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ミステリの祭典

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迷路の花嫁
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1955年01月
平均点5.60点
書評数5人

No.5 6点 HORNET
(2018/03/31 20:37登録)
 ミステリとしては△(というか金田一もほとんど登場せず、推理要素はほとんどない)だけど、話としてはなかなか読ませる〇。これが総合評価。

 始まりの事件現場は結構陰惨な感じなのだが、それ以降は時代を感じさせるどろどろとした風俗的な人間模様の話に。捜査とかトリックとかの話はほとんどなく、完全に通俗小説化する(乱歩の作風に近いと感じた)。
 ただ、それがそれで結構面白くて、暗躍する松原浩三なる人物の動向から目が離せなくなる。繰り返すが、ミステリとしては安っぽいが、結構読ませる作品だった

No.4 5点 nukkam
(2018/01/04 17:18登録)
(ネタバレなしです) 1954年から1955年にかけての金田一耕助シリーズは「幽霊男」(1954年)、「三つ首塔」(1955年)、「吸血蛾」(1955年)と本格派推理小説というより通俗スリラー小説に分類すべきではという作品が並ぶのですが、1955年発表のシリーズ第11作である本書もまた異色の作品です。序盤で殺人事件が起きて金田一や警察が捜査に乗り出すところは普通に本格派推理小説風の展開なのですがいつの間にか謎解きは脇に置かれてしまい、主人公の松原(小説家)が悪の心霊術師を退治する物語に置き換わるのです。これがなかなかの読ませ物で、悪人が典型的な弱者いじめ型ということもあってじわじわと追い詰められていく描写にはつい心の中で喝采を贈りたくなります。こちらの物語の方が全体の半分以上を占めており、最後の最後になって唐突に殺人事件が解決されるのですがそういえばそんな事件もあったけなという感じです(笑)。金田一の影が薄い作品なら例えば「八つ墓村」(1949年)もそういう作品ですがあちらはまだ謎解きを放り出してはいません。本書は非ミステリーの物語がメイン(出来もいい)でミステリーはおまけ程度(出来もいまいち)です。

No.3 6点 りゅうぐうのつかい
(2017/01/16 20:31登録)
横溝正史作品特有の、複雑極まる登場人物間のつながりと乱れた男女関係を背景にして起こる殺人事件。登場人物が多く、お互いの関係を把握するのにやや苦労する話だ(おしげさんって、誰?)。
金田一耕助登場作品であるが、金田一耕助は探偵として活躍するのはなく、瀕死の犯人が最後に自白する際の代弁者として描かれている。
真相はかなり荒唐無稽であり、読者が推理するような要素はなく、主人公松原浩三が悪と闘う姿を描いたハードボイルド小説という感じだ。
登場人物間の愛憎、主人公の他人への思いやりや行動力が描かれ、胸を打つラストを持っているなど、物語としては十分に読み応えのある作品だった。

No.2 5点 斎藤警部
(2015/11/19 10:39登録)
通俗横溝、最後は涙で〆。
巷で噂の「赤い右手」じゃないが、後先決めずに書き飛ばしたパルプフィクションの香りがするね。犯人誰にするかは筆の勢い向くまま任せたろう、的な。時に徐々に時に急速に怪しさを増す浩三の行動。集結間際、妙にこれ見よがしに「あの魔王以外皆ハッピーエンド」臭いからこそ膨らむ嗜虐的カタストロフィへの期待。。 終わってみれば正体不明のままの謎人物もいるけど、それもまた良しとする所ですかね。

しかし金田一さんの影の薄さにゃ驚いた。むしろ等々力警部の方がまだ出てる。そもそも探偵役ったって、本作の場合は殺人事件よりも「如何にして魔王を排除するか」という更に大きな人生解決こそ主題なわけで。鬼貫警部や赤影探偵がチラッと登場、謎を解いてさようなら、の類とは全く異質のチョィ役振りは妥当な線ですね。

【ネタバレ】
冒頭に叙述欺瞞の影あり? かと思われたが。。まさか本当にそう来た!

No.1 6点
(2014/05/22 22:38登録)
真相は微妙でした。小説構成から考えると、意外であると同時に非常に納得できるものになっているのですが、論理的に考えると、ずいぶん安易なのです。まず問題なのは最初に起こる殺人事件で最も疑問を感じさせる部分と、被害者が飼っていた犬の毒殺。カーの某有名作と似たパターンで、実際その可能性もすぐ思い浮かべはしたのですが、本作ではカーと違い動機面の説明が説明になっていません。もうひとつこれがメイントリックというアイディアも、犯人の犯行後のある行動がいかにもご都合主義です。
その解決の説明をする金田一耕助の登場シーンが非常に少ない作品でもあります。全体の2/3以上は主人公の作家による新興宗教教祖への復讐譚になっていて、いつの間にか最初の殺人は脇に追いやられ、スリラーとしての面白さがメインになってきます。そういう作品ですので、真相の不自然さには目をつぶって、この評価。

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