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[ SF/ファンタジー ] ふくろう模様の皿 |
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アラン・ガーナー | 出版月: 1972年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
評論社 1972年01月 |
No.1 | 7点 | 雪 | 2019/04/30 15:32 |
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一家としてはじめての休暇を過ごすため、父クライブと共に北ウェールズの谷間にある古い屋敷にやってきた、ロジャとアリスンの義兄妹。ペンキで塗り潰されたあげぶたから聞こえるノックに答え、花のようなフクロウの図案が描かれた皿を天井裏から下ろした時から次々に奇妙な出来事が起こりはじめる。
アリスンは憑かれたように図案を写し取り紙のフクロウを作り始め、逆に皿のフクロウ達は消えてゆく。ビリヤード室のモルタルは剥がれ落ち、その下からクローバーの花もようを背景にして立つ、等身大の女性を描いた油絵が現れる。青い稲妻のようにひらめく空、"グロヌーの岩"にぶつかった黒く重いもの。叫びと悲鳴。オートバイの爆音。 アリスンは住み込みのコックの息子、ウェールズ人のグウィンに相談を持ちかけるが、彼らを見つめるグウィンの母ナンシイの様子はしだいにおかしくなっていく。 「彼女がくるぞ」「フクロウだ」。道々で囁かれる言葉。ナンシイも、谷間に住む男ヒュー・ハーフベイコンも、村の人々も、いったいなにが起きようとしているのかを知っているようなのだが・・・ 1967年発表。ガーディアン・カーネギー両賞受賞作。「ブリジンガメンの魔法の宝石」「ゴムラスの月」で知られる作家アラン・ガーナーの代表作。でも内容的には先の二作とは違い全然児童文学じゃねーなこりゃ。 ウェールズ神話「マビノーギオン」を下敷きに構成された物語。簡潔に述べると花から作られた美女プロダイウィズが創造主フリュウを裏切って領主グロヌーを恋し、フリュウは毒槍で殺される。しかし彼は蘇り、川辺の大岩に隠れたグロヌーに槍を投げ、岩ごと貫いて殺す。そしてブロダイウィズは捕らえられ、罰としてその体をフクロウに変えられる、三角関係と復讐のお話です。 彼らがそれぞれアリスン、グウィン、ロジャに対応し、読み進めていくともう一つの三角関係が過去にあったことが分かってきます。屋敷のあるウェールズの谷間には魔力が流れ込んでおり、プロダイウィズの呪縛は時を越え世代を跨いで何度も繰り返されている。これを解くには、フクロウに変えられた彼女をふたたび花に戻してやるしかないのですが・・・ 「そのつもりになれば、ファンタジーの要素を全然つかわずに書けたにちがいない」とは作者ガーナーの弁。ゴシック風に始まりながら、構成分子はその実ミステリ。それを大枠となるファンタジー要素で包んだ作品。そのガワを剥ぐと、子供向けとは思えぬシビアな展開と中々ショッキングな事実が姿を現します。 |