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[ 本格/新本格 ] おちこぼれ探偵塾―偏差値殺人事件 改題『偏差値殺人事件』 |
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深谷忠記 | 出版月: 1982年07月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
朝日ソノラマ 1982年07月 |
勁文社 1987年12月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/04/29 06:01 |
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(ネタバレなし)
関東のP県の私立高校・丹羽学園。その年の入試試験の最中に、受験生・下条啓介が、男子トイレから煙のように消え失せる怪事件が発生。数カ月しても下条の行方は知れなかった。たまたま怪事に立ち会った丹羽学園の生徒で二年生の早川一彦は「おちこぼれ塾」と異名をとる中学生向けの小さな学習塾「落合塾」のOB。そして現在の同塾には、一彦の妹で「あたし」こと早川育江、そしてその友人の太田瑠理子、清水ゆかりたち中3トリオ「コボレーズ(落ちこぼれ~ず)」が通っていた。育江たちは、兄が遭遇した怪事件に関心を抱き、周囲の者を巻き込んでアマチュア探偵としての調査を始めるが、やがて事態は連続殺人事件へと連鎖してゆく。 元版のソノラマ文庫版で読了。 ジュブナイル叢書ながら、基本的にしっかりした正統派のフーダニットパズラーで、広義の密室といえる冒頭の人間消失事件も魅力。 かなり手数や仕掛けは多い作品だが、その分、いくつかは先読みできてしまう辺りは、まあ仕方ないのか。 真犯人はなかなか意外で、そのために張ってあった伏線も悪くはないのだが、一方で作中のリアルを考えれば<その件>については、警察の捜査が続くうちに捜査官の誰かがどっかで思い当たるのではないか? という気もした。少なくとも、ひとたび疑念をもたれたら、あとは瓦解ひとすじだよね、と思う。 あとはこの犯人の<設定>を許容できるかどうか、だな。 その件に絡めて、人間消失のトリックの評価も変わってきそうだ。 (個人的には、真相が良い意味でシンプルなのは好ましいが、そもそもこの事態の成り行きをふくめて、いろいろアレだよね、という感じ。) それでも十分に、昭和パズラーの佳作にはなっていると思う。 読み物としては、小説的なリアリティを出すためか、わざわざ名前をつけて登場してきてただそれだけ、というモブキャラが多すぎるのがやや引っかかったけど。 |