窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿1 |
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作家 | マージェリー・アリンガム |
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出版日 | 2014年10月 |
平均点 | 5.25点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 5点 | ボナンザ | |
(2023/01/22 17:48登録) 懐かしい雰囲気が味わえる短編集。訳がよくて読みやすいのは最近のいい傾向。 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | |
(2015/01/17 22:07登録) 作者はA.クリスティ、D.セイヤーズ、N.オマーシュと並ぶ、英国四大女流推理作家のひとり。 その作者が創造した名探偵“アルバート・キャンピオン”ものを集めた作品集。 私自身初読なのだが、最近創元文庫で刊行されたので早速読了。 ①「ボーダーライン事件」=何の「ボーダーライン」なのかが事件のミソ。これみよがしに現場見取り図などが挿入されているが、キャンピオンの解決を読むと「何じゃこりゃ・・・?」と思わないでもない。でも作品の雰囲気は好き。 ②「窓辺の老人」=ロンドンの老舗クラブの窓辺にいつも座っているひとりの老人。その老人もついに寿命を迎えた・・・と思った矢先に生き返った老人の姿を発見してしまう! 分かってみると実になんてことない真実なのだが・・・。これも雰囲気は好き。 ③「懐かしの我が家」=ある犯罪の手口が“懐かしの我が家”ってことなのだが、これも分かってみると何てことないことは共通。いかにも怪しいのに脳天気にモンテカルロに遊びに来てしまう被害者一行がカワイイ。 ④「怪盗<疑問符>」=<疑問符>というのは「?」ということで、クエスチョンマークの形状そのものが肝となっている。子供だましのような話なのだが、本作が発表された雑誌の表紙には「?」の意味がそのまま印刷されている(これって思い切りネタバレでは?)。 ⑤「未亡人」=「未亡人」という名の犯罪者・・・って何ていうネーミングセンス!? これはミステリーっていうかドタバタ劇というような雰囲気。でもまぁのんびりしてていい雰囲気。 ⑥「行動の意味」=これは何だろう・・・!? ⑦「犬の日」=これも何だろう・・・!? 以上7編。他にボーナストラックとして「我が友、キャンピオン氏」というエッセーを収録。 何回も書いてきたけど、何とも雰囲気の良い作品なのだ。 まったく殺伐としてなくて、緩~い感じで読める作品が並ぶ。 他の方も触れているとおり、本格ミステリーと呼べそうなのは①~③くらいで、後はジャンル分けの難しい作品ばかり。 そういうわけで、正統派の短編集を求める向きには、時代性を勘案してもちょっと物足りないかもしれない。 でも読み物としてはマズマズ評価していいのではないか。 (ベストはやはり①でしょうか。③も個人的には好き。) |
No.2 | 5点 | nukkam | |
(2014/11/17 18:35登録) (ネタバレなしです) 日本で独自に編集されたアルバート・キャンピオンシリーズ短編集ですが、ほぼ発表年代順に収めてあるのがいいですね。1936年から1939年にかけて発表された7つのシリーズ短編にエッセイが1作収めてあります。長編でも本格派推理小説あり冒険スリラーありと多彩な作風のシリーズですが短編もやはり多彩でした。kanamoriさんの書評にもあるように本格派推理小説らしい作品は「ボーダーライン事件」と「窓辺の老人」ぐらいでしょうか。もっとも前者は何だこれはと言いたくなるような人を食った真相ですし、後者の方は何が起きたのかさえなかなかはっきりしないもやっとした展開です。「怪盗<疑問符>」も本格派と言えなくはありませんが、推理が強引過ぎです。中には非ミステリー作品もあってとらえどころがありません。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2014/11/08 10:40登録) アマチュア探偵アルバート・キャンピオンが登場する日本で編まれたオリジナル短編集。英国四大女流ミステリ作家の一人といわれたアリンガムだが、創元推理文庫から出るのは「反逆者の財布」以来、なんと半世紀ぶりらしいw 「本格」にジャンル投票している人もいらっしゃるが、唯一20年代に発表された有名な不可能犯罪もの「ボーダーライン事件」と、表題作「窓辺の老人」が黄金期らしいトリッキイな本格編で、他はコンゲーム風味の冒険スリラーが中心になっている。 「ボーダーライン事件」は、アリンガム短編のマスターピースということに異存はないけれど、今回再読して、記号化された端役をひとりの人間として見ることで謎が解けるのだから、オーツ警部のラストの台詞はどうなんだろう?とは思った。 「怪盗”疑問符”」「懐かしの我が家」「行動の意味」といった怪盗や詐欺師、スパイなどの悪漢が登場する冒険スリラーもなかなか面白い。キャンピオンの女友達(とくにクロエ嬢が最高w)など、登場する脇役までが生き生きしていて読んでいて楽しい。 巻末の作者によるエッセイでシリーズの輪郭が掴めるのも良い。ただ、従僕ラッグやキャンピオンの妻となるアマンダなどのレギュラー陣はこの短編集には登場しない。そのうち論創社の未読の冒険スリラーも読んでみようと思う。 |