[ サスペンス ] 妻は忘れない |
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矢樹純 | 出版月: 2020年10月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 新潮社 2020年10月 |
No.1 | 8点 | 虫暮部 | 2021/02/22 11:13 |
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ネタバレするけれど、気になった点。
表題作の終盤、Yが鑑定に応じる。しかし鑑定したらアウトなのである。どうせ負けるのにどういう思いで譲歩したのか。 実はYは、敗北必至だとは考えていなかったのでは? 三股をかけていたのでY自身にも父親が誰だか判らず、故に最初は突っぱねたが、相手側が譲らないので、幾ばくかの可能性に期待して鑑定に応じたのだ。つまり、不義の事実は、あったのでは? 読み返してみると、妊娠の件はともかく、“故人との不義”がYの出任せだったとはどこにも明記されていないのである。 短編集としての難点は、(「裂けた繭」のみ構成上の問題でソレを免れているが)語り手が同じ人物に思えてしまうこと。コレは、風景や空気感、心の揺らぎを繊細に描く筆力があるために却って嵌まってしまう罠? 似たような主人公ばかり書く作家は別に珍しくないし、単に“そういう作風”で片付けていいのだろうか。しかし私には、本書の諸作は、ミステリ“で”人物“を”描いているタイプに見える。従って、ストーリーや謎が別物でも、キャラクターが同系統だと二番煎じ三番煎じとの印象が残ってしまうのだ。 |
矢樹純
- 2020年10月
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