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[ 青春ミステリ ]
分かれ道ノストラダムス
深緑野分 出版月: 2016年09月 平均: 4.00点 書評数: 2件

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双葉社
2016年09月

双葉社
2019年11月

No.2 4点 虫暮部 2020/03/20 12:07
 主人公=視点人物があまりにも浅薄。もっとぶっ飛んだキャラクターなら視点人物ごと俯瞰して読めるんだけど、この子の場合ベースの部分は判りつつ要所要所で“何故?”と思うその“共感出来なさ”が絶妙にイヤ。もしやその不快感によってこそ何か新しい地平に至れるかとイライラしつつも頑張ったが、そこまでのものではなかった。

No.1 4点 人並由真 2016/11/11 04:56
(ネタバレなし)
 1999年7月。恐怖の大王がいよいよ迫る終末の時代に世間がざわつく中、高校一年生の女子・日高あさぎは、2年前に急性心不全で頓死した男子・基(もとき)の自宅を友人たちとともに訪れた。基にひそかな好意を抱いていたあさぎは、基の祖母から孫の遺品のノートを譲られる。彼女はその直後、同じ高校の男子・八女(やめ)健輔とその年上の友人であるオカルトマニアの中年・久慈晃と知り合うが、彼らとの会話からあさぎは、2年前に何かの状況が変わっていたら、分岐した平行世界のなかで基は死なずに済んだのでは、と思いを馳せていった。そして同じ頃、町では終末思想に影響された新興宗教集団「アンチ・アンゴルモア」が不審な活動を見せていた。

 うーん……。過去の悲劇の契機や発端となった事象は、ある意味でパラレルワールド世界への扉だ、と考えた女子主人公が、好青年の男子主人公とその兄貴分の協力を得ながら昔日の故人の行動の軌跡を検証していく…という発端そのものは悪くない。いや、そういう、主人公が執着を覚える故人の過去を探る作品は昔から山ほどあるが、今回のような今風? の視点で取り組む文芸は、ちょっと新鮮だった。
 しかし結局のところそのパラレルワールド云々の趣向も、ノストラダムスの大予言のXデー前夜という設定も物語の主題にはとても至らず、単なる舞台装置とストーリーのエンジンスターター程度で終わってしまった。
 ぶっちゃけ、この作品、主人公が片思いの元カレに対して心の中で決着をつけて、それと前後して新規の男子主人公とのア・ボーイ・ミーツ・ア・ガール譚が成立するのなら、どんな設定から始めてもいいんじゃないの?

 ちなみに一応の謎解き要素を擁する新作ミステリとしては、これだけ曲のないものも珍しく、そのあまりのストレートさにポカーンとなった。
 前半~中盤で伏線が張られていた某サブキャラの意外性も見え見えで、ミステリとしてのサプライズは実に希薄。

 かたや青春ドラマとしては、NHKの懐かしの「少年ドラマシリーズ」が復活して映像化されて、演出力のあるスタッフが担当すれば歴代作品と並べて比べて中の下くらいには行くかもな、という程度の印象。

 膨大な資料を読みこんだ(らしい)前作『戦場のコックたち』は、ホックとかの連作短編風の謎解きミステリ(同時に長編の結構も具えていたが)としても、第二次大戦時の苛酷な状況のなかでの青春小説~エピローグに至る人間ドラマとしてもお腹いっぱいになったけれど、今回はどうも。

 たぶんこの作者は、語りたい、描きたい題材をしっかり手の中に掴み切ってから筆を動かした方がいい気がする。


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