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ミステリの祭典

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ALFAさんの登録情報
平均点:6.62点 書評数:246件

プロフィール| 書評

No.6 9点 宵待草夜情
連城三紀彦
(2017/03/07 15:57登録)
表題作を含めた5編からなる短編集。
明治から昭和(戦後)までを舞台にしている点で「花葬」シリーズにも比べられるが肌合いは少し違う。
評点は「能師の妻」7、「野辺の露」6、「宵待草夜情」7、「花虐の賦」10 、「未完の盛装」8
表題作はミステリ風味の恋愛小説。殺人については「殺したのは**であろう。」の一文のみで終わっている。
マイベストは、構えの大きさ反転の鮮やかさからも「花虐の賦」。
名作「戻り川心中」同様、肥大化した自我を持つ人物がキーになるが、真相が明かされてもあれほどストンとは腑に落ちない。この人物が現世的な成功者、つまり「リア充」そのものだからだ。
この人物の心がもっと危うい均衡の上に成り立っていたら、そしてそれがプライドとともに崩れ去ったとしたら「戻り川心中」と並ぶ名作になっていただろう。
それにしてもこの作者、重厚な主題を惜しげもなく短編にまとめるのはすごい!
「花虐の賦」や「能師の妻」など長編で書いてくれれば谷崎のような読みごたえがあっただろう。短編でも十分ずっしりしているが。


No.5 6点 夜よ鼠たちのために
連城三紀彦
(2017/03/06 15:55登録)
アクロバティックな反転を駆使した9編。
ここまでくるとリアリティは横において論理の曲芸を楽しみたい。
評点は「二つの顔」「過去からの声」が7、「奇妙な依頼」「夜よ鼠たちのために」「代役」が6、他は5。
表題作は長編にしてもおかしくない構成と大きな反転は見事だが、犯罪のもとになる行為が陰惨で後味が悪い。
フェイバリットは「過去からの声」。後味すっきりというほどでもないが。


No.4 5点 夕萩心中
連城三紀彦
(2017/03/06 10:49登録)
(若干のネタバレ注意)
花葬シリーズの3編とコメディタッチのミステリ1編で、短編集としてのまとまりはない。
評点は「花緋文字」5、「夕萩心中」6、「菊の塵」4、「陽だまり課事件簿」5。
「夕萩心中」はこのシリーズらしい抒情的で重厚な作品。構図の反転も申し分ないのだが基本的なところで腑に落ちない。
心中というのは魂の純化の行為である。そこにこんな大きい不純物(不純な動機を持った嫌悪すべき人間)を伴うことはあり得ないと感じてしまう。
物理的にはともかく心理的には受け入れがたい「解」である。
「菊の塵」にはわからないところがある。何のために死者の服を着替えさせたのか?
どなたか解説してくれませんか?
「陽だまり課事件簿」はミステリとしてはともかく、ドタバタぶりがイタい。「どうです面白いでしょう?」と言われながら読んでるようで困ってしまう。
ドタバタはこの作者のキャラではないということか。


No.3 5点 恋文
連城三紀彦
(2017/03/06 10:17登録)
連城三紀彦「恋文」・・・字面を見るといささか気恥ずかしいが、中身は上質でやや薄味の人情噺5編。ミステリではない。
評点は「恋文」5、「紅き唇」6、「十三年目の子守唄」4、「ピエロ」5、「私の叔父さん」5
フェイバリットは「紅き唇」。謎解き(らしきもの)もあって後味はいい。
いずれにも読み手の予想を超えた「無私」の人物が登場する。
世の中に100%「無私で善意の塊」という人間はいないのだから、彼、彼女らを「無私」たらしめている「何か」がキモになると思うのだが、「紅き唇」以外はそれが希薄であるか、または無理がある。
「ピエロ」に至ってはそれが全く描かれていない。したがって読後はただむなしさだけが残る。
その「何か」が描かれれば深い話になると思うのだが。
ピエロもメイクを落とせば生身の人間になるはずだから。


No.2 8点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2017/03/05 10:42登録)
作者自身のあとがきにもある通り、ぎりぎりまで犯人がわからない五つの短編。
評点は「変調二人羽織」8、「ある東京の扉」6、「六花の印」10、「メビウスの環」6、「依子の日記」8
フェイバリットは「六花の印」。明治と現代のカットバック構成が最後に辻褄が合うのが見事。トリックは物理的にきわどいが。
他は「メビウスの環」は怒涛の反転攻勢、「ある東京の扉」はミステリ風味のコメディ、とそれぞれ持ち味が違うのは楽しいが表題作を含めてやや「とっちらかった」印象は否めない。
表題作の美文調に名作「花葬」シリーズの予兆を見ることができるが。


No.1 10点 戻り川心中
連城三紀彦
(2017/03/05 09:53登録)
連城三紀彦はそのケレン味たっぷりなペンネームに恐れをなして敬遠していた。
もっと早く読めばよかった。
大正から昭和初期の時代設定、花をモチーフにした抒情的な五つの短編は、いずれも大仕掛けな構図の反転によって見事なミステリーになっている。
お気に入りは「戻り川心中」「藤の香」「桔梗の宿」。
表題作は、真の動機が明かされた瞬間、犯人の才能と肥大化した自我のありようが腑に落ちて、謎解きだけではなく文学創作の本質をも問う作品である。
「桐の棺」はチェスタトン張りの逆説的なトリック、「白蓮の寺」は構図の反転がともに見事だが、心理的にしっくりこない。
つまりこのような犯人がこの動機でこの犯罪をするか?と思わされる。
ディテールが美しいだけに残念。

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