home

ミステリの祭典

login
このミステリーがすごい!2013年版
「このミステリーがすごい!」編集部

作家 雑誌、年間ベスト、定期刊行物
出版日2012年12月
平均点4.80点
書評数5人

No.5 5点 Tetchy
(2013/02/28 21:09登録)
最近内容も紙質も低調気味な『このミス』だが、今回も例に漏れず購入。
さて注目のランキングはやはり昨年は横山秀夫復活の年だったということだ。なんせ7年ぶりの新作。体調も崩していたと聞いていたので個人的にはもう作家生活は無理では…と勝手に思っていたが、見事復活し、復帰作が第1位という快挙を成し遂げた。『このミス』で1位を2回獲得したのは船戸与一、髙村薫、東野圭吾3人だけだったが、ここに横山秀夫が並んだことになる。2回1位を獲得した作家の中でデビューして最も短いキャリアの作家かと思ったら、髙村薫がデビュー後8年で最も若かった(横山氏はデビュー14年目)。改めて高村氏は凄かったことがこれで解る。

さて海外の方は『解錠師』が2位に約70点差をつけ、ダントツの1位となった。これは実に意外。てっきり『湿地』が来るのかと思った。続いてデイヴィッド・ピースの『占領都市』、久々復活のトゥロー『無罪』、そして『湿地』が続いた。5位は光文社古典新訳文庫からデュレンマットの『失脚/巫女の死』がランクインしたのは実に驚いた。

しかしもっとも嬉しかったのはマット・スカダーシリーズ最新作をひっさげてローレンス・ブロックが復活のランクインを果たしたことだ。本書でも初来日したブロックと伊坂氏、訳者の田口氏との鼎談が特集され、さらに翻訳ミステリー大賞シンジケートでもブロック再評価、更にミステリマガジンでもブロック特集が組まれたりと気運が高まっているのでここは一挙に復刊してほしいものだ(二見書房さん、早川書房さん、頼みます!)。

あとジャンル別に注目作が挙げられているコラムが収録されているなど、ミステリファンの、ミステリファンによる、ミステリファンのためのランキングムックであったかつての『このミス』の内容を髣髴させたが、まだまだ浅薄になっているのは否めない(特に紙質が悪すぎる)。

No.4 5点
(2013/01/23 10:02登録)
なんといっても、国内堂々1位の「64」の作者・横山秀夫のインタヴューがいちばん。
この記事を読むと、横山氏自身にも長編に対する苦手意識があるのがよくわかります。長期間にわたって中断しながら、書き直ししながら書き続け、その間に病気にもなったとのこと。かなりの苦労があったようです。
早く読みたい気もしますが、「半落ち」ショックがいまだに残っているので、もう少し待ってみます。たんに文庫化を待っているだけともいえますが(笑)。
それと横山氏についてあらためて認識したことは、横山氏が本格ミステリー作家であったこと。
組織モノ、警察モノのちょっと毛色の変わった短編が多いので、本格ミステリーというより、ミステリー味を効かせた変格企業小説のイメージが強かったが、あのプロットの妙味は、やはり本格だからこそという感じですよね。「第三の時効」とか、「臨場」とかね。

警察小説のもう一人の雄である今野敏氏作品も、久々のランク入りを果たしてほしいですね。ただ、この人の作品はミステリー味が低めなのが玉に瑕なんですが。

ランキングのその他については、解説を読みながら、こういうのもあるんだなぁ、読みたいなぁと一瞬思うだけで、そんな思いは長くはつづきません。「64」だけが例外です。
内外を通じてランキング内で唯一読んだのが、原田マハの「楽園のカンヴァス」。これは良かった。

No.3 5点 mini
(2012/12/31 09:51登録)
座談会も復活して昨年版に比べたら読み応えは多少有ったかな
初めて巻末書き下ろし短編というのを試しに1作読んでみた、作者はこのサイトでもたまに書評が上がる中山七里
さり気ない伏線とかそこそこ面白かったよ、それにしても”中山七里”って、岐阜県の恵那地方あたりにそんな名所が有ったような

