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ミステリの祭典

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工学部・水柿助教授の日常

作家 森博嗣
出版日2000年12月
平均点5.88点
書評数8人

No.8 2点 Tetchy
(2017/12/20 23:58登録)
5話を通じて思うのは本書は森氏による、ちょっとしたミステリ風味を加えた自伝的小説なのか(これは反語表現である)。某国立大学工学部建築学科の水柿助教授はそのまま森氏に当て嵌まりそうな人物像である。
何しろ専門が建築材料であり、模型工作を趣味とし、読書とイラストを趣味にしている奥さん須磨子さんがおり、更に後々ミステリ作家になってデビューすることまでが1話目から語られるのだ。これほど作者自身と類似した設定の人物は他にないのではないか。そして話が進むごとにミステリ風味も薄まり、どんどん水柿君と森氏が同化していく。

つまり本書は自分の教授生活の周囲で起きる出来事や見聞きしたエピソードの類を盛り込み、時々それらのエピソードに日常の謎系ミステリの味付けを加えた小説なのだ。

しかしその内容は、思いつくまま気の向くまま、取り留めのない日々雑感と云った趣で、建築学科の助教授水柿君の日常に起こっていることにミステリの種は結構あるんじゃないの?と書き連ねている体の話である。

しかしその傾向は正直第2話までで、第3話からはどんどん内容が水柿君の内側に、過去のエピソードに潜っていく。それらはミステリでは無くなり、本当に水柿助教授の日常話になってくるのだ。それは作者も確信的で最終話ではミステリィと見せかけてどんどんミステリィ風味を薄めていく、そういう「どんでん返し」を仕掛けていると述べている。
そして作中作者は事あるごとに「これは小説だ」、「これはフィクションだ」と述べているが、嘘つきが「嘘はついていない」というのと同様の信憑性しかない(と作者自身も書いていたような)。つまり本当のことを語りつつ、それらの中には未だ事項になっていない軽犯罪、微罪、そして重犯罪になり得る危うさを孕んでいるからこそ、そのように作り話だと主張しているようにも取れる。その割に固有名詞が多く、イニシャルもほとんど本当の場所が特定できるほど安易な物であるのだが。そのあまりの自由闊達ぶりに正直苦情など来ていないのだろうかと思ったり。特に津市に関する記述はここまでこき下ろして大丈夫なのだろうかと無用の心配すらしてしまう。

やはりこれは水柿君の日常としながら、これらは全て同じN大学の建築学科の教授である作者自身が経験した助手、助教授時代に経験した大学生活の思い出話、エピソード集なのだろう。従って水柿君の日常は「すべてが森になる」のだ。

No.7 5点 なな さんいち
(2003/12/28 21:34登録)
普通に楽しめました。

No.6 9点 YAMA
(2002/10/26 14:57登録)
この作品は間違いなくミステリーです。かなり楽しめました。ただ、三重県(僕のふるさと)を田舎扱いしすぎです。

No.5 6点 バナナフィッシュ
(2002/09/20 13:50登録)
「すべてがE」よりではないがマニアックな部類だと思う

No.4 3点 しゃん
(2002/08/17 09:05登録)
エッセイとして読んでも小説と呼んでも私にはその面白さがわかりませんでした。
少し冗長。ジョークらしき部分もさほど面白く感じられませんでした。
ほのぼのとした雰囲気は良いのですが

No.3 9点 一千花
(2002/08/16 14:48登録)
ミステリと意識せずによんでいました
やっぱり文章のはしばしに込められたユーモアに
センスを感じます でもシリーズものにするのは
ちょっと考えられないな エッセイ風?
なかなか好感のもてる作品です 

No.2 8点 G?予想家K
(2002/03/20 16:05登録)
ミステリと言えなくもないが、まあユーモア小説の割合が上でしょうね。でも実は森作品の中で再読回数が一番多い(笑)。変わったエッセイを読みたい方はどうぞ。

No.1 5点 Nakatz
(2001/08/12 00:04登録)
ミステリではないです。(笑)
森博嗣自身を水柿助教授なる架空の人物になぞらえた、エッセイ的な作品。
森作品が好きな人なら楽しめるかとは思いますが、ミステリとして期待すると
間違いなく裏切られるので、要注意。

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