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[ サスペンス ] 霧に包まれた恋人 |
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ビクトリア・ホルト | 出版月: 2011年05月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
幻冬舎 2011年05月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2017/08/27 10:31 |
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(ネタバレなし)
19世紀後半。イギリス人の父とドイツ人の母リリーの娘で、英国国籍のヘレナ・トラントは十代後半にドイツに赴き、母の母校で過ごした。18歳のヘレナは森に迷いこみ、高貴な美青年「ジークフリート」に救われる。わずかな時間のなかで思いを寄せ合う二人だが、ヘレナはそのまま彼と再会することなく帰国。以来、ヘレナは彼を忘れられなかった。やがて成人したヘレナは、母リリーの親戚として現れた令夫人イルゼ・クライベルの招待で数年ぶりにドイツに向かい、想い出の地でかの美青年との再会を果たした。ジークフリートは自分の正体がロケンブルク伯爵マクシミリアンだと語り、互いを想い続けていた二人は結婚式を瞬く間に済ませる。急な展開に驚きながらも幸せの絶頂のヘレナ。ところが結婚して五日目の朝、ヘレナはイルゼの家で目覚めた。イルゼは、森の中で何者かに凌辱され、六日間も眠り続けていたと言う。伯爵と結婚したと訴えるヘレナを、誰も信じない。証拠となる住まいも廃墟であり、医者はヘレナの記憶は薬の副作用の妄想だと診断した。あの結婚はすべて夢だったのか? 愛する夫はどこへ!? 20世紀後半の英国ゴシックロマンの巨匠で、日本でも多くのファンがいるらしいヴィクトリア(ビクトリア)・ホルトの1972年作品。ホルトは日本初紹介の『流砂』がSRの会のその年のベスト集計で上位に入ったこともあり、いわゆる<よくできた大衆小説的なパワフルさ(シドニイ・シェルドンの諸作あたりに近いかも)>も含めて、ミステリファンにも魅惑的な面白さを発揮する。 物語の中盤からは失意のヘレナがさらに二十代後半に成長。みたび渡ったドイツで貴族の家庭教師の地位に就きながら、秘められた運命の深層に迫っていく。 ゴシックロマンの王道として、古城を舞台に起伏ある展開を披露し、もちろん細部のネタバレは控えるが、終盤のクライマックスに至るテンションもたまらない。キャラクター面でもヘレナにも物語にも重要な人物となる老婦人ミセス・クラーベルなどの、善良なのか、悪意に満ちた心根なのか、妙な厚みを感じさせるのも作品の印象を深める。 最後の決着にいたる部分でちょっと無理があるのでは? 先に書いた設定が忘れられたのでは? という疑問もあるが、まずは期待通りによく出来た娯楽作品。何より前半の大技の謎が読み手には蠱惑的。 |