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ミステリの祭典

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呪い殺しの村
海老原浩一シリーズ

作家 小島正樹
出版日2015年02月
平均点4.25点
書評数4人

No.4 5点 nukkam
(2018/03/28 08:45登録)
(ネタバレなしです) 2015年発表の海老原浩一シリーズ第6作の本格派推理小説です(島田荘司との共著「天に還る舟」(2005年)はカウントしていません)。不思議な謎を次から次へと提供するサービス精神は相変わらずでそこは大いに賞賛できるのですが、HORNETさんのご講評で指摘されているように「風呂敷を広げたはいいが上手く畳み切れていない」感覚が残る作品でもあります。その中でメインの謎はトリック説明に最もページを割いていることから「千里眼」「予知」「呪殺」の超能力トリックになるのでしょうが、私には類例を思いつけない独創的なトリックではありますが斬新というより珍奇という印象のトリックでした。個性的な探偵とは言えない海老原の痛ましい過去を序盤で紹介しているので物語の中で何か重要な役割を果たすのかと期待しましたが、結局活かされないまま終わってしまいました。

No.3 6点 名探偵ジャパン
(2017/07/27 20:34登録)
「武家屋敷」での「やりすぎ」感に長いこと敬遠していた小島正樹だったのですが、思い切って(?)二冊目を読んでみることにしました。で、選んだのがこちら。
うーん。今回も「やりすぎ」なことに変わりはないのですが、どうなんでしょうか、これ。
全体を通して思ったのが、「そうなるかなぁ?」「本当に出来るかなぁ?」という懐疑的な視点。個々のトリックを分断して、短編集にしたほうが座りがよいのでは?
読んでいてとても疲れました。私にとって「やりミス」は、ある意味、倉阪鬼一郎の「バカミス」以上に「年に一本」でいいかなぁ。と思わせられたのでした。

No.2 5点 HORNET
(2016/10/09 21:40登録)
 タイトルといい、表紙といい、閉鎖的な村という舞台といい、「呪殺」といい…横溝正史、三津田信三を思わせる本格志向の作家というのはよく伝わってくる。その雰囲気は好きだし、東京の殺人のシ-ンなどはちょっとぞっとしたし、読み物として面白く読め、メインのトリックはなかなか面白かった。
 しかしながら今一つ評価が伸び悩むのは、大仰な謎の提示の割には明かされるトリックが小粒というか、小手先な感じがするのと、トリックに必要な部分以外が「木の陰で目立たないようにやり過ごした」的な雑な感じがするからだ。ある意味同等に不可能だと思われる部分なのに、「なんとかした」みたいになってしまっているのが、一方では理詰めで追っているのに非常にアンバランスで、腑に落ちない。
 数多くの謎を入れ込み、ある程度のところまではそれらを結び付けているのだが、最後の詰めが雑な感じがして、ある意味「風呂敷を広げ過ぎて、収集しきれていない」感じがする。
 本格好きであれば好まれそうな作家なのだが、他作品でもたいてい5~6点あたりで軒並みとどまっているのは、そんなところに原因があるのではないかと思う。

No.1 1点 Campus
(2015/07/29 20:47登録)
「東北の寒村・不亡村に、古くから伝わる「三つの奇跡」。
調査に訪れた探偵の海老原浩一は、術を操る糸瀬家に翻弄される。
一方、「奇跡」と同時刻に、東京で不可解な連続殺人が発生。
警視庁捜査一課の鴻上心が捜査にあたる。被害者には不亡村との繋がりがあった。
海老原は鴻上とともに、怨念渦巻く村の歴史と謎の解明に挑むのだが……。 」(Amazonの作品紹介欄より)

駄作。
こんな作家や作品を「やりすぎ」と評して持ち上げているようでは、本格ミステリ界隈の未来はない。そこまで言い切って良い様な、本当に駄作としか言いようがない作品だ。この作品を読んで楽しめる読者というのは「密室」とか「不可能犯罪」という単語を見ただけで興奮できて、その内実がショボすぎる謎とショボすぎるトリックでも大満足できる変質者だけだろう。
……と言うと、この作品を評価している人に対して物凄く失礼になっちゃうんだろうけど、実際のところそうとしか言いようがないんだよなあ。

だって、この作品で不可能と言われている事象って、こんなんだよ?
「ある男が小屋にこもりました。出てきました。こう言いました。どこどこでだれだれという男が死にました。確認しました。確かにだれだれという男がどこどこで死んでます」
この謎を見て「奇跡だー!」と思える人がうらやましいと思えるレベルの謎だと思いません? 江戸時代とかを舞台にした時代ミステリとかならともかく、21世紀の現代を舞台にした話なんですよ、これ。

こんなの、服の中に通信機器を隠してましたーで済むレベルじゃないですか。もしくは外に仲間がいて、何らかの方法で伝えたんですねで済むレベルじゃないですか。……そして、実際に外に仲間がいて何らかの方法で伝えてるわけです(ネタバレ? でもさ、こんな酷い謎と酷い解決でネタバレも何もなくない?)
多分、作者は言うでしょう。「この何らかの方法というのが新機軸なんだ!斬新なトリックなんだ!」って。
でも、読者としては「は?」ですよ。
そんなの「針と糸で作った密室だけど、糸を傾ける角度が今までにはなかった」と強弁しているようなもんなのに、何でそこに気づかないかねえ……いや、この人、マジで糸を傾ける角度が今までにはなかったみたいなトリック使う人だから仕方ないのか?

で、そんな感じのしょぼい謎としょぼいトリックを幾つか詰め込んで、それでやりすぎと言われてるわけです。
もう、呆れるしかないと私は思うんですが、どうですかね、皆さん。
やりすぎとか不可能犯罪の連続とか、そういう賛辞は柄刀一の『奇跡審問官アーサー』とか島田荘司の諸作みたいな魅力的な謎ととんでもないトリックを幾つも一作に詰め込んでいる作家に送るべき言葉であって、針と糸レベルのトリックを幾つも詰め込んだところで、やりすぎでも何でもないと思うんだけど……
たとえていうなら、この『呪い殺しの村』はあれだね。面白かったですの連続でマス目が埋められた三十枚の読書感想文。そんなので「よく書いたねー」と頭をなでてもらえるのは小学三年生までだって、普通。

まあ、別に良いんですよ。
小島君は悪くない。彼は一生懸命、凄いと思ってこういう作品を書いたんだから。
でも、ね。大人は許しちゃいけないと思うんですよ。囃し立てちゃいけないと思うんですよ。
はっきり言ってあげましょうよ。これじゃ駄目だって。

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