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ミステリの祭典

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りゅうぐうのつかいさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:84件

プロフィール| 書評

No.4 8点 真夏の方程式
東野圭吾
(2015/10/20 18:03登録)
「真夏の方程式」というタイトルから、「容疑者Ⅹの献身」や「聖女の救済」のように、湯川が難解なトリックを解く話かと思っていたが、そうではなかった。
300ページを過ぎ、捜査の進展とともに判明した事実から、真相が透けて見えるようになり、ありきたりで平凡な真相、わざわざガリレオ先生を登場させる必要がないのではと感じたが、最後にその印象は逆転した。
湯川の事件解決方法、成美や恭平に最後に語った事柄は、ヒューマニズムにあふれている。湯川という人物は、理系の天才であるだけではなく、人間性を見通す能力があり、深い人間愛を持っていることが伺える。事件の真相には理系人間でないと気づかないような事項があり、また、この解決方法を取るために、湯川を登場させたのだろう(警察官がこの解決方法を取るわけにはいかない)。
子供嫌いの湯川が、恭平に対して積極的に働きかけているのは意外であった。
また、湯川の発言には、事業に対する反対意見のあり方など、考えさせられる内容が随所にあった。


No.3 6点 ドーヴァー 4/切断
ジョイス・ポーター
(2015/10/18 19:23登録)
言いたい放題、やりたい放題、勝手気ままで、鼻つまみ者のドーヴァー警部の引き起こすドタバタ劇。
本格ミステリー作品ではなく、ドーヴァー警部の傍若無人なキャラクター、周囲を巻き込んで繰り広げられるドタバタ劇を楽しむ作品。
ドーヴァー警部の推理は、捜査の課程で判明した様々な出来事を踏まえた上での意外なものだが、仮説に過ぎず、読者がこの推理をするのは難しい。
ドーヴァー警部が物証をつかむために企てた策略も、ドーヴァー警部らしい、身勝手きわまりないもの。
「ところで、真相は何?」
最後の最後で、煙にまかれてしまった気分。


No.2 6点 狐火の家
貴志祐介
(2015/10/13 19:38登録)
貴志さんの本を読むのは、これで7作目だが、過去に読んだ6作品はどれもがすばらしく、私にとっては10割打者であったが、初めて、読んでも読まなくてもどちらでも良かったと感じた作品。
「狐火の家」と「黒い牙」は、どちらも真相が拍子抜け。
「盤端の迷宮」は将棋の棋士の発想が随所に盛り込まれており、コンピューターやITの出現に関する問題提起もあり、この作品集の中では一番面白いと感じた。ドアチェーンがかけられていた理由は、ちょっと苦しくもあるが、この作品らしい真相。
「犬のみぞ知る」は筒井康隆作品に出てくるような登場人物たちによるドタバタ劇だが、たった一つの事項の気付きによって、真相が指摘されているのが面白い。


No.1 5点 ポケットにライ麦を
アガサ・クリスティー
(2015/10/04 11:36登録)
社会でよく見受けられるタイプの人物をうまく取り込んで人間関係を構築し、連続殺人事件を発生させるクリスティー女史の手腕は、この作品でも冴えわたっており、物語としては、楽しめる内容であった。
しかしながら、ミステリー作品として見ると、この作品には決定的なキズがある。
1つの殺人事件に関して、犯人のアリバイ、犯人がその時にどうしていたかに関する取り調べの内容に全く触れられていない。こんな重要な事項を内緒にしたままでは、本格ミステリーとは言えない。
また、マープルの推理には必然性、論理性が全くなく、単なる憶測にすぎない。それを自信満々に、「仮説ではありません。事実なのです」と言うのには、あきれてしまった。
犯人の計画も、ある人物の性格に依存したものであり、それがうまくいかなければ露見してしまう、極めて危険なものだ。

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