラ」「フランケンシュタイン」は書評済なんだけど、まだ本作やってなかった。「ドラキュラ」と並ぶ吸血鬼モノの真祖である。
でも「カーミラ」は中編。創元文庫のこの本は、レ・ファニュ傑作選のカラーも強くて、「白い手の怪」「墓堀りクルックの死」「シャルケン画伯」「大地主トビーの遺言」「仇魔」「判事ハーボットル氏」の6編を収録。

ホラーとミステリの違い、というと、ミステリは最後には謎をすべて解明することで結末になるわけだが、ホラーの場合には謎が謎のままで残ってもいい。というか、全部解明したりせずに、多少は謎のままで残っていた方が、よりホラー「らしい」。それでも20世紀のホラーでは「謎を解き明かす」ことに力点があることも多い。ゴーストハンターが名探偵の変形になるわけでもある。なら解明重視は「ホラーのミステリとの交雑現象」と見てもいいのかもしれない。
でもレ・ファニュは19世紀的なホラーだから、「解明」のウェイトが薄いんだよね。だから「なぜ」が語られないケースが結構、多い。そこらへん、ミステリ読者のニーズをやや外している印象がある。

それでも超越的なモンスターなら、「なぜ」はあまり重要じゃないか。「悪魔」を思わせるキャラが登場する作品も多いから、民話みたいなカラーも出てしまうこともある。「大地主トビーの遺言」は親の意固地な遺言で対立しあう兄弟の話で、その親が憑依したブルドッグが...という展開になるんだが、訳者は平井呈一で洒脱かつ下世話な東京弁で訳されるので、あたかもシュール系落語を読んでいるかのような読み心地。いや「らくだ」とか不気味ネタ落語ってあるし、怪談噺も落語のうちだからねえ。

なので、今一つピンとこない作品も多いのだが、さすがに「カーミラ」は面白い。生きて動く死体、という側面はあるのだけども、具体的なカーミラの描写ではエキセントリックで悪魔的な女性、という印象。物理的な怖さとかおぞましさではなくて、メンタルな部分での怖さが強い。レズビアン色が強いしねえ。やはりカーミラに誘惑された女性の体験譚として語った語り口の勝利、というものだと思う。

(どうでもいい話。本当はジョセフが名前で、シェリダン・レ・ファニュが姓らしい。「白い手の怪」みたいな手の幽霊、だと評者オススメはつげ義春の「窓の手」)


キーワードから探す
シェリダン・レ・ファニュ
2023年12月
カーミラ〜レ・ファニュ傑作選
2017年01月
ドラゴン・ヴォランの部屋
平均:6.00 / 書評数:1
1983年06月
レ・ファニュ傑作集
平均:6.00 / 書評数:1
1981年10月
ワイルダーの手
平均:6.00 / 書評数:1
1980年08月
アンクル・サイラス
平均:7.33 / 書評数:3
1970年04月
吸血鬼カーミラ
平均:5.50 / 書評数:2