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ミステリの祭典

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谷山さんの登録情報
平均点:5.83点 書評数:46件

プロフィール| 書評

No.6 10点 本陣殺人事件
横溝正史
(2014/08/18 19:50登録)
密室殺人としてはあまり出来がよくないとされる本陣殺人事件ですが、やはりこの作者の一番の武器は「顔の無い死体」トリックであり、むしろ併録の2編の方がこの時期の横溝小説の面白さを味わえると思います。

「本陣殺人事件」
まあ密室云々よりも三本指の男や琴の音など、この作者らしい舞台設定を楽しめればそれでいい作品かと。

「車井戸はなぜ軋る」
この本の白眉はこの作品です。とにかく暗い話で、明るい要素など何もありませんが、そんな中でヒロインの本位田鶴代の意地らしさが凄く光ります。推理力が高いがゆえに、知らなくてもいい事件の真相を知ってしまい、そのショックで命を縮めてしまう鶴代の可哀想さといったら。

「黒猫亭事件」
最初に「顔の無い死体もの」だと断られてるのに引っかかってしまう。あとかなり陰惨な事件ではあるのですが、金田一が後半メインで登場するおかげで「車井戸」とは違い明るい気持ちで読めました。ホラー的な事件と陽性の性格を持つ金田一探偵という怖いのに楽しいという感覚は中々他の作者の作品では味わえないかも知れません。


No.5 5点 喘ぎ泣く死美人
横溝正史
(2014/08/17 10:32登録)
「憑かれた女」の原型が収録されていたのでそれを目当てに再読。ほとんどの作品が短編かショートショートなので気楽に読めました。

「川獺」
大正11年の作品ということで、作者の作品としては最初期にあたりますが、登場人物ごとに章立てしてあるので話の内容が分かりやすく、かつ結末も意外なもので楽しめます。

「艶書御用心」「素敵なステッキの話」
シュールなユーモアものですが、正直あまり好みではないです。

「夜読むべからず」
ポーを彷彿させる自業自得なホラーもの。タイトルほどには怖くない。

「喘ぎ泣く死美人」
これもホラーですが、主人公があまり怖がらないのであまり怖くない。多分これが表題作になったのはタイトルが印象的だからなのでしょう。

「憑かれた女」
大筋は改稿版と同じですが、由利先生が登場しないためにラストにまとまりがなく、主人公のエマ子も単なる嫌な奴になっています。これは改稿して正解でしょう。
ただこの本で一番分量があるのがこのあんまり面白くない作品なのが辛いです。

「ショートショートストーリー集9編」
玉石混合な感じですが、「桜草の鉢」と「相対性令嬢」が面白かったです。あと道に落ちてるお金を拾うことを職業にした男が主役の「地見屋開業」に妙に夢を感じましたw

「絵馬」
戦後に書かれただけあって、この本の中で一番出来がいい作品。金田一こそ登場しませんが、これが読めるだけでもこの本には価値があります。

「灯台岩の死体」
川獺よりわずか一年前の作品なのですが、妙に読みにくかったです。オチもイマイチ納得できず。

「甲蟲の指輪」
これも正直イマイチ。


No.4 7点 獄門島
横溝正史
(2014/08/17 02:56登録)
戦後の横溝作品の特徴は「死体を使って読者を怖がらせる」で、これを映像化すると非常にインパクトがあるというのが70年代に横溝ブームが巻き起こった要因の一つだと思います。
本作は恐らく最初のそういう作品なので、後の悪魔の手毬唄や犬神家などの印象的な見立て殺人に比べるとちょっと地味でしかも見立て殺人の必然性も薄いかもしれません。
金田一耕助にしても、元々事件の真相を暴くことに関しては天才的なのですが、事件を阻止することには少々無能な部類に入る探偵ではあるのですが、本作では特に戦争帰りで疲れてたからか特にどうしようもなく、狙われてる人物が分かっているにも関わらず3人とも殺されてしまいます。

ということで、確かに面白い作品ではありますが、粗も多く、個人的には横溝黄金時代への助走という位置づけの作品だと思ってます。


No.3 9点 八つ墓村
横溝正史
(2014/08/17 01:33登録)
八つ墓村と言えばやはり野村芳太郎監督作のホラー映画が真っ先に浮かびます。ラストの鍾乳洞でのシーンは本気でトラウマです。

しかし原作は(あの映画に比べたら)実はそれほどホラー要素はたいしたことがなく、冒険ありラブコメありミステリありと盛りだくさんでしかもそれが綺麗にまとまっている痛快冒険アクション小説と言ってもいい内容です。ミステリとしての出来は悪魔の手毬唄や犬神家の一族などに劣るかも知れませんが、娯楽度では横溝作品一と言っていい作品だと思います。


No.2 6点 憑かれた女
横溝正史
(2014/08/16 21:33登録)
表題作の「憑かれた女」他、「首吊船」、「幽霊騎手」の全3編を収録。

「憑かれた女」
バラバラな人体のパーツの幻影に悩まされる風俗嬢のエマ子が怪事件に巻き込まれる話なのですが、その幻影の真相がかなり安っぽい気がしますが逆にこの時代だとハイテクで説得力があったのかも知れない。
そこ以外はよく出来た話だと思いました。しかし終盤登場した由利先生がやたらと「猟奇」という単語を連発するのに少しうんざり。

「首吊船」
80ページほどの分量しかないこともあって、あまり重要ではない脇役の活躍の後すぐ真相という構成で、正直あまり出来のいい作品とは思えなかった。ただ結末はかなり印象的なのでそれで救われてます。

「幽霊騎手」
由利先生も三津木俊助も登場しませんが、この本の中で一番面白い作品でした。読者は事件の真相と真の幽霊騎手は誰かという2つの謎を推理しながら読むことになるのですが、どちらの謎もなるほどとしっくりくるもので、非常に楽しめました。知名度はほとんどない作品ですが、実は隠れた名作と言えるのではないでしょうか。やたらと死人が出るのですが、主人公が陽性のキャラなのであまり暗くならないのもいいです。
ただ一箇所入れ替わりの部分に納得のいかない部分があり、そこだけは残念でした。長年生活をともにした家族が入れ替わったのに気づかないのはさすがに無理があるかと。

「憑かれた女」6点、「首吊船」3点、「幽霊騎手」9点で全体では6点にしたいと思います。


No.1 7点 真珠郎
横溝正史
(2014/08/14 23:17登録)
横溝作品は結構読みましたが戦前物は初挑戦です。
犯人については想像通りだったのですが、一番気になっていた真珠郎の正体に関しては由利先生に教えられるまで分かりませんでした。まあ後出しのような気もするけど一応推理できないことも無かったような気がするし。

それにしてもネタバレなので詳しくは書きませんが、最後の一文がやたらと印象に残りました。

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