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ミステリの祭典

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葡萄園の骨
スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーシリーズ

作家 アーロン・エルキンズ
出版日2014年01月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 5点 YMY
(2018/07/21 09:24登録)
イタリアのワイナリーが舞台。このシリーズの魅力はなんといっても、ギデオンのキャラクターと、骨についての深い造詣。ちっぽけな骨片から驚くようなことが判明する過程が知的な興奮を与えてくれる。また今回はおいしそうな料理が次々と登場し、ワインと美食とミステリは実に魅惑的な組み合わせだと再認識させられた。

No.3 5点 nukkam
(2016/01/16 22:18登録)
(ネタバレなしです) 2012年発表のギデオン・オリヴァーシリーズの第17作の本格派推理小説です。前半からギデオンの「スケルトン探偵」ぶりがよく発揮されていますが死因の説明が少々持って回ったようなところがあります。なぜそのような殺人方法になったかの謎解きで終盤まで引っ張っていますが、その謎解きと犯人当ての謎解きが別々に解決されたような印象を受けました。ギデオンが犯人当てにあまり貢献していないからでしょう。本書の舞台はイタリアで数々のイタリア料理描写が物語を彩りますが大半がイタリア語での料理名での紹介のため、ピザやスパゲティ程度の語学知識しかない私には残念ながらぴんと来ませんでした。

No.2 5点 E-BANKER
(2014/08/27 21:14登録)
前作「騙す骨」から四年、ようやく刊行された“スケルトン探偵”シリーズの最新作。
今回の舞台はイタリアはフィレンツェとその近郊のワイナリー、というわけで酒好きには堪らない?作品。

~どこへ行こうと、スケルトン探偵ことギデオン・オリヴァーを迎えるのは骨なのか。イタリア・トスカーナ地方の山中で発見された二体の白骨死体。一年ほど前に失踪していた葡萄園経営者夫婦のものだ。状況からみて、不倫を疑った夫が妻を射殺してから自殺したものと警察は考える。だがたまたま夫婦と知り合いでもあったギデオンが白骨の鑑定をしたことから、意外な事実が次々と明るみに!謎が謎を呼ぶ人気シリーズ最新作~

さすがに安定感たっぷりのシリーズ作品。
本作でも“たまたま”白骨死体の鑑定を行うことになったギデオン教授。そうなると、当然のように今までの捜査をひっくり返す事実が明るみに出る・・・(まさに「様式美」、まさに「予定調和」。)
二体の白骨からは、二人がおおよそ想像がつかないような奇妙な行動をとったことが判明。
これが、本作を貫く大きな謎になるのだ。

真相は新たな殺人が起こった後の終盤も押し迫ってからようやく解明される。
ギデオンは相当前から真実に気付いていたフシがあるのだが、なぜか推理を披露せぬままスルー状態。
その辺はやや消化不良気味で、引っ張ったにしてはサプライズ感にも乏しい。
まぁだいぶネタ切れになってきたということなのか、さすがに高齢となった作者に以前と同じような切れ味は期待できないということなのだろう。

毎回、トラベルミステリー的な味わいもある本シリーズなのだが、本作ではそれが相当顕著。
フィレンツェの名所やイタリア料理、ワインの数々が、ギデオンやその仲間たちに次々に紹介される。
(イタリア、フィレンツェ・・・行ってみたいよねぇ・・・)
ということで、シリーズファンならば必読かもしれないが、それ以外の方にはそれほどオススメはできないかな。
でも、次作をついつい期待してしまうんだけどね。

No.1 6点 Tetchy
(2014/02/07 22:44登録)
刊行を心待ちにしているある特定の作家の作品、もしくはシリーズ作品というのが誰しもあるだろうが、人類学者“スケルトン探偵”ギデオン・オリヴァーシリーズは私にとってそんな作品群の1つであり、刊行予定に『~の骨』のタイトルを見た私は思わず快哉を挙げてしまった。なんと前作から3年ぶりの刊行である。これは『洞窟の骨』から『骨の島』までの4年ぶりに続くブランクの長さであり、しかも『骨の島』以降ほぼ1年に1作のペースで刊行されていただけに、作者エルキンズの年齢も考えると―なんと78歳!―シリーズは終了してしまったものだと思っていたので本当に本作の刊行は喜びもひとしおなのだ。

物語の舞台はイタリアはフィレンツェ。しかし物語の中心はそこから車で約40分ばかり離れたワイナリー<ヴィラ・アンティカ>で、そこでワイナリーを経営するクビデュ一族が事件の容疑者たちとなる。
今回も例によってギデオンの骨鑑定から事件の謎が明らかになる。いや実際はイタリア憲兵隊によって処理された事案がシンポジウムの講師として招かれたギデオンの骨鑑定によって逆に謎が深まるのだ。

3年間の沈黙の末に刊行された本書はそれだけにギデオンの骨の鑑定を存分に振るっている。特に今回は2体の崖下の白骨死体をギデオンが鑑定することで二転三転事実が覆されるといった充実ぶり。

またエルキンズのストーリーテラーぶりは健在。冒頭の1章でいきなり昔ながらのワイナリーを経営するクビデュ一族の家族会議によって読者は陽光眩しいイタリアの地に招かれることになる。そしてそんな家族のやり取りを通じてクビデュ家それぞれの人となりがするっと頭に入ってくる。この1章で既に読者の頭の中にはこの憎めないイタリアのワイナリー一家が住み込んでしまうのだ。

しかし今回はそれでも物語としては冗長に過ぎたという感は否めない。この二体の崖下の白骨体を二度の鑑定で事実を二転三転させる趣向は買う物の、とにかくギデオンの語り口によってじらしにじらされたように思えてならない。ギデオンってこんなに回りくどかったっけ?などと思ったくらいだ。

加えて観光小説の一面も持つこのシリーズだが、今回はそれが特に顕著。特にイタリア語が今回はまんべんなく散りばめられており、読むのにつっかることしきりで、更にはこれが特にページ数を膨らましているように感じた。取材の成果を存分に発揮したかったのだろうが、これではイタリア旅行の費用をとことん経費で落とそうとしているようにも勘ぐってしまうではないか。

とまあ、下衆の勘ぐりはさておき、今回もギデオンの骨の鑑定を愉しませてもらった。昨今ではジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズやドラマ『CSI』シリーズなど、鑑定が活躍するシリーズが活況を呈しているが、古くからあるこのスケルトン探偵による骨の鑑定はそれらブームとは一線を画した面白味があり、エルキンズの健在ぶりを堪能した。
さて作者の年齢を考えると次回作が気になるが、ここは素直に一ファンとして次のギデオンの活躍を心待ちにしておこう。

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