home

ミステリの祭典

login
“文学少女”と繋がれた愚者(フール)

作家 野村美月
出版日2006年12月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 5点 ボナンザ
(2021/03/04 23:08登録)
中々いいドロドロ具合で、元ネタをうまく生かしていると思う。

No.3 7点 じきる
(2020/12/10 11:50登録)
シリーズの中の一作と考えれば、これは実に効果的なラストと言える。想定外だったからびっくりした。

No.2 6点 メルカトル
(2020/02/23 22:06登録)
「ああっ、この本ページが足りないわ!」ある日遠子が図書館から借りてきた本は、切り裂かれ、ページが欠けていた―。物語を食べちゃうくらい深く愛する“文学少女”が、これに黙っているわけもない。暴走する遠子に巻き込まれた挙句、何故か文化祭で劇までやるハメになる心葉と級友の芥川だったが…。垣間見たクラスメイトの心の闇。追いつめられ募る狂気。過去に縛られ立ちすくむ魂を、“文学少女”は解き放てるのか―?大好評シリーズ第3弾。
『BOOK』データベースより。

今回は武者小路実篤の『友情』がモチーフ。『友情』を題材に遠子先輩が、心葉のクラスメイトの芥川くんや琴吹さん、一年生の竹田さんらと文化祭で劇を披露するまでの、あれやこれやの物語。
それにしても昼ドラばりのドロドロした男女の愛憎劇が、青春ミステリらしからぬ凄さを見せつけています。それでいて最後には爽やかな一陣の風の様な雰囲気で終えるのは、本シリーズの良さではあると思います。しかし、心葉の抗いがたい過去の疵に芥川君が絡んできて、これからどうなるんだと先行きが気になるところでエンディングとは心憎いですね。おそらくこの事件の顛末は最終巻まで引っ張られる事になるのでしょう、まあそれも一つの趣向として割り切るしかないのだと思います。

本作ではミステリ的要素がやや薄いのと、麻貴先輩の出番が少なかったのが少しだけ不満でした。しかし、芥川君から目が離せなくなりそうです。彼がこれほど重要な役どころを担うことになろうとは思いませんでした。本シリーズまだまだ楽しませて貰えそうです。

No.1 7点 おっさん
(2015/05/29 17:28登録)
・・・・・絶句。
狙いすました、最後の一撃(フィニッシング・ストローク)の破壊力たるや。
いやしかし、そこで終わるかあ。
昨今のアニメ・ファンなら、3話切りという風潮をご存じでしょう。スタートした新作を、とりあえず3話あたりまでは視聴して、以降、その作品を見続けるかどうかを決める、というものです。製作サイドもそれを意識してか、3話で俄然、衝撃的な展開を見せるアニメもあるわけで……ふと、そんなことが頭をよぎりました。
野村美月の“文学少女”シリーズは、聖条学園・文芸部の部長、天野遠子(あまの とおこ)と、文芸部の後輩、「ぼく」こと 井上心葉(いのうえ このは)のコンビが、学園生活のなかで、身辺に発生した“事件”(毎回、内外のなんらかの文芸作品が元ネタになっているのが特徴)を解明していく、ミステリ風味のライトノベルです。本書『繋がれた愚者(フール)』は、『死にたがりの道化(ピエロ)』、『飢え渇く幽霊(ゴースト)』に続く、その第3作。

今回、文芸部は文化祭で劇を上演することになり、その演目に、武者小路実篤の『友情』が選ばれます。前作と違い、モチーフが早い段階で提示されるわけで、そのお題を使って本篇の“事件”をどう料理するかが、作者の腕の見せ所となります。
恥ずかしながら、筆者はこの元ネタを未読だったので(だってねえ――と遠い昔の学生時代に思いを馳せる――人殺しの話ばっかり読んでるような、性格の悪いガキだった自分には、伝え聞く白樺派の性善説は、あまりにも縁遠いものみたいな気がして……)、いったん読書を中断し、どうせならこの機会にと腹をくくり、図書館から日本文学全集の『武者小路實篤集』を借りてきました。で、いまさらながら『友情』に目を通して、意外にこちらのミステリ・センサーに反応するものがあって、ちょっとビックリしたわけですが、そのビックリについては、あとで、あらためて触れることにします。
便宜上、まず簡単に『友情』のストーリーを紹介しておくと――

