キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人 名探偵三途川理シリーズ/改題『キャットフード』 |
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作家 | 森川智喜 |
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出版日 | 2010年07月 |
平均点 | 6.17点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | 虫暮部 | |
(2024/08/23 13:06登録) 奇天烈な設定に呼応して個性的な、しかもしっかり面白いロジックを展開。しかしオチは、ピースを嵌める代わりに力業で握り潰してしまった感じで満足出来なかった。 |
No.5 | 7点 | sophia | |
(2022/07/27 00:16登録) 本格ミステリ大賞受賞作「スノーホワイト」を読む前に前作を軽く読んでおこうと手を伸ばしただけだったのですが、設定が独特な上に論理クイズのようで割と楽しめました。ただ、本作はウィリーと三途川理の頭脳バトルといった趣ですが、ウィリーは終始後手に回っていてほぼワンサイドゲームじゃないですか?(まあ使える駒数が多くて三途川が断然有利なのですけど)そしてメルヘンかつコミカルな雰囲気がだんだん薄れてガッチリした殺し合いになっていき後味が悪い上にラストがちょっと分かりにくいですね。しかしながらアクの強いヒール役の探偵が衝撃的で、「スノーホワイト」を読むのがより楽しみになりました。 |
No.4 | 6点 | 風桜青紫 | |
(2016/01/27 02:23登録) 出だしからハチャメチャなスタートで爆笑させてもらった。人間缶詰工場ってなんやねん。ノリノリで登場したペンタメローネくんが勢いであっさり死亡したり、ひやま君が放置プレイを食らったりとなかなか笑えるシーンが続く。たぶん冗談のノリの延長線で作品を書くタイプの人で、書いてて楽しかったに違いない。ファニーな設定で笑いをとる一方、そこから話を広げる手腕は見事。とはいっても、謎解きものとして面白いかと言われれば微妙なところ。仕掛けは良くできているんだが、「ここが謎の焦点ですよ!」という見せ方があまり上手くないので、種明かしをされてもあまり驚けないのだ。どうも円居挽と同じく、軽いタッチでありながら、読者に高い水準を求めすぎている。京大ミス研の身内にはウケるのだろうけども、これを買い求めるなかにはもちろん水準の低いクソ読者もいるわけで、「なんだかよくわかんなかった。こんなの小学生の作文だぜ」という感想を持たれても仕方がないだろう。仕掛けの充実ぶりは評価するけども、作品としてはまだまだぎこちない感じ。 |
No.3 | 8点 | チャー平 | |
(2015/01/22 17:12登録) 僕はわりと猫が好きなんですが(イヌの次くらいに)、猫がしゃべるというのに、一旦びっくりしたけれどなんだかよく考えれば、猫も年いちどくらいのの気まぐれで、ヒト語をしゃべっていたような気がするな、と思って、作者の猫に対する観察力には並々ならぬものがあると驚愕したのです。なるほど、これは猫好きが満足する内容であるなと感心するばかりであります。しかも、この作品には猫の心理描写がふんだんにもりこまれていて、思わず猫を撫でてやりたくなります(僕は猫を飼っていないですが)。とにかく、キャットフードは猫の冒険物語としても読めるし、ピカレスクロマンとしても読めるのです。 まぁ猫なんてどうでもいいのですが。 |
No.2 | 8点 | 平和マン | |
(2015/01/22 00:26登録) できる……! 森川智喜。間違いなく、これから評価される作家に違いない。 しゃべる化け猫、人肉ミンチ工場、悪役に回る探偵……。どの要素もふざけまくりで笑いが止まらないのだが、その中には若年層の読者を惹きつけるエッセンスがふんだんに盛り込まれている。 例えば、昨今の若者が支持する本は何なのか。定期的に行われている「中高生が読む本」のアンケート結果を見てみれば、『カラフル』や『バトル・ロワイアル』はもちろんのこと、『容疑者Xの献身』『悪の教典』『インシテミル』とミステリ好きにも馴染み深い作品が上位に名を連ねている。文章的な難が指摘されているにも関わらず、山田悠介作品が高い支持を受けてるのも見逃せない。また、本屋大賞では伊坂幸太郎、森見登美彦、有川浩が常連だ。 これらの作品に共通して見られている要素は何かと言えば、《読みやすさ》《ゲーム的な世界設定》《引き込まれる残酷描写》《先を予想させないスピード感ある展開》《分かりやすく衝撃のあるオチ》と私は考える。そして本作のキャットフードももれなくこれらの要素を踏襲しているではないか。もちろん私も『キャットフード』の世界へ一気に引き込まれてしまった。森川智喜先生の技量には舌を巻くばかりだ。 本作はライトノベルレーベルで発行されており、文章が読みやすい仕上がりになっている。新本格初期の作品に「人間が書けてない」という批判があったのは有名な話だが、本作ではそれらを揶揄するかのように登場人物に個性がない(後述の名探偵三途川理を除く)。作家の技量不足だという意見もあるだろうが、ゲーム性や読みやすさを追求していけば捨て駒の登場人物たちなど力を入れて書く必要がないではないだろうか。『十角館の殺人』がいまでも多くの支持を得て、ミステリ初心者の入口になっているのも無関係ではないだろう。 そして本作を盛り上げる大きな要素として本作の探偵役である三途川理の存在を強調しておきたい。物語中盤での突然の登場、自分の利益を追求する悪人、という要素は麻耶雄嵩のシリーズ探偵・メルカトル鮎を思い起こさせるが、『痾』や『鴉』や短編集でのメルカトルが語り手と協力して事件の解決(その形に差はあるが)に立ち向かっているのに対して、三途川理は完全に語り手である化け猫・ウィリーの敵として、読者視点での悪役として描かれている。通常ならば語り手の強い味方であるはずの名探偵が、大きな敵として立ちはだかるのだ。いわば、モリアーティ教授やジョン・クレーがワトスンくんを痛めつけるために思考を巡らせる課程が本作では焦点に当てられているのである。私の考える《面白いミステリーの要素》に、形式化した概念の破壊というものがある。これが面白くないはずがない。彼は本作の続編でもある『スノーホワイト』や『踊る人形』にも登場し、そこでも語り手の立ちはだかる強敵として現れる。森川智喜の作品を彼のものにあらしめているのはまさしくこの名探偵あってこそだ。 かつて京大トリオや有栖川有栖、北村薫、山口雅也を始めとした作家たちが、旧時代の化石たちを打ち破って新本格というジャンルを打ち立てた。登場時には各方面からの攻撃にあった清涼院流水も、本人や弟作家たちの活躍によってその価値を認められ始めている。森川先生も安直な批判に押されることなく、この作風を続けていって欲しいものである。 とまあ、個人的にはかなり好きな作品なのだが、謎が解決される部分の見せ方にぎこちなさがあったのが残念。もちろん読み手としての私の力不足もあろうが、最終局面において猫が一匹増えた謎などなかなか作りこまれているにも関わらず、直前まで謎の提示がされていないために驚きが半減したように感じた。ただ『スノーホワイト』でも同様の趣向が用いられているところを見ると、意図的にそういう構造にしてあるらしい。うーん、推理をしない若者に向けて書くことを念頭に置いているのだろうが、これがうまく決まっているかは私には判断しかねるところ。 採点は8点。森川先生のこれからに期待したいところである。 |
No.1 | 2点 | メルカトル | |
(2014/08/20 22:05登録) 何これ。小学生の作文かい? ラストの捻りがちょっと効いているので2点だが、本来なら1点。 こんなもの出版しちゃいけないよなあ、講談社も落ちたもんだ。 |