皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] がらくた少女と人喰い煙突 桜木静流シリーズ |
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| 矢樹純 | 出版月: 2017年09月 | 平均: 6.25点 | 書評数: 4件 |
![]() 河出書房新社 2017年09月 |
| No.4 | 5点 | ミステリ初心者 | 2025/10/11 02:53 |
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| ネタバレをしております。
クローズドサークルかつ、読みやすい推理小説を求めて購入しました。表紙や煽り文もすこしライトノベルようなイメージを持ちました。しかし、ちょっと狙いとは違っていて、テーマは重く文章は硬め(?)でした。 たしかにクローズドサークルで、収集癖のある少女と覗き魔な男性が登場する作品です。ただし、クローズドサークル特有のサスペンス感や緊迫感はなく、連続殺人も2人まででした。収集癖や覗きもあくまでユーモアではなく真面目に書かれております。どちらかというとやや社会派な感じもありました。 とはいえ、軽いから良いとか重いから悪いというわけではなく、推理小説として評価したいと思います。ただ、すこしだけ読みづらかったのは事実ですw 推理小説的要素について。 提示される大きな謎は2つ(多分)。第一の殺人の不可能犯罪と頭部の消失。あとは動機さがしです。また、ラストにはやや叙述トリックめいた仕掛けがあり、アクセントになっていました。 第一の殺人の謎については、犯人が狙い通りに実行したアリバイトリックではなく、強い偶然が絡むものでした。また、真相が明かされてもいまいちイメージができず、本当にそうなるものなのかな?と疑問に思ってしまいました。ちょっとピンときません。 意外な動機・意外な犯人は私の想像を超えていて楽しめましたし、ヒントも与えられていました。しかし、これまたすこしピンときませんでしたw やや相性の悪い小説だったようです…。 ラストの陶子の隠されていた秘密についてですが、ほんとうにうっすらですがちょっとだけ予感しました。やたら仁菜に似ている似ているという描写があり、両親からみの秘密があるのかな?とか…。 総じて、表紙と煽り文のイメージよりも硬派で色々なことを考えさせられる小説でした。一方で、論理的な犯人当てやアリバイトリックが好みの私からすると、すこし薄味な推理小説でした。陶子と桜木の個性的な特徴がもっと活きるようならもう少しよかったかもしれません。 |
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| No.3 | 7点 | 虫暮部 | 2018/05/07 10:08 |
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| 骨格は古典的なクローズド・サークルであり、それにしては動機重視の解決編はあまりロジカルではないが、色々と味付けが巧みで、作者は良い意味で読ませ方を心得ていると思う。
実は私は、拾ったジャズのCDを愛聴したり、拾った週刊スピリッツをきっかけに星里もちるにハマったり、拾った独和辞典を使いもしないのに積読していたり、拾ったヴァイオリンをいつか使う日も来るだろうと保管していたりして、陶子の気持が判らなくもないので気を付けたい。あ、でも坂口安吾の文庫本は拾って読んだが好みではないのでちゃんと処分した。よし大丈夫。 よく判らないところがあった。恵三郎が陶子に対して“仁菜に似てきて気味が悪い”と発言したが、それは自身の妻とも共通する特徴である筈だ。どういう気持なのか?そう言えばその妻(=仁菜の母)の現況が語られていないね(私の見落とし?)。 |
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| No.2 | 6点 | 人並由真 | 2018/01/09 11:54 |
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| がらくた集め少女に比べてもうひとりの主人公のキャラクターはいまいち生かしきれなかった印象だが、死体の首が喪失した真相に関しては、前代未聞の奇想であろう。
(もし前例があったらすみません~笑~) それにしてもこれは確かに、今風の筆致で綴った横溝作品だよね。横溝ファンの人は「ああ」と通じるものがあるでしょう。 |
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| No.1 | 7点 | メルカトル | 2017/11/06 22:17 |
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| がらくた集めが生きがいの中学三年生の少女、陶子。その前に現れた心理カウンセラーを名乗る桜木静流。彼は陶子の病名を強迫性貯蔵症と診断するが、実は彼も人に言えぬ神経性の疾患を抱えていた。
二人は治療と称して狗島という孤島に渡るが、到着したその日に陶子の伯父が首なし死体となって発見される。さらに彼らの前に四肢を切断された死体が・・・。 どことなく横溝正史ワールドを彷彿とさせる本作は、人を食ったようなタイトルとは裏腹に骨格のしっかりした本格ミステリです。それにしてもこのタイトルはミステリ読みの心をくすぐるかなりの吸引力を持ってはいませんか? 勿論、がらくた集めが事件の解決に有機的に結びつています。というのは大げさかもしれませんが、それなりの役割を果たしているのは確かです。また、桜木の相当風変わりな異常嗜好も大いに事件に関わってきます。そのため、余計な誤解を招いて混乱を引き起こす引き金にもなっていますが。 首なし死体の謎(なぜ切断されたのか)は、現実的に可能かどうかは別として、新たな切り口と言っても良いと思います。斬新かどうかは分かりませんが、少なくとも私のつたない読書経験上では初めてです。 二人目の死体の四肢切断の理由については、あまり期待を寄せないほうが賢明です。探偵である桜木自身もあまりそのことを重視していない雰囲気は感じましたので、まあそうだろうなと。 この作者の本業は漫画の原作らしいですが、そんなことしている場合じゃないでしょうよ。もっとミステリを書かなきゃダメでしょう。ちなみに本作がミステリは二作目のようです。 |
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