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ミステリの祭典

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アンドロギュノスの裔(ちすじ)

作家 渡辺温
出版日1970年01月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 5点 蟷螂の斧
(2019/06/27 18:30登録)
夢野久作氏の「江戸川乱歩氏に対する私の感想」の中で紹介された『可哀相な姉』~素敵を叫ぶ~を拝読。昭和初期、モダンでハイカラがもてはやされた時代であったろうが、その裏で一部の女性たちは困難な生活を余儀なくされていた…そんなことが本作から浮かび上がってきます。ミステリー的には弱く、「嘘」を主題としたものが意外と多かった。
印象に残った作品
「少女」私は恋焦がれている乙女そっくりの少女を助け、キスをしたが・・・
「象牙の牌」昔の武勇伝のおかげで命を狙われいるというのだが・・・
「可哀相な姉」私は聾唖の姉に育てられ、やがて大人になった・・・
「勝敗」兄嫁が崖から転落死、兄弟それぞれが自分が犯人というのだが・・・
「遺書に就て」同居人が殺された。妻の遺書には私が犯人とあるのだが・・・
「アンドロギュノスの裔」Y君は女優に恋をし、毎晩彼女の家の様子を見張っていた。やがて女中が出て来て私に恋しているでしょうというのだった・・・
「兵隊の死」(ショートショート)死因について、シャアロック・ホルムスは頭をかいて当惑するのだった・・・

No.3 5点 abc1
(2011/12/16 09:30登録)
この時代の文章の香りが好きなので、まずます楽しめました。しかし、長い間埋もれていた(忘れられていた)理由もわかりました。5点中2点は東京創元社に。

No.2 4点 虫暮部
(2011/12/10 10:13登録)
 うーむ、時代的にミステリとしての構成や文体が未整理なことを差し引いても、“埋もれた秘宝”として騒がれる理由はよく判らないなぁ。あまり過大な評価は出来ません。

No.1 7点 kanamori
(2011/11/30 18:50登録)
戦前の探偵小説誌『新青年』で横溝正史の右腕として編集に携わりながら短編小説を執筆し、不慮の事故により27歳で夭折した伝説の作家・渡辺温の全集。

作風は幻想的と聞いていましたが、昭和初期の素朴でノスタルジーに満ちた、”影絵のごとき物語世界”という紹介文がピッタリです。その一方で、どんでん返し狙いのミステリ趣向の作品も結構あり楽しめました。
ミステリに限って感心した作品を挙げると、ラストのどんでん返しが意表を突く「象牙の牌」、二転三転するストーリーが楽しめる「遺書に就て」と「勝敗」など。なかでも、巧妙な伏線と唖然とする残酷なラストの「可哀相な姉」は最も印象に残った。
編集・装丁の素晴らしさと、これを文庫で出してくれた東京創元社に敬意を表して、採点にプラス1点献上。

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