皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 時代・歴史ミステリ ] 指差す標識の事例 |
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イーアン・ペアーズ | 出版月: 2020年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
東京創元社 2020年08月 |
東京創元社 2020年08月 |
No.2 | 6点 | YMY | 2023/02/19 23:23 |
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十七世紀、王政復古時代の英国を舞台にした歴史ミステリである。
四人の語り手が書いた手記を継ぎ合わせた構成になっており、それぞれを四人の翻訳者が担当するという凝った作りになっている。第一の語り手であるヴェネツィア人の青年が毒殺事件に遭遇することから話は動き出す。 彼の目に映った事件の様相と、第二の語り手のそれとはまったっく異なる。四つの手記を合わせると壮大な物語が浮かび上がってくる趣向となっている。 |
No.1 | 6点 | 猫サーカス | 2020/11/27 17:50 |
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17世紀にイングランドといえば、多くの方にとってはイメージの湧きづらい舞台かも知れない。だが、そのなじみの薄さを、補って余りある読み応えを提供してくれている。革命から王政復古に至る動乱の時代を経たイングランド。ヴェネツィアからの来訪者コーラは、オックスフォードで大学講師が殺される事件に遭遇する。一見すると単純な殺人事件。だがその裏側には。物語は、書き手の異なる4編の手記で構成されている。コーラによる手記が終わると、それを読んだ別の人物による第2の手記が始まる。同じ事件が、異なる視点から、コーラの記さなかったことも含めて語られる。4人の語りに生じる矛盾、隠された秘密、それらが絡み合って思わぬ真相を浮かび上がらせる。それぞれに思惑を抱えた手記の筆者たちは、いわば「信用できない語り手」。たくらみに満ちた語りが紡ぎ出す、驚きに満ちた物語。現代の我々にとっては異世界と言ってもいい、17世紀イングランドの描写も読ませる。
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