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ミステリの祭典

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ヴァイオリン職人の探求と推理
ヴァイオリン職人ジャンニ・カスティリョーネ

作家 ポール・アダム
出版日2014年05月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 5点 nukkam
(2019/09/30 21:10登録)
(ネタバレなしです) 1993年のデビュー以来、大人向け作品と子供向け作品と両方を書き分けている英国のポール・アダム(1958年生まれ)が「Cremona Mysteries」という新シリーズを開始しました。2004年発表の本書がシリーズ第1作で、ヴァイオリン生産で世界的に有名なイタリアのクレモナのヴァイオリン職人のジャンニ・カスティリョーネ(本書では63歳)を主人公にしています(ちなみに作者自身、イタリア在住経験があるそうです)。親友の同業者が殺され、彼が幻のヴァイオリンを追い求めていたことが判って犯人探しとヴァイオリンの行方を追及するプロットです。手掛かりを求めてクレモナだけでなくイタリアのあちこち、果ては英国まで足を伸ばすトラベル・ミステリーでもあります。後者の謎解きの部分が圧倒的に多く、ヴァイオリンの描写、ヴァイオリンにまつわる歴史、ヴァイオリンを巡っての人間模様とヴァイオリンに関心が低いであろう読者が飽きないようにあの手この手を使っているのがひしひしと伝わってきます。一方で殺人事件の方は20章でジャンニ自身が認めているように「ただのカン」で解決しているようにしか感じられず犯人当て本格派推理小説としては不満の残る出来栄えです。ヴァイオリンへの情熱を殺人の謎解きの方にも費やしてほしかったですね(笑)。

No.3 6点 弾十六
(2018/10/31 21:54登録)
<掟破りですが読む前に書いています!>
私は古楽が好きで、ということは古楽器も好きなのでストラディヴァリは整形美女だと思っています。(当時の楽器を後世の好みに合わせて「鳴る」様に手を加えているということ)それに法外な値段!この本ではどんな世界が展開してるのか、今からとても楽しみです… アマーティやガルネリも出てるのかな?読了後、ちゃんと評を書きます!(なので、どうかご勘弁を)

No.2 6点
(2015/10/30 10:46登録)
ヴァイオリンの名器に関する薀蓄が適度にあり、好ましい。
ストラディバリウスやグァルネリウスは楽器を超越し、もはやアンティークなのか。小説の中でも語られていたが、楽器としての価値が高いのに、弾きもせず、ただ集めて、人にも見せず飾っているだけなんて馬鹿げたことだ。
とはいえ多くの著名な演奏家も持っているわけだから、実用価値と骨董価値の両性を具備した芸術品ということか。
日本では、偽のストラディバリウスだと後でわかっても、堂々と、「音が気に入っている」と言ったすごいプロもいる。でも悔しかっただろうな。

本編の推理の対象は、イタリア内の離れた土地で相次いで起こった2つの殺人。被害者は、主人公の親友でもあるヴァイオリン職人と、変わり者の老コレクター。幻の名器の存在が事件の背景にあるのか?
事件を追うのは63歳のヴァイオリン職人・ジャンニと、若き刑事・グァスタフェステ。
捜査はけっこう広範囲にわたるせいか、遅々としている。でもこのゆったりとした流れがかえっていい。
ジャンニの、がつがつせず優しさのある人柄が小説の雰囲気に合っている。女性や子どもへの接し方もいい。酸いも甘いも噛み分けた域に達したということなのか。

謎解きを楽しむというほどではなかったが、小説としては十分な出来だった。

No.1 8点 makomako
(2014/10/06 07:46登録)
 あまり聞いたことのない作家で翻訳題名も中身そのものの。なんだか垢抜けない題名としたものだが原作そのものの小説名だったら読まなかったかも。
 確かに推理小説ですががちがちの本格物ではなく、感じのよいヴァイオリン職人のジャンニがヴァイオリンの専門知識と人脈とそして適度にイマジネーションを働かせて解決へいたるお話です
 グァルネリやストラディバリなどヴァイオリンの名器の値段や売買はこんなふうにされているのだと大いに驚きました。真贋も偽物を作った本人が鑑定していればどうしようもない。なんということでしょう。
 クラシック音楽に興味がなくても十分に楽しめると思いますが、興味のある人間にとっては演奏者やヴァイオリンの名前が出るとその演奏が耳に頭に響きより心地よいのです。
 海外ミステリーにありがちな異常性格の探偵ではなく、心あたたかで超一流の職人という素晴らしい名探偵の出現に乾杯!

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