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[ 短編集(分類不能) ]
きよしこ
重松清 出版月: 2002年11月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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新潮社
2002年11月

新潮社
2005年06月

No.1 5点 メルカトル 2017/09/07 22:30
主人公の少年きよしはカ行とタ行から始まる言葉が上手く出てきません。つまり吃音、昔で言う「どもり」のことです。彼は父親の仕事の関係で、全国各地を引っ越しで転々とします。名前がきから始まるため、自己紹介さえ思うように出来なくて、読んでいる身としては結構切ないものがあります。ですが、落ち込んだり、時に暴れたりしますが悲壮感はありません。彼が常に前向きな気持ちを持った、ごく普通の少年だからです。言葉に詰まる時は反省もしますし、周りの人達と何とかコミュニケーションを取ろうとしたりもします。
実は作者自身も幼少時代、吃音に悩まされており、当時の辛かったり悲しかったりした思い出をこの小説に投影しているようです。
きよしはいじめられたりしていたわけではありませんが、言葉が詰まることでからかわれたり、笑われたりして、孤独な少年ではありました。そんなハンディを背負った彼は年上の女性に上手く言葉が出てこない時に助けられたり、吃音矯正プログラムに通ったりしながら着実に成長していきます。ですが、作者は決して主人公に肩入れしたりはせず、付かず離れず一つひとつのエピソードを紡いでいきます。あまり感情移入は出来ませんが、程よい距離感を持って描かれるため、読み心地は悪くありません。
タイトルの『きよしこ』ですが、「きよし、この夜」を「きよしこの、夜」と勘違いしていて、きよしこという架空の友達がいつか訪ねてきてくれると信じていたことから付けられました。


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