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ミステリの祭典

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ウランバーナの森

作家 奥田英朗
出版日1997年08月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 4点 Tetchy
(2023/09/13 01:06登録)
ジョン・レノンが生前主夫生活を送るのに軽井沢に逗留していたのは有名な話だが、本書はジョンが軽井沢で送っていた4年間の逗留生活にスポットを当てたお話である。ジョンが名作“ダブル・ファンタジー”の創作のきっかけを掴むまでに至る魂の逍遥とでも云おうか。
なお作中のジョンの妻の名前や曲名などが微妙に変えられている(作中ヨーコではなくケイコ)。この辺は大人の事情なのだろうが、実に座り心地の悪い読書を感じさせ、もどかしかった。


まず延々ジョンの便秘が解消されない問題が続くこと。排便シーンがいくつもあり、もしかしたらこんなにトイレで排便するのを語った小説はこれが初めてではないだろうか?ジョンが便秘と格闘し、苦悶する姿は滑稽でありながら実に面白い。特に病院で与えられた特大浣腸の件は爆笑してしまった。

実はこの便秘がこの小説のキーだとは思わなかった。この便秘が解消されることがジョンの悔恨からの解放に繋がるのだ。

ジョン・レノンに纏わる逸話や実話、エピソードを消化して彼の人生と創作のキーとなる母親という存在、そして息子を上手く絡ませて幻想小説を紡ぐという発想は買えるものの、もう少しエンタテインメントによって欲しかった。私は今は閉館したジョン・レノン・ミュージアムにも行ったくらいのファンだが、それでもなかなかこの物語にはのめりこめなかった。特に先にも書いたが諸般の事情からか有名なビートルズの歌やジョンの歌も歌詞も微妙に変えられているし、核心の手前で妙な幕で一枚仕切られて一番触れたいところに触れられない忸怩たる思いを終始感じたからだ。オノ・ヨーコが本書を読んでどう思うのか(思ったのか)、知りたいものだ。

ところで本書で出てくるアネモネ医院の心療内科の先生は後の伊良部先生に繋がるのだろうか?そう考えると今の奥田氏の原型はすでにここにあったのだろう。そう考えると奥田ファンこそ当たってほしい作品だ。

No.3 5点 いいちこ
(2023/08/14 20:54登録)
本作の主人公は「ジョン」とされているが、これは明らかにジョン・レノンであろうし、妻の「ケイコ」はオノ・ヨーコ、「ジュニア」はショーンだろう。
著者は、ジョン・レノンが4年間の空白を置いて発表したアルバムの作風が大きく変わった点をふまえ、その「空白の4年間」を埋めてみたかったと語っている。
悪い作品ではないと感じたが、本作が普遍的な意味をもっているのかどうかは、判断が難しいというか、読者によって分かれるところであろう。
本サイトで評価すべき作品ではないことは百も承知で、この評価とする。
著者のもっている引き出しの多さは評価されて然るべきだとは思う

No.2 8点
(2012/07/16 19:43登録)
 世界的スターを主人公にしていますが、彼について知識があればもっと楽しめるのかなあと思いつつ読み進めました。
 大人のファンタジーですね。

No.1 7点 VOLKS
(2007/10/19 16:20登録)
不思議な作品だった。
ジョンレノンにも興味はないし、軽井沢という場所にも興味はなかったし、とても現実離れしている設定ではあったけれど面白く読み進められ、更に読後感が気持ちよかった。

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