記事はまぁまぁだったが今年のランキングは正直盛り上がらないなぁ、昨年度にはフォン・シーラッハ「犯罪」とかちょっと食指が動くのが有ったんだけど、今年は読みたいと感じるのが無い
強いて言えばkanamoriさんも書評されていた5位のデュレンマット「失脚/巫女の死」かなぁ、デュレンマットと言えば昔に早川文庫から長編が出ていたはず
例年に比べて今年度のランキングは全体的に小粒と言うか、この1作的な大物感に欠けている印象
それと過去のランクイン作家が20位までだとかなりを占め、良く言えば手馴れて堅実、悪く言えば新鮮味に欠けたランキングだ

さてと恒例の”我が社の隠し玉”いくか

小学館:
イチ推しはギリアン・フリンとベリンダ・バウアーか、小学館文庫自体が話題になっていないのが可哀想

講談社:
ハリー・ポッター以外のJ・K・ローリングはまぁ別格として、コーンウェル、コナリーと毎度御馴染み路線、ゴダードのは新作?

扶桑社:
タイプミスするとたまに”負傷者”になるんだ(苦笑)
スティーヴン・ハンターとか予定されてるが、やはり一番の注目は扶桑社版異色作家短篇集のミニ全集、ラインナップが知りてえなぁ
それより扶桑社よ、リチャード・ニーリイの新刊はどうしたんじゃ?、別に読みたい作家じゃないが書評のタイミング待ってたんだぞ!、延期かよ

集英社:
話題性は地味だけど、CWA受賞作とか意外と良い仕事してるやんけ
フィンランド、イタリア、スペインと国際色も豊か

光文社:
昨今はミステリー出版社と言うより、一般文学の”古典新訳文庫”の方が目立っているよな(笑)、来年はブラックウッドか
でもブラックウッドは創元文庫から既に名作選が出ているしなぁ、私の希望としてはレ・ファニュ「サイラス伯父」なんか新訳で出してくれたら即買いますよ

東京創元社:
アイスランド、スウェーデン、フィンランドと引き続き北欧ブーム、ドイツもね
でもそれよりオーストリアのホームズことバルドウィン・グロルラー「ダゴベルト探偵」がついに登場か
さらに藤原編集室の企画でE・C・R・ロラックの最高傑作との噂が有る「悪魔と警視庁(仮題)」も衝撃的

原書房:
かつては不可能犯罪マニア御用達出版社のイメージだったが、今ではコージー専門文庫を出すなど、良い意味で守備範囲を広げたねぇ、竹田ランダムハウスがアレだからね

国書刊行会:
今年はバトラー「ファイロ・ガッブ」とか良い仕事してくれたんだが、来年は休止なの?

新潮社:
慎重に安定作家だけでなく、話題作も出してくれる新潮社、ミステリー専門出版社以外では文春や角川と並んで貢献度は高い
来年は北朝鮮が舞台の作だとか、イアン・ランキンの新シリーズとか、あとオッ!と思ったのがジェイムズ・M・ケインの幻の・・って気になる

竹田ランダムハウスジャパン:
ここ生きてるの? だって倒・・・

論創社:
正直言って今年出たのにはあまり魅力的なのが無かっただけに、一転して来年はスゲえ~ことになりそう、
待ち焦がれたフィービ・アトウッド・テイラー「コッド岬」がついに読めるのか
デ・ラ・トーレ、パーマー&ライス、ホワイトチャーチなども待ち遠しいが、えっ!と思ったのがドロシー・ボワーズ
同じドロシーで第2のセイヤーズとも言われるドロシー・ボワーズに目を付けるとは、やるな論創、名前だけは知っていたが本来は創元あたりが目を付けそうな作家だと思う
TwitterでアフォードやABC3部作とかリクエストしてる連中の嗜好とはズレているな、社内内部企画なのかな?

