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[ クライム/倒叙 ] 殺しの挽歌 |
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ジャン=パトリック・マンシェット | 出版月: 1997年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
学習研究社 1997年01月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2018/07/05 13:36 |
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サラリーマンの主人公が、何の因果か殺し屋2人に付け狙われるようになった...妻と2人の娘から離れて、主人公は逃亡しつつ殺し屋たちと対決する。非常にシンプルな話である。初期の「愚者が...」「ナーダ」ではまだ饒舌な語りやスケール感があってそれに魅力があったが、本作だと「眠りなき狙撃者」の削ぎ落としたスタイルに近づいている。が、まだ過渡期な印象で、そこまでの詩情は立ち上らない。骨組みだけの客観小説、といったもの。主人公も堅気で、殺されるのもたった(!)6人だけである。「ノワールのミニマリスト」とでも呼びたくなる。
約10ヶ月に及ぶ事件が終わったあと、主人公は家族のもとに帰り、事件の一切を記憶喪失のせいにして沈黙する。それは主体的な冒険だったのか、事故に巻き込まれたようなものだったのか、やむにやまれぬ復讐だったのか、主人公は一切語らない。それがマンシェットらしい。ただ酒の好みがスコッチからバーボンに変わり、音楽を聴きながら外環道路を時速145キロで車を飛ばすようになったことだけのようだ。ミニマリズムなのでこの「だけ」にすべての重みがかかる。そういう小説。 |