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ミステリの祭典

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影踏み

作家 横山秀夫
出版日2003年11月
平均点5.67点
書評数6人

No.6 6点 パメル
(2022/06/18 08:37登録)
主人公はノビ師。ノビ師とは、空き巣の一種で家人が寝静まった夜に忍び込み、盗みを働くといういことで、通称「ノビ師」。ノビ師である真壁修一は、名前から刑事の間で「ノビカベ」と呼ばれていた。修一の頭の中には、死んだ弟・啓二の魂が住み着いていて、意識の存在として二人は会話をし、事件を共に追うというSFチックな設定。以前、取り合った女性・久子を交え織りなす7編からなる連作短編集。
「消息」修一が忍び込みで捕まった日。寝ずに起きていた女性に見つかるも、何の反応も示さなかった。あの女性は、夫を殺そうとしていたのでは。修一の頭の良さと啓二の記憶力の良さがわかる。
「刻印」幼馴染の刑事が死んでいるのが見つかった。修一は「終息」で出てきた、夫を殺そうとしていた女性が関係しているはずだと踏むが、女性にはアリバイがあった。ここでも啓二の記憶力が際立っている。
「抱擁」久子が勤める保育園で現金盗難騒ぎの話を知る。久子が疑われているらしい。修一は、犯人を探そうと調べていく。久子の揺れる思い。啓二にも決断が迫られる。
「業火」盗人狩りが立て続けに起きているという話を聞いた途端、修一も襲われた。修一は自分を曲げない、芯の強さがうかがえる。
「使途」刑務所にいた時の約束。サンタクロースをやってくれないかと頼まれた。ノビ師にしかできないと。筋を通す男の優しさが滲み出ている。
「遺言」一度会っただけの同業者が死んだ。「真壁を呼べ」と何度も口走ったと言う。真壁修一という男の複雑さが見え隠れする。
「行方」久子がストーカーされていると相談にくる。修一と啓二と久子。三人の抱えるものが、ここで終結する。啓二の告白する16年前の真相は痛切。
修一は泥棒から足を洗ったのか、久子と新たな生活を始めたのかは書かれずに終わっている。啓二の最後の願いが叶うことを願うばかり。

No.5 6点 まさむね
(2014/07/30 23:37登録)
 犯罪者(出所したばかりの窃盗犯)を主人公に据えた,横山作品の中では異色と言ってよい連作短編集。ハードボイルド的な色彩もあって,結構新鮮な気分で読み進められました。
 火事で亡くなった双子の弟「啓二」や,恋人「久子」との関係も気になって,グイグイ読ませます。勿論,筆者のリーダビリティの高さがあってこそですが。
 ラスト2編,「遺言」と「行方」が好み。こういう横山作品もイイと思いますよ。

No.4 6点 simo10
(2013/08/11 22:06登録)
忍び込み専門のドロボウ(ノビ師)の真壁修一を主人公とした連作短編集です。
ドロボウが主人公というだけで異色であり、伊坂氏を連想してしまいますが、さらにこの主人公、死んだ弟「啓二」の魂が住み着いており、対話までできてしまうという特殊能力を持っています。
横山氏らしく、謎の提示と真相の解明までのバランスが良いです。
全体的に暗めの作風が私的には好みで、修一、啓二、久子の成り行きが気になってぐいぐい読めました。
ラストは切ないが納得です。

No.3 4点 itokin
(2011/07/03 14:18登録)
数年前に読んだのだが、氏の作品では最低でした。盛り上がりもなくやたら暗かったったと記憶している。

No.2 7点 E-BANKER
(2011/02/12 20:59登録)
「ノビカベ」の異名を持つノビ師、真壁を主人公とした連作短編集。
いつもの警察小説とは一味違い、犯罪者視点でのプロットが逆に新鮮な作品。
①「消息」=真壁が逮捕されるきっかけとなった事件関係者である美貌の人妻を巡って物語はスタートします。
②「刻印」=真壁の少年時代の友人、刑事の吉川が殺害される事件が発生。そこにも例の人妻が関係し・・・最終的には意外な真犯人が明らかになります。聖職者も一皮向けば・・・ですね。
③「抱擁」=真壁の恋人とその友人。見かけとは裏腹な人間模様。人間の心って一筋縄ではいかないものですね・・・
④「業火」=市内で次々と泥棒が襲撃されていく中、ついには真壁にも魔の手が・・・瀕死の重傷を負っても病院を飛び出す真壁は不死身?
⑤「使途」=真壁が獄中で知り合った男から頼まれた「代打サンタクロース役」。人物関係を探っていくうちに、謎が深まって・・・ラストは「いい話」でまとまる。
⑥「遺言」=ある犯罪者の死。なぜか真壁に残された遺言の謎。犯罪者の親子に果たして愛はあったのか?
⑦「行方」=またも真壁の恋人を巡って事件が発生。昔、ある事件で双子の弟を失った真壁の前に、もう1組の双子が現れ・・・これもやや意外なラスト。
以上7編。
どの作品でも高レベルな横山短編集。この作品も例外ではありませんでした。
警察視点のストーリーの場合、組織のしがらみや人間関係の難しさなどをベースにしたプロットが目立ちますが、本作の場合は「真壁」という特異なキャラが存分に生かされてます。
ということで、いつものとおり「読んで決して損のない」横山の短編集という評価でいいと思います。
(これを読むと、犯罪者と警察って決して「水と油」ではなく、ある種同じカテゴリーに属する存在なのがよく分かる・・・)

No.1 5点 おしょわ
(2008/10/20 22:54登録)
設定に無理があります。

伏線の張り方は相変わらずうまいんですけどね。

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