新進の脚本家・野島は、友人の妹である、美貌の杉子(16歳!)に一目惚れしてしまう。せつなく苦しい恋心を打ち明け、相談できるのは、日頃から尊敬しあい、切磋琢磨している、大親友の作家・大宮だけだった。大宮は、野島の恋の成就のため協力してくれていたが、あるとき突然、勉強のためヨーロッパへ行くと告げ、旅立つ。やがて、心を決め、杉子にプロポーズする野島だったが……                      

と、まあ、そんな感じのお話。
それを「ぼく」が脚色して、急遽――絶対的な部員数不足を補うため――遠子先輩が招集したメンバー(これまでの巻にも登場していたキャラクター陣)と一緒に、芝居を作っていくことになるわけですが、“事件”の主役となるのは、大宮役に起用された、「ぼく」のクラスメイト、芥川一詩(あくたがわ かずし)です。学業優秀、誠実な人柄の芥川君ですが、じつは心に深い傷を負っており、危うい精神状態にあったことが、ストーリーの進行とともに分かってきます。語り手・心葉の一人称とは別に、他の登場人物の視点による記述がカットバックで描かれるのは、前2作同様で、本作ではそれが、「オレ」の書き続ける謎めいた手紙であり、書き手が芥川君であることは、早くに読者には明らかになります。
『友情』に関して、厳しく張りつめた表情で「――たとえどんな理由があっても、自分を信頼している友人を裏切るような真似は、誠意ある人間のすべきことではない」と感想を述べていた彼は――本当に、弓道部の先輩の彼女を奪ったのか? 劇の練習の最中、突然の呼び出しに応じて飛び出した芥川君は、やがて、血のしたたる彫刻刀を握りしめて立っているところを、見つかります。喉と胸を切り裂かれ、倒れ込んだ生徒の前で。「オレが五十嵐先輩を、刺しました」。それは、果たして三角関係の清算だったのか?

いや~、どこが「ライト」ノベルやねん、といいたくなる「ヘビー」な展開ですが、それを、辟易させずに面白く読ませるための演出、シリアス成分とギャグ要素のブレンドは、この作者ならではのものでしょう。そして、過去への巡礼(すべての遠因となった、小学校時代の出来事の調査)を経て訪れるクライマックス――文化祭の、劇の舞台でアドリブ的に繰り広げられる“文学少女”の謎解きは、芥川君を繋ぐ過去の鎖を断ち切り、彼に、前に進む勇気をあたえます。これはやはり、感動的。
ところが。
そんな感動のまま読み進める「エピローグ」の、最後の数ページにいたり、急速に広がる不安感。待てよ、これはいったい、どういうことなんだ?
とどめが、最後の一行なわけです。
!!!
なかなか、これほどのどんでん返しには、純正のミステリのほうでもお目にかかれません。似たような例として思い浮かぶのは、トマス・H・クックのある作品ですが、一発勝負的な、そうした趣向を、シリーズものの3作目に持ってきたというのは、凄い。
ただし、明らかに説明不足です。作者はそんなことは百も承知で、意外性を、次作への強烈な“引き”として使っているわけで(単体としての本作では、謎があえて解かれないまま終わるわけで)、ミステリ・ファンとしては、そこは評価の難しいところではあります。
長編マンガの、何巻目が面白かった、という感覚に近いところがある。
しかし。
「手紙」を使ったアイデアといい、そこから立ち上がる構図といい、じつに巧妙に『友情』をアレンジしたものです。元ネタの料理の仕方という点では、間違いなく、これまでで最高です。

なお、本書では、当然ながら、武者小路実篤の『友情』のストーリーが、最後まで明かされています。ネタバラシが問題になるような小説ではないのですが、それでも『友情』は二部構成をとっており、主人公視点の「上篇」では分からなかった事実が、書簡形式の「下篇」で次々に明らかになっていく、という、その意味ではミステリ仕立てといっていいお話なので(筆者はそこに感心したw)、本書を読むまえに目を通しておくほうが吉ではあります。あ、そのさいは、作者の「自序」はスルーして、『友情』本文を先に読むように。実篤自身がネタバラシしてますからwww

4レコード表示中です 書評