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[ 社会派 ]
イノセント・デイズ
早見和真 出版月: 2014年08月 平均: 5.75点 書評数: 4件

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新潮社
2014年08月

新潮社
2017年03月

No.4 8点 HORNET 2019/06/08 13:40
 母子3人を犠牲にした横浜の放火殺人事件。被告人は、夫の元恋人・田中幸乃24歳。別れ話に納得できず、執拗なストーカー行為の末に自宅に放火したとされる容疑に下された判決は「死刑」。判決が下された時、幸乃は弱々しい声で言った。「う、生まれてきて、す、す、すみませんでした」―
 事件の裏にあった幸乃の半生、そして真実が、関係者の回想によって明らかになっていく。

 賛否両論あるよう(否の傾向が強いか?)だが、私は面白かった。
 罪状を見れば同情の余地などない、おかしい女の暴走に見えるのだが、幸乃の歩んできた人生や、被害者である元恋人の男の素顔が明らかになっていくにつれ、見方が変わっていく。判決を受け入れ、むしろ死刑になることを望んでいる幸乃と、その本人の意思に反して救おうとする周り。果たして死刑は執行されてしまうのか?本当に幸乃の仕業なのか?さまざまな謎と興味に引っ張られ、読み進めてしまう力があった。
 結末の在り方が特に意見の分かれるところだろう。私はそれなりに納得のいく結末だった。

No.3 5点 E-BANKER 2018/06/10 10:15
2015年に発表し、その年の日本推理作家協会賞を受賞した長編。
作者はもともとミステリー作家ではなく、本作以外にミステリーと呼べる作品は発表していない(のではないか?)

~田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と一歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか? 産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼馴染の弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は・・・。筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長編ミステリー~

「そうか、こういうストーリーだったのか・・・」
当たり前だけど、読後はこういう感想になった。
確かに、日本推理作家協会賞受賞作という惹句からだと違和感がある作品。

物語は、ひとりの女性を中心に、彼女に関わってきた人々の半生を綴りながら、過去そして現在へと進められていく。
なぜ、彼女はここまで不幸な人生を歩まねばならなかったのか、そして許されざる犯罪に手を染めねばならなかったのか?
いうならば「動機探し」が本作のメイン・プロットなのだろうと予想しつつ頁をめくることになる。
でもミステリーファンとしては、「もしかして他に真犯人がいるのでは?」という目線でどうしても見てしまうよねぇ・・・
で、その期待はかなり中途半端な感じで収束することになる。
そして、救いがあるのかないのか意見が分かれそうなラストシーンを迎えることに・・・

文庫版解説の辻村深月氏は、本作を「重い」とか「暗い」という言葉で評するのは違和感があるという趣旨のコメントを書かれているが、でもまぁー「暗い」し「重い」よねぇ・・・
「死ぬことに希望を持って生きている」なんてことを言うんだもんね・・・
ここまで不幸な主人公は久しぶりのような気がする。
もう少し何とかならなかったのか?何てことを小説の主人公に対して感じるんだから、結構のめりこんでいたのかもしれない。
でも、ミステリーとしては見るべきところはないし、面白いかと聞かれればネガティブな意見になってしまう。
そういう意味では不思議な作品かもしれない。

No.2 4点 メルカトル 2017/06/04 22:02
第68回日本推理作家協会賞受賞作。
正直面白くないです。いや、そういった物差しで計るべき作品ではないのは重々承知で。なんですかね、謎がないんですよ。謎めいた雰囲気もないですし。社会派だから仕方ないのかもしれませんが、そういった読書を進める上での推進力が足りないと言ったらいいんでしょうかね。リーダビリティがどうこうというわけではありません。
そして重いです。重厚感とかの問題ではなく、心に重く圧し掛かる嫌な感じが終始しますよ。一歩間違えばイヤミスの領域に入ってしまいそうな感覚です。
これは30歳を迎える女性死刑囚の半生を描いた物語です。スピンオフ的に様々な人物の視点から描かれているため、ややプロット的に煩雑な感じを受けます。ちょっとごちゃごちゃしていますね。まあ、私の読解力にも問題があるとは思いますが。
読後はどんよりとした気分に浸れます。そうなりたくない人にはお勧めできません。唯一読みどころはエピローグでしょうか。
それにしてもこの作品が日本推理作家協会賞を受賞したとは、うーん・・・となってしまいますね。


【ネタバレ】


捜査側からのアプローチがほとんど描かれていませんが、状況証拠ばかりで果たして死刑求刑にまで持っていけるのだろうかという素朴な疑問がわいてきます。その意味では、片手落ちな気がします。

結局、冤罪だったのか否かが(おそらくは冤罪だと思いますが)最後まではっきりしないのも、モヤモヤしますね。

No.1 6点 パンやん 2016/04/10 14:17
一人の死刑囚を巡る異色のミステリー。特筆すべきは、弁護士の青年の描写で、本人がメインの章と、幼なじみがその青年を語る章での、人となりのあまりのギャップの違いに驚く事で、自分のセルフイメージが他人にどう映っているか、実に考えさせられるのである。


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早見和真
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