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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 架空線 チャールズ・ラッセル大佐 |
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ウィリアム・ハガード | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2018/02/18 10:39 |
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1963年のスパイ小説当たり年はル・カレの「寒い国」とアンブラーの「真昼の翳」が英米の賞を独占したわけだが、CWAの次点に当たるシルヴァーダガーを本作が得ている。なので「スパイ小説第三の男」という立場に作者があって、結構この時期に紹介されたが、現在は忘れられた作家だ(ちなみに63年は007だって映画が「007 ロシアより愛をこめて」である。凄い年)。
スパイ小説と言うと、ル・カレ風リアルスパイ vs 007、という対立構図で語られがちなのだが、これで見ちゃうと実はアンブラーとか全然うまく納まりがつかないわけだし、本作のチャールズ・ラッセル大佐シリーズだって完全に構図から外れてしまう。なので、いい評価軸がないかなぁ、とは思うところだ。もう少し立体的に考えてみよう。 「スパイ部」は「文科系サークル」か「体育会系サークル」か? 「プロット・背景・雰囲気」は「リアル」か「ファンタジー」か? 「ドラマ」は「人間臭い」か「ゲーム的」か? この3軸くらいで見るのが面白かろう。007なら「体育会・ファンタジー・ゲーム」だし、ル・カレなら「文化系・リアル・人間」である。なかにはホストヴスキーの奇作のような「文化系・ファンタジー・人間」もあれば、レン・デイトンみたいな「文化系・リアル?・ゲーム」もある。で、本作は「体育会系・リアル・人間+ゲーム」というありそうでないパターンである。そこらへん新機軸な独自性が一応あっての評価のように感じる。 一応主人公はイギリスの「特別保安部」の長チャールズ・ラッセル大佐である。要するに、偉い。なので本人が身を張ることはなくて、部下にすべて実働を任せる管理職である。スパイ版のギデオン警視みたいなものだ。ラッセル大佐が統括する特別保安部の活動、という群像劇であって、チームプレーの球技でも観戦するかのような印象。本作では軍事に関わる科学プロジェクトの統括者に対する、外国のエージェントによる恐喝から始まり、そのプロジェクトの成果を横取りしようとする外国秘密機関(国名は明示しないが、東独っぽい雰囲気だ)との闘争が描かれる。最後はタイトルの通りに、スキー場のケーブルカーでのアクションとなる。敵方のエージェントの貴族崩れのプレイボーイ、ド・フレイリーがなかなか好キャラだし、失態を犯しはしたが真面目で責任感の強い技術者が狂言回しで、この男への恐喝から襲撃と保安部諜報員とのロマンスで話が進むあたり、達者なもの。この男はマトモな人間なので、最後まで周囲がちゃんとかばうあたりがリアル。 まあだから、キャッチーとか縁のないすっごく地味ぃなエンタメなのだが、面白いは面白い。 |