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[ 本格/新本格 ]
ちょっと一杯のはずだったのに
志駕晃 出版月: 2018年06月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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宝島社
2018年06月

No.1 6点 人並由真 2019/06/28 02:28
(ネタバレなし)
 累計1000万部に及ぶ大人気ミステリ漫画「名探偵・西園寺沙也加の事件簿」の作者で36歳の美女・西園寺沙也加(本名・西山紗綾)が、秋葉原のマンションの自室で半裸状態の絞殺死体で発見される。沙也加はしばらく前から秋葉原のFMラジオ番組でパーソナリティを務めてそちら方面でも人気を呼び、そんな彼女は同番組のディレクターで7歳年下の矢嶋直弥とひそかな恋人関係にあった。しかも事件現場は密室であり、警察は死体の第一発見者でもあった矢嶋に嫌疑をかける。そして当の矢嶋は酒に酔うと記憶を失う傾向にあり、もしかしたら自分が本当に何らかの弾みで恋人を殺し、その際の記憶を失っているのでは……と案じ始めるが。

 現在もニッポン放送に勤務の作者が見知った業界を舞台に著した、かなりフツーのフーダニット&ハウダニット・パズラー。
 ちなみに本書の裏表紙には真相にたどり着けない警察が、主人公の矢嶋に無理矢理殺人事件の謎を解けと強要するブラックコメディミステリっぽい筋立てのように書いてあるが、これは盛りすぎ。そういうニュアンスが100%皆無とは言わないが、実際には本作の警察はそこまで無責任でアホな態度に出てはいない。たぶんこのあらすじ、出版社の編集が強権で勝手に(?)センセーショナルさを狙って、書いたんだろうね?

 本当に全体的に、昭和の二線級パズラーっぽい作品で、嫌疑をかけられた矢嶋に脇キャラの弁護士たちが種々のアドバイスを与え、読者が読んでタメになるような蘊蓄っぽい法律トリヴィアで尺を稼ぐあたりなど、ああ……いかにも昭和40年代っぽい大衆ミステリだなと、ある種の感慨を覚える(笑)。
 そういう意味じゃ決して21世紀の謎解きミステリのAクラス群には入りそうもない作品ではあるが、作者としてはたぶん本気でマジメに練ったのであろう(中略)系の密室トリックとかはすごく微笑ましい、妙に心地よい。
 なんか藤村正太とか西東登とかあの辺の、今は大半のミステリファンに忘れ去られた(でも一部の好事家に愛される)Bクラスの昭和乱歩賞作家の隠れた佳作という感じである(と言いつつ、藤村作品も西東作品もまだまだ未読多いです。すみません~汗~)。
 いや決して馬鹿にするんじゃなく心からマジメに、たまにはこーゆーふた昔、三昔前みたいな昭和風のパズラーっていいな、という正直な感慨なのだ。
 クライマックスの謎解きの演出も、最後の小説のまとめ方もどっか田舎くさいんだけど、とにもかくにも読者を饗応するアイデアを盛り込もうという純朴なサービス精神がふんだんに感じられてスキ。

 なんにしろ『スマホ』の作者が、次にこういう埃臭く、かつ真っ直ぐな球を放ってくるとは、思わなかった。
 チラチラ気にかけていれば、それなりに楽しいものを今後も書いてくれるかもしれないので、これからもそっとマークしていこう。


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志駕晃
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