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[ SF/ファンタジー ] 拷問者の影 新しい太陽の書1 |
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ジーン・ウルフ | 出版月: 1986年10月 | 平均: 10.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1986年10月 |
早川書房 2008年04月 |
No.1 | 10点 | 雪 | 2018/06/11 14:23 |
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遥か未来、「共和国」唯一絶対の存在〈独裁者〉によって支配される中世的世界、老いた惑星ウールスのギルド〈拷問者組合〉の徒弟セヴェリアンは掟を破り、牢に囚われた罪人「セクラの方」の自死を助ける。
組合からの追放が決まったセヴェリアンは、師匠に餞別として名剣「テルミヌス・エスト(「ここより境界線」の意)」を授けられ、生まれて初めて見る「城塞」の外の世界に旅立つのだった…。 ウルフです。中編「ケルベロス第五の首」は訳が分かりませんでした。短編「取り替え子」はもっと訳が分かりません。しかしこの人の作品は短いほど意味不明なので長編は心配ありません(普通逆じゃないのか)。 といっても第1巻はいわば種蒔き。セヴェリアンの幼き日の回想シーンから「城塞」の外で出会う人々(タロス博士、巨人バルタンダーズ、恋人ドルカスなど)。訳の分からん場所を彷徨ったり決闘したり、彼らの正体と秘密、そしてセヴェリアン自身に隠された秘密は続巻で明かされる事になります。 この「城塞」は単一の建物ではなく、〈独裁者〉の居城に付随して建てられた幾多の施設によって巨大な複合体みたいになってるんですね。この建物がある都市〈ネッソス〉の住民と、中の人々との接触は殆どありません。マーヴィン・ピークのゴーメンガーストみたいなもんです。 主人公であるセヴェリアンも同じ。特徴的なのはこの物語が彼の一人称、見聞した内容のみで最後まで語られる事です。一から十までこの世界の歴史を語ってくれる人間はいません。我々はセヴェリアンが出会う人々との会話から何が起こったのかを断片的に推測していくしか無いのです。描写も重厚そのもの、なかなか骨の折れる物語です。 もちろんそこには幾多の仕掛けがしてあります。一例を挙げると施設「図書館」でセヴェリアンが見つめる古代の絵の内容が1P余り描写してあるのですが、これがアポロ11号の月面着陸写真だと知った時にはべっくらこきました。 3~4巻にかけてそれまでの伏線が回収される過程といい、ファンタジーの形式は取っていますが実はかなりミステリ的な仕掛けを施したSFです。 |