皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] 蜂の巣にキス クレインズ・ビュー三部作 |
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ジョナサン・キャロル | 出版月: 2006年04月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
東京創元社 2006年04月 |
No.2 | 6点 | 猫サーカス | 2021/01/19 18:08 |
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主人公のベストセラー作家サムは、ひどいスランプに悩んでいたが、少年時代に美少女ポーリンの死体を発見したことを思い出す。そこで、その事件を題材にノンフィクションを書くことにした。だが取材を進めるにつれ、ポーリンの奔放な生き方、それに翻弄されていた男たちの姿が浮かび上がってきた。さらに今になって、事件の関係者の一人が殺され、獄中で自殺したポーリン殺しの犯人の父親にメッセージが届く。三度も結婚に失敗しているサム、サムと恋仲になるヴェロニカという謎めいた女性、息子の無実を信じている犯人の父親、亡くなったポーリン、全員が手に入らないものを必死に求め、一時はそれに成功したと錯覚する。だが残酷な真実に気づいた時、そこに待っているのは深い絶望。人間の切ない願いと愛と希望、そして、それが打ち砕かれた時の悲嘆と諦念を哀切に描き切っている。 |
No.1 | 6点 | tider-tiger | 2018/01/21 11:01 |
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『蜂の巣』とあだ名された秀才にして美貌の少女。二十年前に彼女の遺体を川で発見したのは僕だった。作家となり名を成したものの、現在はスランプに陥っている僕は彼女の死の真相を突き止め、それを書こうと決意した。
キャロル唯一のミステリ作品です。 当時逮捕された青年は本当に犯人だったのか。過去の事件を探っているうちに新たな事件が起きて、といった典型的な筋運び。 正直なところミステリとしては平凡な出来であります。また『蜂の巣』と呼ばれた美少女ポーリンの魅力がいまいち伝わってこない。これが最大の不満点です。元不良にして現警察署長のフラニー、主人公のガールフレンドなどなど他のキャラは非常に面白く書けているだけに本当に残念です。 好き嫌いの分かれそうなへらず口文体と人物造型とその変容していくさま、種々の楽しいエピソードなどでなかなか読ませるものになっていますが、こうした要素を重視しない読者には良くも悪くもないごくごく平凡な作品ということになりそうです。 キャロルらしさが希薄とされている作品です。というのは、リアルとファンタジーの混淆がキャロルの常套手段なのですが、本作はファンタジー要素がないからです。 ですが、自分の感想は「キャロル以外のなにものでもない」でした。 むしろファンタジーの衣を剥ぎ取ることでキャロルらしさが赤裸々となった作品だと感じました。 ~ひとりで食事をするのは好かない。~この書き出しからして、いかにもキャロルらしい。 自分にとっては何度も読み返したくなる作家の一人です。 豊崎由美子女史――この人のキャラはあまり好きではないが、この人の薦める本は個人的には当たり率高し――の解説によれば、日本ではキャロルは売れないらしい。新作が出てもなかなか翻訳されないのはそのことも関係しているのか。本作は当時八年だか、九年ぶりだかの新作で本当にヤキモキさせられたものでした。 本作以外でミステリファンの方にお勧めできそうなのは~ぼくはいま、息子の頭に銃を突きつけて殺そうとしている。なのに息子は微笑んでさえいる。~このショッキングな書き出しで始まる『沈黙のあと』でしょうか。 |