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[ ハードボイルド ] 秋と黄昏の殺人 |
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司城志朗 | 出版月: 2000年09月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 2000年09月 |
講談社 2003年10月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2021/05/02 04:27 |
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(ネタバレなし)
その年の10月末の土曜の深夜。「私」こと41歳の放送作家・岩城浩平は、2年前に別れた元妻の向井塔子から久々に電話をもらう。彼女の用向きは、何か殺人にからむアリバイ偽装の懇願であり、しかもその殺人の一因は岩城自身のせいでもあると塔子はうそぶいた。岩城は朝早くからの仕事を控えながら四谷の向井宅に向かうが、その場で何者かに襲われて意識を失う……。 文庫版で読了。 気がついたら、単独の司城作品を読むのはたぶん今回が初めて。 生島、北方、大沢、そのほか国産ハードボイルド(の非・私立探偵もの)のエッセンスを掬い上げてこね回したような内容と文体で、よくいえば当該ジャンルのスタンダードを守り抜き、悪く言えばどこかで読んだようなお話……という印象。 ただしさすがに、長い作家歴(一時期は休筆していたが)から培ってきた筆力は認めざるを得ない歯ごたえ。 いったい劇中で何が起きており、どういう物語のベクトルが形成されるのか中盤までなかなか見えないが、それでもテンションが下がることはない。 物語が後半に突入し、主人公がいきなり生命の危機に及んで、ようやく核心が見えてくる。よくいえばストーリーがはじけるその瞬間ギリギリまでの<物語上のタメ>が効果を上げているというか。 (ちなみにその効果を満喫するためには、文庫版の裏表紙あらすじも読まない方がいいかもネ。) かようにネタを割るのを引っ張った分、後半3分の1からは怒濤の展開で、山場で明らかになる真犯人もかなり意外。たぶん、作者が意図的に仕掛けたのであろう(中略)的なミスディレクションも効果をあげている。 一方でストーリーの九十九折を成立させるために、一部のデティルに力技を感じてしまう箇所もないではない。 この辺は得点と減点とを相殺した上で、やはり誉めるにしかず、という実感でもあった。 読み終わるのに結構カロリー使った分、この手のものはもうしばらくいいやと思う一方で、なんかもうちょっと、こういう傾向の作品を読んでみたい希求の念も生じている。この作品にはそんな、妙にクセになる(なんか人恋しくなる?)面もある。 評点は、終盤で加速度的にヒートアップしてゆく物語の勢いを認めてこの点数で。 |