早川書房:
一昨年来ポケミスが絶好調だけに大きな路線変更は無いようだ、ノンシリーズが文庫では既刊だったルへインがポケミス初登場くらいかな
TVドラマの小説版「キリング」ってそんな話題になってんの?

文藝春秋:
文春てさ、重厚感と小粋さとを併せ持った独特の社風が有るよな
一方ではS・キング、ディーヴァーと相変らずの大物路線
しかし一番気になるのは、後味の悪い厭ミス短編だけを集めた超不快アンソロジーだ、2月頃に刊行予定だがこれは絶対・・多分買う

ヴィレッジブックス:
アイルランド路線、出版社同士の契約でもしたのかな?

角川書店:
トリは今年も角川、わざと回答遅らせて狙ってるな(笑)
角川もドイツか、それと昨年から妙にSFミステリーに力入れてるが編集者替わった?

以上来年も面白そうな新刊を期待したい
では皆様、来年も良いお年を

No.2 4点 HORNET
(2012/12/10 20:19登録)
 小学生のころ江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを読み漁っていたとはいえ、本格的にミステリにはまり出したのはここ数年。そのきっかけとなったのがこの年刊誌で、毎年出るのが非常に楽しみだった。が・・・。ここ最近、手に取ったときの高揚感が当時ほどではないのは、はまってきたから故なのか?
 ミステリにはまるほど、遡るように過去の名作を読みたい欲求に駆られるため、どうしても最新作、トレンドから遠ざかっていく(両方を追い求めていけるほどの読書家ではないから)。よって最近の本書の私にとっての意義は、ミステリの現在の潮流を知ったり、そこから新たなお気に入り作家を開拓していくことにある。といいながら、未知・未読の作家が並ぶと、それら全てに手を出すエネルギーも時間もないため、かえって撤退ムードにとらわれてしまう。
 そんな自分自身の変容があるためか、各作品解説から魅力を感じるものが少ない。「これは面白そうだ。絶対読む!」という意欲にまでいたるものが。趣旨はもちろんそうなのだろうが、ホントに単なるランキング本になってしまっている感じが年々強くなっている。
 自分のお気に入りは「読書のプロが選ぶ!私のベスト6」。それぞれの立場の人がそれぞれの嗜好で選んでいるのを見るのはなぜか面白い。
 いろいろ書いたが、なんだかんだできっと毎年買い続けてしまうような気がする・・・・・・

No.1 5点 kanamori
(2012/12/10 13:32登録)
今年こそ購読をやめようと思っていましたが、表紙の「ローレンス・ブロック」の大文字につられて、ついつい購入してしまった。(なんだ、1位じゃないのかw)

ランクイン作品の未読本のなかで個人的注目作は、海外では「占領都市」「鷲たちの盟約」かな。デュレンマット傑作集も気になる。国内では、なんといっても幡大介「猫間地獄のわらべ歌」(笑)。同じ作者の、「富豪刑事」の時代小説版「大富豪同心」シリーズも面白そう。

今の時点でランキングの中身に具体的に触れるのは一種のネタバレになるので、かわりに出版社をランク付け?してみました。

「この出版社がやばい!」第1位、論創社さん。
我が社の隠し玉コーナーで個人的に一番注目なのはココ。来年もマニアックな海外クラシックが目白押しなうえに、全編書下ろしの「刑事コロンボ短編集」も楽しみ。採算度外視な感じが本来の意味でヤバイかもw

「この出版社がたかい!」第1位、東京創元社さん。
まあ、いまさらではありますが、ヘニング・マンケル上下巻で2500円というのは、どうみても文庫の規格から外れている。

「この出版社がずるい!」第1位、早川書房さん。
わずか1年前に出したポケミス「解錠師」を、このミス出版に合わせたように文庫化はズルイ!

「この出版社がしょぼい!」原書房、長崎出版、河出書房新社さんなど。
最近クラシック・ミステリの出版がとんとご無沙汰な気が。

5レコード表示中です 書評