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[ 本格 ] エレヴェーター殺人事件 |
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ジョン・ロード&カーター・ディクスン | 出版月: 1984年02月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1984年02月 |
No.2 | 6点 | 弾十六 | 2021/11/18 11:34 |
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1939年出版。英題Drop to His Death 米題Fatal Descent。
JDC/CDの22歳上(ミステリ作家としては6年先輩)の作家ジョン・ロード(John Rhode)との合作。ジョン・ロード&カーター・ディクスンという順の作家名で売られた。 ダグラスグリーンは伝記で、本作はほぼJDC/CDが書いたのでは?としているが、私も読んでみてそう思う。でもメインねたは確かにJDC/CDっぽくない。結構いろいろ工夫があり、面白いけど、なんか普通な感じ。JDC/CD作品なら、いい意味でも悪い意味でも「アッ!」となりたいんだよね。 昔のミステリなので、探偵が決定的に気付く発端は当時特有のもの。多分現代の我々が解説されてもピンと来ないネタ(p225)。舞台が出版社なので、作家たちにとっては馴染みの場所。セイヤーズの広告会社もの(1933)と同様、お仕事もの、職業内情ものという感じだが、インサイダー味は薄い。 以下トリビア。原文は手に入らず。 銃は.45口径の連発拳銃(p45)で「西部ものの参考に」というので絶対コルトSAA(いわゆるピースメイカー)だと思ったら、英国陸軍御用達ウェブリーリボルバー(p72、表記は「ウェブレイ」)だって。弾込めの機構が全く違うので、参考になるかーい!国も全然違うやんけ!とガンマニアなら強くツッコむところ。でも第一次大戦に従軍した青年には、母親がピストルを買ってくれるのが普通(p71)で、当時最上等のピストルだった(p72)というのが親の愛を感じさせて良いエピソード。Webley Revolver Mk. VIでしょうね。 作中年代は、1938年3月10日の二か月後(p68)で、多分5月18日(水)、トリビアp148参照。 p9 それはいい本ですか?♠️出版社のモットー(架空)。 p14 A課♠️訳注 貴族関係などを取り扱う。 p20 著者なんて糞くらえ♠️楽屋話。 p22 スペクテイター紙♠️判型の大きさをWebで調べたが見つからなかった。ちょっと大判の書籍くらいのサイズかな?タブロイド版よりは小さそう。 p27 大西洋横断のジョージ・ベルサイズ♠️架空人名だがリンドバーグがモデルか?とすると「ダグラス機の『ブリストル・ブルドッグ』(p39)」はSprit of St. Louisか。機の名前から考えて偉業を行ったのは英国人という設定なのだろう。 p34 年に七、八百ポンド♠️英国消費者物価指数基準1938/2021(70.69倍)で£1=11030円。 p45 リトル・ジャック・ホーナー(Little Jack Horner)♠️マザーグースに出てくる。Roud Folk Song Index #13027、18世紀初頭には言及あり。 p49 五ポンド♠️賭け金。かなり確かな賭け。 p53 どんな天気でもレインコートを着ていた♠️ホーンビームの特徴 p62 全社員は、このクリスマスに俸給の五分の、特別手当を貰う♠️ボーナスという事だろう。 p69 新しい半ポンド金貨♠️長く会社に仕えた記念品として。ジョージ六世のHalf-Sovereignは1937年戴冠記念として他のコインとセットで発行されたものしかないので、かなりのレアものだと思う。純金、4g、直径19mm。それ以前の半ソブリン金貨は同サイズでジョージ五世のもの(発行1911-1926)。 p73 もっといい結婚… 聖マーガレット教会での挙式やタトラー画報に載るような縁組♠️そういうイメージなんだ。聖マーガレット教会(The Anglican church of St Margaret, Westminster)はウェストミンスター宮御用達の教会。タトラー(Tatler)は写真入りの総合月刊誌、1901年創刊。 p77 クロックフォード♠️「訳注 ロンドンの有名なクラブ」だが、中桐先生には珍しい勘違い。正解は「英国国教会の聖職者名簿(Crockford's Clerical Directory)」初版1858(The Clerical Directory) 1876年からは、ほぼ毎年新版が出ている。 p83 ライス・シングルトン社製モーター♠️多分架空。 p85 格子戸♠️エレヴェーターのドアの折りたたみ式。動かすと止まる。ロンドンでは設置が法律で規定されている? p94 あの不愉快なABCの仲間入り♠️数学の教科書でお馴染みのトリオ。 p101 オランダ式断髪♠️Dutch bobだろう。 p114 ドイツ時計♠️ソーンダイクものでお馴染みディケンズ由来のDutch Clock(装飾のない安い柱時計)か。 p123 おお、大海原のわが暮らし、 / 波間に揺れるわが家よ♠️"A Life on the Ocean Wave" はEpes Sargentの1838出版の詩にHenry Russellが曲をつけたa poem-turned-song(Wiki)。(コーラス部分)A life on the ocean wave, / A home on the rolling deep p135 プレイヤーの空箱♠️訳注 タバコの銘柄。PlayersというとF1の真っ黒な車体を思い出す。マルボロ・カラーの車体もあった。すっかりタバコが追放された現代では隔世の感がありますねえ… p135 ブラック・ビューティ社のチョコレート入りペパーミントの箱♠️薄荷菓子(p176) 多分架空ブランド。 p148 六月号は二日前に出版され… [他の雑誌は]五月の二十三日と三十日まで出なかった♠️事件の日付の手がかり。5/23と5/30はいずれも月曜日。ということは、六月号の出版は9日か16日だろう。事件は5/18発生の可能性が高そうだ。 p153 映画館… ストランドのティヴァリ館♠️多分架空。 p195 フランスの道化芝居 p205 召使い用の階段… 召使い用のエレヴェーター♠️屋敷の動線は、当然だが分かれている。 |
No.1 | 5点 | nukkam | 2017/05/27 22:46 |
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(ネタバレなしです) ジョン・ロード(1884-1964)とカーター・ディクスン(1906-1977)、本格派推理小説黄金時代を代表する作家の2人が1度だけ共同で執筆した成果が1939年発表の本書です。6階建ての建物で容疑者たちが各階に散らばる中、エレヴェーターで降下中の被害者が射殺され、犯人も凶器も見つからない不可能犯罪を扱っているのはトリックメーカーとして評価の高い2人の共作なら当然の流れでしょうか。どのような分担で書かれたかはわかりませんが文章表現はディクスンらしさを、機械設備の細かな説明はロードらしさを感じます。トリックはクレイトン・ロースンの某作品を連想させるもので(本書の方が早く書かれてます)図解付きで説明されますが、どうせなら現場図もほしかったです。細かいところまで謎解き複線を張ってあるのは評価できますが、ごちゃごちゃを整理しきれなくて少々読みにくい印象を受けました。 |