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[ 本格/新本格 ]
オペラ座館・新たなる殺人
金田一少年の事件簿
天樹征丸 出版月: 1994年09月 平均: 5.00点 書評数: 5件

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講談社
1994年09月

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2005年09月

講談社
2022年04月

No.5 5点 まさむね 2023/05/17 21:20
 「金田一少年の事件簿」世代としては、一種の懐かしさもあって、次々にページをめくらされました。一方で、金田一の推理の根拠も含め、細部には突っ込みたくなる点も。漫画版の「オペラ座館~」と比べればよく練られていると思うのですが、やはり、良くも悪くも「漫画的」という印象。
 ちなみに、同シリーズの書評でも書いたのですが、「漫画だったら、このシーンはこんな感じで描かれるだろうなぁ」などと想像しながら読んでみるのも、結構楽しいです。

No.4 4点 おっさん 2019/07/23 15:09
作 天樹征丸
画 さとうふみや

――というわけで、小説版『金田一少年の事件簿』です。
メディア・ミックスの一環として、1994年から2001年にかけて、マガジン・ノベルスというレーベルで計8作が刊行され(一部が講談社ノベルスや講談社文庫にも編入され)た、「漫画では読めないオリジナル・ストーリー」のシリーズ第一弾にあたります。
蔵書を整理していたら、象の墓場から出てきました。そうだ、こんなの買ってた買ってた、忘れてたw
妙な郷愁に突き動かされ――すっかり黄ばんでしまったマガジン・ノベルス版(紙質が悪い)を、購入からほぼ四半世紀を経て、卒読。

漫画版の第一作『オペラ座館殺人事件』(本サイトでレヴュー済です。乞併読)で惨劇の舞台となった、孤島の劇場が取り壊され、新築された劇場の内々の記念公演に、ハジメと美雪が招待されることになるが、そこで再び、漫画版と二重写しになるような見立て殺人が発生し、新たな怪人「ファントム」が跳梁する――という、典型的なパート2仕様で、ベタではありますが、漫画版の(あまり小説を読まないような)読者を活字の本格ミステリの世界へ誘う試みとしては、マルが付けられると思います。
では、本格ミステリ・ファンが読むとどうか?
うん、そんなに悪く無いですよ。といって、「いいね」と言うほどでもないんですけどww
なぜ犯人は、「オペラ座の怪人」のストーリーに見立てて、犯行をおこなったのか? 漫画『オペラ座館殺人事件』で描かれた見立ての理由、ホワイダニットの答えがもっぱら心情的なものだったのに対して、こちらはそこに、論理的な必然性をもたせています。
ハジメいわく「(……)すべての出来事に、なんらかの意味があるはずだ。『密室』や(……)あのシャンデリアの演出にもね」。
あ、個人的には、シャンデリアの落としかたを、ちゃんと説明してくれたのは、ポイント高いです。漫画版もそうですが、原典たるガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』(レヴュー済。以下略)からして、その点、大雑把にすぎますから。ミステリなら、そこは当然、押さえるべき。
ただ。
ホワイダニットに目配せしたはずのストーリーが、蓋を開けるとトリック小説で終わってしまっていて、結局、「「新本格」をやろうとしたけど、旧本格になってしまったでござるの巻」といった読後感に落ち着くのは、漫画『オペラ座館殺人事件』と大差ありません。
確かにメイン・トリック自体は、漫画版より工夫されています。カーと正史の悪魔合体。パクリと言われないだけのアレンジは施されていますし、作中の犯人は、いちおう事前にリハーサルもしていたようで、そのへんも作者が、漫画版の反省を踏まえてのことかもしれません。
ですが、トリックの肝心かなめの部分は、前もって試してみるわけにはいかない。現物を使っての実験は無理で、どうしても、ぶっつけ本番です。果たして計算通りうまくいくか? 現場に致命的な痕跡が残ってしまう可能性は、否定できないでしょう。もし駄目で、トリックから犯行が露見したらそのときはそのとき、そこまでの運だった、と諦めきれる犯人ではないはずです。だって、まだそのあとに、本当にやらなければならないことが残っているんですから……。

そう、犯人には、最後までやらなければならないことがあった。この人物が仮面を脱いで、ハジメたちの前で心情を吐露するクライマックスは印象的です。漫画『金田一少年の事件簿』シリーズで、お馴染みのパターンではありますが、ヒネリを利かせて意外性を演出しています。ただ、ジュブナイルとしては、ちょっとエグい内容が盛り込まれているので、好き嫌いで言ったら嫌い、かな。逆に、少年漫画だと(普通なら)却下されるようなダークな部分を、小説版に盛り込んだ点を評価される向きもあるでしょう。
漫画では表現できない、活字ならではの、ちょっと面白いミスリードもあったりして、公式の二次創作とはいえ、作者がクリエーターとして、漫画版との違いを念頭に置いて仕事をしていたのは、間違いありません。
新人作家の第一作であり、まずは敢闘賞、といっていいと思います。
あ、ハジメ君のキャラはそれなりに立っているのに、ヒロイン美雪ちゃんの役どころが弱いのは、一考の余地あり、だなあ。さとうふみやさんの絵に、頼りすぎ。次作以降、もう少し頑張って欲しいな、うん(って、追いかけるつもりか、自分?)。

No.3 5点 風桜青紫 2016/02/11 21:10
こんなんカーが面白半分に使ってたトリックをおおげさにしただけじゃないか!
とはいえ文章はチープながらも読みやすいし、犯人当ても難しくはないものの、なかなか意外な人物。漫画ノベライズとしてはそこそこの出来だろう。それにしてもこの漫画、エロシーンが多いわりにはまったく萌えない。たぶん絵の都合上。

No.2 5点 江守森江 2009/09/16 00:40
ミステリ界にパクリと普及の功罪両方をもたらした漫画・金田一少年シリーズのノベライズ。
推理する楽しみに飢えていた当時の私はパクリに言及するより読者挑戦物としての貴重さを優先評価していた。
シリーズ一貫して、先々ネタバレに興醒めする可能性に目をつぶり、推理クイズ小説と割り切って楽しめる方以外は読んではいけない。

No.1 6点 H.T 2009/04/05 21:56
物理的なトリックを使った、よい作品に仕上がっています。


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