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[ 社会派 ]
十字架
重松清 出版月: 2009年12月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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講談社
2009年12月

講談社
2012年12月

No.1 6点 メルカトル 2017/07/25 22:46
吉川英治文学賞受賞作。
1989年9月4日、あいつが死んだ。中学2年の二学期が始まった直後だった。遺書には僕、真田裕のことを「親友になってくれてありがとう。ユウちゃんの幸せな人生を祈っています」とあった。親友でもないのに。
同じ学年の中川小百合にも「迷惑をおかけして、ごめんなさい。お誕生日おめでとうございます。幸せになってください」と。何ら関係のなかったはずなのに。
いじめのせいで自殺したのは明らかだったけれど、僕と中川さんは重い十字架を背負わされた・・・。
というわけで、いじめた人間ではなく、いじめを見て見ぬふりをした同級生に主眼を置いた点で目新しさがあるのかもしれません。テーマがテーマだけに落涙ポイントは随所に見られますが、盛り上がりに欠けるというか、かなり地味です。ですが、二人の中学生の心理状態を、克明に描き切ることにより問題提起をしているのは間違いないでしょう。
ただ、自殺した藤井俊介の父親は自分を責めずに、真田や中川ばかり責めるのはどうなのかという気がします。また母親は二人に同情しており、それぞれの立場に置ける人間模様が浮き彫りになります。
辛い経験をした二人の中学生の微妙な立ち位置、どんな想いで大人になっていくのかなどが一つの読みどころになっていきます。いじめ問題そのものよりも、自殺した後に残された者たちの悲しみ、生きるための拠り所などを丁寧に描いた佳作と言えると思います。


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