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[ SF/ファンタジー ] ブリジンガメンの魔法の宝石 ―オールダリーの物語― コリンとスーザン |
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アラン・ガーナー | 出版月: 1969年12月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
評論社 1969年12月 |
No.1 | 8点 | 雪 | 2021/07/12 11:59 |
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遥かいにしえの時代、すべてを征服せんとして戦いをいどんだ暗やみの大王ナストロンドは、一人の強力な王に破れ、地上の姿をぬぎすててラグナロックの淵の中へ逃げこんだ。だが決して諦めぬかれは暗黒の隠れ家から邪悪な考えを吐き出し、たえまなく人類を汚染している。ついには最強の存在まで汚され、ナストロンドに対抗できる強さをもった清らかな人間は一人もいなくなるだろう。
これを阻止する力を持つのは、これまでこの世界に現れた最強力のまじないの根源である「炎の霜」、すなわち〈ブリジンガメンの魔法の宝石〉のみ。そしてそれはチェシャー県のオールダリーエッジを訪れた少女、スーザンが手首にいつもはめているふしぎな水晶、「涙」のことだった! 二十世紀のイギリスに生きる兄妹、コリンとスーザンが突然まきこまれた不思議な冒険。魔法使いや小人、それに暗黒の王が入り乱れて戦う、現実と重なる魔術世界を舞台にした正統ファンタジー。 1960年発表。『指輪物語』完結の5年後に刊行された児童文学作家アラン・ガーナーの処女作で、続く『ゴムラスの月』や2012年発表の "Boneland"(未訳)と併せ、著者のライフワークとも言うべきシリーズを成すもの。 トールキンもガーナーも同じオックスフォーディアンではあるが、銀行支店長の息子として生まれ英文学教授として死ぬまで学寮生活を送った前者と、職人一家の中で初めて高い教育を受けるも中退し、在野に於いて民間伝承の研究に励む後者の間には自ずと差異があり、本書も『ふくろう模様の皿』におけるように逞しい文章と作劇でありながら、より生々しい感情を感じさせるものになっている。 二部構成で、一部では暗やみの王の野望を打ち砕くために備えられた、百四十人の清らかな騎士たちの眠りを司る宝石「涙」が少女スーザンから奪われるまで、二部では〈手品師〉グリムニアと魔女セリーナ・プレイスの手から「涙」を取り戻したコリンとスーザンが、二人の善なる小人やハイモスト・レッドマンヘイの百姓ガウザー・モソックと共に苦難の旅を続け、遥かシャトリングズロウ山にいる筈の〈銀のひたい〉の魔法使いキャデリンの元へと、「涙」を届けるまでの長い道行きが描かれる。 強大な魔王・世界の運命を制する宝具・使命の旅・そしておぞましい追っ手からの逃避行と、かの『指輪~』とも共通するモチーフを持つが、最大の特徴は現実世界の住人たちが絡むこと。〈遥か昔〉ではなく現実のチェシャー県と魔法世界とを重ねたその剛腕により、ストーリーに更なる面白味が加わっている。ハルドラ族の王子である小人デュラスローが最後に見せる勇姿など、雄渾さも申し分ない上長さも適度なので、プレ指輪作品としてはかなりお薦め。「これで、『ブリジンガメンの魔法の宝石』という物語は終わった」との結びもかっこいい。 |