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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
ラドラダの秘宝を探せ
ダーク・ピット
クライブ・カッスラー 出版月: 1987年11月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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新潮社
1987年11月

No.1 8点 人並由真 2021/07/20 18:14
(ネタバレなし)
 1989年10月。ソ連の宇宙計画「コスモス・ルナ」に参加する地球物理学者アナスタス・リコフは、無人のはずの月面で活動する人間の姿を確認。それは実は、故ジョン・F・ケネディの遺産ともいうべき、数十年にわたってホワイトハウスやペンタゴンの主幹にも秘匿されながら継続していた宇宙開発プラン「ジャージー植民地計画」の月面スタッフだった。近日中にソ連の月着陸があり、非公式な、存在しないはずのアメリカの月面科学施設がソ連軍に武力占拠されると考えた「ジャージー」の地球側スタッフは、アメリカ大統領に対策を講じるように半ば強制的に要請。かたやフロリダ州キーウェストの海岸では「タイタニックを引き揚げた男」こと海洋機関NUMAのダーク・ピットがまた、新たな事件に巻き込まれようとしていた。
 
 1986年のアメリカ作品。ダーク・ピットシリーズ、第八弾。

 もしかしたら何十年ぶりかに、このシリーズを読んだような気もするが、今回、本作の文庫版2冊を手にしたきっかけは、本シリーズの中でも評者が大好きな『マンハッタン特急を探せ』(なんせ、ゲストキャラで、ピットのライバルの英国情報部員が「あのヒト!」だよ~序盤を読めばすぐわかるのでネタバレに当たらないね?)の後日譚的な趣向もあるというので、少し前から古書を安く入手。そろそろ読もうと思っていた。

 しかし何というか、山場また山場の約800ページ。
 ゴジラ映画で例えるなら前半でゴジラがヘドラと戦ってボロボロになったその直後、同じ映画の中で、満身創痍のままX星に連れてかれてキングギドラと対決。それでもまだまだ話が終わらない、という感じのとんでもない中身のボリュームで、改めて読んでいて顎が外れた。

 量産作家的にポンポン大部の作品を放ったから軽く見られてしまうところはあるけれど、お話のパワフルさと設定のダイナミズムでは、カッスラーって間違いなく怪物だわ。
 いや、実際、シリーズもののあくまで一本ながら、米ソの駆け引き&攻防劇プラスアルファの立体感で言ったら、フォーサイスの『悪魔の選択』にだって負けません(というか下巻の後半の展開など、完全に超えているだろ)。
 某超メジャーなお宝の秘境から持ち出した財宝の話題、米ソのスターウォーズ、フロリダの気球船の怪事件(十日行方不明だった乗員が腐乱死体になって帰ってくるが、死因は2年前に凍死だった!~フロリダで!?~というとんでもない不可能犯罪パズラー的な興味の掴みもイイ)、この三題話をどうまとめるのか、と思いきや、そのタスクを消化して、さらにまだその先が……。

 まああんまりポンポンネタを積み込みすぎてひいちゃうところもないでもないんだけれど(もし一部のミステリファンにカッスラーが敬遠されるところがあるとしたら、正にまず、ソコだと思う)、それでもやっぱり読めばオモシロイ、ということは改めて痛感した。
 あと嫌われるとしたら、いかにもアメリカ流のマッチョ的な正義かな。
 でも下巻の355~357ページなんか読むと、それを承知の上でやはり泣けてきてしまうのだよ。

 ひさびさに面白かったけれど、このシリーズはしばらくもういいです。かなりお腹いっぱい。
 それでもダーク・ピットシリーズを次々と読破した世代のファンってのも、きっと少なからずいるんだろうな。その健啖ぶりは、ちょっとうらやましい。


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