皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] ロンリーハート・4122 パーブライト警部シリーズ |
|||
---|---|---|---|
コリン・ワトスン | 出版月: 2021年02月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
論創社 2021年02月 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2022/01/23 05:09 |
---|---|---|---|
(ネタバレなし)
1960年代の後半。イングランド中部のフラックス・バラの町で、オールド・ミスのマーサ・レキットが失踪した。さらにその二か月後、未亡人リリアン(リル)・バニスターも、行方不明になっているようである。地元警察の警部ウォルター・バーブライトは、居なくなった女性たちと土地の結婚相談所「ハンドクラスプ・ハウス」との接点を認めるが、一方でロンドンから来た中年~初老の女性ルシーラ(ルーシー)・ティータイムもまた、くだんの結婚相談所に接触を図っていた。 1967年の英国作品。 評者は、数年前に翻訳された創元のワトソン(創元はワトスン表記)作品は『愚者たちの棺』の方のみリアルタイムで読了。そちらは正直、面白いようなイマイチのような感触だったが、今回はソコソコ~なかなか楽しめた。 全体の3分の2~4分の3くらいまで読み進んでも、犯人当ての謎解きミステリぽくないので、これはパズラーじゃないだろ、いささか変化球の警察小説? かと思っていた。そしたら終盤でいきなり、結構な(中略)とともに、パズラーらしくなる。なるほどね。 ネタバレになるのであまり詳しくは書けないが、ある種の仕掛け+全体の作劇の構成そのものを機能させた合わせ技の作品で、こういうのは好み。 でまあ、nukkamさんのおっしゃるとおり、ラストの部分はすんごく舌っ足らずである。ただまあ、こっちで想像すれば、たぶんそうだったんだろうな、という犯罪の組み立てはなんとなく見えてくるとは思えるし、ソレが正解なんでしょう。だから、たぶん。 原書の刊行時期が、映画の人気を下地にした007ブームの最盛期、スパイものの隆盛の頃合いのため、英国で秘密諜報部員タイプの男がモテる、という趣旨の時事ネタがあるのには笑った。本文中に「ボンド・シンドローム」なる言葉が出てくる。英国の推理文壇全般が、大きく関連のムーブメントに巻き込まれていた気配が読み取れる。 ちなみにそもそもこの本は、もともと読まずにパスしようかと思っていたのだった。(創元の先行分がイマイチぽかったので。) が、先日、70年代前半の「ミステリマガジン」誌上の、未訳の原書紹介コーナーにて、松坂健氏が本作を(もちろん英文で)読み、ホメていたのを再発見。じゃあ、読んでみようかと手にとったのだった。 うん、面白かったです。松坂さん、ありがとう。 評点は7点に近いこの点数ということで。 【2022年5月11日】 一部、本文を改訂しました。 |
No.1 | 5点 | nukkam | 2021/02/25 21:04 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです)1967年発表のパーブライト警部シリーズ第4作の本格派推理小説です。2人の女性の失踪事件を手掛けることになり、調べていくと2人の共通点が同じ結婚相談所の登録メンバーであることがわかり「青ひげ」の犠牲になったのではと疑います。一方でティータイムなる不思議な名前の女性が登場して新たな登録メンバーになり、次の犠牲者になるのではと心配することになるのですがここからの展開が変わっています。登録ナンバー4122を名乗る男が彼女の前に現れ、もちろん十分に容疑者なのですが彼女の挙動も結構怪しいのです。どこかアントニー・ギルバートの「薪小屋の秘密」(1942年)を私は連想しました。謎めいた男、謎めいた女、そして警察の三つ巴的な展開は派手ではないけど退屈しません。しかし結末があっけないのが残念で、推理説明をきちんとしてくれないのは大いに不満でした。 |