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夜鳥
モーリス・ルヴェル 出版月: 2003年02月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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東京創元社
2003年02月

No.2 6点 蟷螂の斧 2021/07/27 15:30
①或る精神異常者 7点 突発事故を追い求める男。自転車の綱渡りを見学に・・・
②麻酔剤 4点 昔、恋人に麻酔を施術した老医師の告白は・・・
③幻想 5点 一瞬でも幸せになりたいと思う乞食が盲目の乞食に出会い・・・
④犬舎 8点 妻の寝室で倒れている男を発見した夫は・・・ブラックユーモア
⑤孤独 5点 初老の独り者の男は今日は派手にと思うが・・・
⑥誰? 6点 医者は患者の青年の顔をどこかで見たはずなのだが・・・
⑦闇と寂寞 5点 乞食3姉弟の行く末は・・・ゴシックホラー
⑧生さぬ児 7点 自分の子?と疑い出した夫は・・・
⑨碧眼 9点 娼婦は死刑になった情人の墓に花を添える約束をした。金もなく病を押して街角に立つが・・・
⑩麦畑 7点 妻が地主の旦那とできていると聞いた夫は・・・
⑪乞食 4点 馬車の事故。乞食は頼まれ助けを求めに行くが・・・
⑫青蠅 5点 男は愛人の死体を前に殺人容疑を否定するが・・・
⑬フェリシテ 5点 2年間土曜日だけ男が訪ねてきた。そして別れの日・・・
⑭ふみたば 7点 マダムとの恋に破れ恋文までも返した劇作家は彼女に意趣返しを・・・ユーモア
⑮暗中の接吻 7点 彼女に硫酸をかけられて失明した男。法廷では彼女をかばい実刑を免れさせた。その真意は?・・・
⑯ペルゴレーズ街の殺人事件 7点 汽車の個室での話題は先日の殺人事件。明日の朝刊に証拠が載ると聞き乗客の一人は・・・
⑰老嬢と猫 4点 純潔にこだわる老女は猫にも・・・
⑱小さきもの 4点 貧しさから赤子を施設に預けるが・・・
⑲情状酌量 5点 息子が強盗殺人。母親は・・・
⑳集金掛 5点 横領した金を公証人に預けたが・・・
㉑父 6点 父は本当の父ではないと母からの手紙・・・ほろり系
㉒十時五十分の急行 3点 事故を起こした運転手の話・・・
㉓ピストルの蟲惑 5点 何故愛人を射殺したの自分でもかわからない男・・・
㉔二人の母親 4点 この子は自分の子かわからないという母親・・・
㉕蕩児ミロン 7点 失踪した画家ミロンは数十年ぶりに画廊に絵を持ち込むと・・・
㉖自責 6点 元検事は冤罪では?と告白するが・・・
㉗誤診 4点 誤診が家族を崩壊させた・・・
㉘見開いた眼 4点 変死の原因は・・・
㉙無駄骨 5点 私生児の青年は富豪の父親を探し当てたが・・・
㉚空家 5点 空き家と思ったら寝室に人が・・・
㉛ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海 6点 船を占拠する話に港のごろつきたちは乗ったが・・・ 

No.1 8点 クリスティ再読 2016/08/15 23:11
評者中学生の頃の学校図書館に、ボロボロの「世界大ロマン全集」があって、その頃から変人だった評者はこんなのを耽読してたんだよ....中でも印象深かったのは以前にここで書いているエーヴェルスの「吸血鬼」とか、あと乱歩の「白髪鬼」のネタになったコレリーの「ヴェンデッタ」とかあるけど、中でも強烈な印象なのがモーリス・ルヴェルだった。
で10年ほどまえふと本屋の棚を見てると...あるじゃんルヴェル。狂喜乱舞して購入。そんなの再び読めるとか思ってなかったよ。でもしっかり名前は頭に刷り込まれてた。
で読むと、本当に内容が蘇る。この創元推理文庫版も同じく田中早苗訳で、それこそ同じ文章だから「ええ、ル・バングよ...あの死刑執行人(くびきりにん)のサ」とか鮮明に憶えていた。で改めて読むと、戦前に「新青年」に載ってたことが信じられないくらいに、モダンで読みやすい訳文が非常にイイ。クラシックな味のある文章の歯ごたえ感が心地よいな。またルヴェルの極めて優れた性質として、場面の絵的センスがいい。短い話を「光景」としてまとめ上げ、「絵」としてかっちり決めてみせるウマさがある。
まあ本作品集は今でいえば「ショートショート」くらいになるんだろうけど、当時は「コント」と呼ばれていたジャンルに当たる。考えてみりゃジュンブンガクの代名詞に使われちゃう芥川龍之介だって、どっちかいうとコレに該当する作品が多いように思うよ。どうやら当時のフランスの小説だと他に「ポルトレ(肖像)」とか「スケッチ」とかいろいろな視覚的な分類の短編のジャンルみたいなものがあったようだけど、そういう視覚的を刺激する名前のついたジャンルをルヴェルの作品は強く連想させる。
まあ類型的といわれるかもしれない話なんだけど、そういう普遍的な情念をセンセーショナルな「絵」にまとめ上げる手腕は大したものだと思う。普遍的な情念だからこそ、それを強調すれば結末はある残虐なものにならざるをえない...個人的には「或る精神異常者」(突発事故を目撃することを唯一の道楽とする男が、自転車曲乗りに毎日来場するようになった、。その狙いは?)「碧眼」(死刑になった情人の墓に備えるため、娼婦が病院から一時外出して客を取ったが...)「青蠅」(どうしても殺人を認めない犯人がその死体を前にして...)「情状酌量」(わが子が強盗殺人犯として逮捕された母親の奇策とは?)あたりがお気に入り。


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モーリス・ルヴェル
2003年02月
夜鳥
平均:7.00 / 書評数:2