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[ SF/ファンタジー ] 空に浮かぶ子供 月の骨シリーズ |
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ジョナサン・キャロル | 出版月: 1991年03月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
東京創元社 1991年03月 |
No.1 | 6点 | tider-tiger | 2018/09/29 01:43 |
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~親友であり、同業者でもある映画監督フィル・ストレイホーンは奇妙な電話をよこし、その一時間後にライフル自殺をしちまった。大ヒットした『深夜シリーズ』の最終作が完成間近だったというのに。フィルは俺(ウェーバー・グレグストン)にビデオテープを三本遺していた。うちの一本に飛行機事故で亡くなった俺のお袋の最後の数分間が映っていた。
どうやらフィルの死は完成間近だった『深夜シリーズ』に関係があるらしい。そして、フィルだけではなく他の友人たちにも異常なことが起こりはじめている。フィルは『深夜シリーズ』の製作でとある過ちをしていて、そのために友人たちの身にも危険が迫っているという。俺は親友の最後の作品を完成させるべく、歪んでしまった現実を「正常に」戻すべく奔走することになった。 1989年アメリカ作品 月の骨シリーズ三作目 ただでさえ癖が強い作家だが、本作は大好きだという人と、つまらんという人が特にはっきり分かれそう。 ジョナサン・キャロルの作品の中で私がもっとも好きな作品だが、完成度が高いとは言い難く、人さまにはお薦めしづらい。 指摘されそうな問題点は、 独りよがりな話ではないか。無駄なエピソードが多すぎる。構成が散漫。ファンタジーだからといってなんでもありというわけじゃない。映画製作に関する抽象論ばかりで具体性がない。なんか説教臭い。登場人物たちの議論が青臭いなどなど。 芸術論というのは少し大仰だが、芸術について書かれた小説である。幼い頃の経験がいかに作品に影響を与えるのか、芸術を生み出す喜びや狂気、そういったものが細切れのエピソードによって語られていく。相変わらず魅力的な人物が次々に登場する。 親友が遺した未完成の映画『深夜』を完成させる。ここにはさまざまな困難が伴う。親友の意志を尊重するのか、作品としてより良いものを目指すのか。仲間を集め議論し、少しずつ作業を進めていく。 一つ一つのシーンがオチへと収斂してはいるものの、作中作とピンスリープとフィルのメッセージが唐突に入り込んで来たりするので物語として一本の筋が見えにくい。 読者が意味ある細部を捉え、シーンとシーンのつながりを再構成していかなくてはならない。これは本作に登場する『深夜シリーズ』を意識的になぞっているのではないかと。『深夜シリーズ』なるものも、完成すると本作『空に浮かぶ子供』のような構成になるのではなかろうかと。本編が作中に登場する作品を模倣している。勘繰りすぎか? 『空に浮かぶ子供』とはなんなのか、そしてこんな物語に結末はつくのか。 伏線は充分すぎるほどに張られていた。ほぼ答えは見えていたはずである。雑多な情報のせいか注意力不足のせいか、最終盤のとある一行を読んでゾッとすることになった。 こういう結末になることをウェーバー(俺)自身も薄々気付いてはいたはず。気付いていながらもやめることはできなかった。 オチで明かされるおぞましい事実は、これから起きるであろうことではなく、残念ながら今現在、我々の世界ですでに起こっていることである。 そういった意味では真新しいオチとはいえないが、通常芸術家が無意識に行っているこの種の悪徳を自覚的に扱っている点は面白かった。 理屈っぽくも青臭い芸術論を好むような方にはぜひともお薦めしたい。 採点は本作への愛に比してかなり抑えます。 |