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ミステリの祭典

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アリバイ崩し
ベストミステリー短編集

作家 鮎川哲也
出版日2011年05月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 5点 E-BANKER
(2016/12/03 20:38登録)
光文社編集による作品集。
タイトルどおり、テーマはまさに「アリバイ崩し」・・・というわけで作者の名人芸が堪能できるかどうか?

①「北の女」=“古川”って出てきた段階で、あのことかなぁーと思っていたらやっぱりそうだった。アリバイトリックそのものはそれほど高度ではないけど、電話やメモの使い方なんかはさすがと思わせる。
②「汚点」=舞台が仙台というのが珍しいなぁと思っていたら、やっぱり理由があったのね・・・。一応列車を使ったアリバイトリックが登場するけど、時刻表云々ではなくてアリバイトリックの王道のようなヤツ。タイトルが最後になって効いてくるのが旨い。
③「下着泥棒」=これは・・・どうかなぁー。下着泥棒に間違われた哀れな新聞記者が巻き込まれる事件を扱っているのだが、これもある小道具がアリバイトリックの鍵となっている。でも普通警察は気付くだろ!
④「霧の湖」=ロマンチックなタイトルだけど、真相解明につながる理由が温泉に纏るある事実にあるところはややいただけない。フーダニットも自明すぎ。
⑤「夜の疑惑」=これだけは中編といえるボリューム。それだけにプロットには工夫が凝らされていて、真犯人が用いた欺瞞もなかなか複雑。逆に言えばここまで複雑にする理由がよく分からないということになる。他の方も触れているが、ラストがなかなかの衝撃。「悪女だねぇ・・・」

以上5編。
アリバイ崩しとはいえ、鬼貫警部シリーズではないので、時刻表が登場するタイプではない。
場所の錯誤や時間の錯誤などを用いた、まさにアリバイトリックの正道が使われている。

ただ・・・地味だね。
短篇には切れ味が必須だと考えているわたしにとっては、ちょっと食い足りない作品集だった。
好意的にとれば、よくまとまっているとは言えるし、さすがの名人芸ではある。
評価はこんなもんだろう。
(一応⑤がベストかな。他はあまり差はない)

No.3 6点
(2016/09/09 10:27登録)
5編とも、どうやってアリバイを崩すかに注力している。まさにタイトルどおり。
ただし、フーダニットという観点ではほとんど魅力なし。
個別には、4編目の『霧の湖』のラストの解決手段には拍手をおくりたい。短編らしくうまくまとめてある。
最終編の『夜の疑惑』は中編といってよく、プロットもそれなりに練られストーリーは変転がある。人物もそれなりに描かれている。ラストの落ちは仰天物ではあるが、短編レベルのあっけなさもあった。もっとページ数を割いてしっかりとした謎解き物にできそうにも思うが、これもまたよしだろう。

アリバイトリックは個人的には好みだが、一般的には地味で、いまではメイントリックとしてはあまり使われない。本書のような短編ミステリだからこそ生きる技だろう。
本書はエッセイが2編プラスされている。わずかだがお楽しみ度アップか?

No.2 7点 斎藤警部
(2015/12/16 12:24登録)
北の女/汚点/エッセイ 時刻表五つのたのしみ/下着泥棒/霧の湖/夜の疑惑/エッセイ 私の発想法
(光文社文庫)

鮎川本で堂々『アリバイ崩し』と銘打つ割には巻頭「北の女」を除き比較的薄味の作が並ぶが、選集ではなく熱心なファン向け拾遺集なのだから、まして二本のエッセイを小説群の間にはさんだ贅沢なプレゼントなのだから、文句は全くありませんよ。鬼貫・星影は出て来ないよ。

No.1 5点 kanamori
(2011/11/04 20:35登録)
シリーズ探偵が出てこないアリバイ・トリックものを集めた短編集。
5編とも過去の短編集で既読のはずなのに、今回読んでも内容に全く憶えがなく新鮮だったのは、喜んでいいのか悲しんでいいのか、複雑な気分です。
収録作のアリバイトリックの基本は、時間の錯誤、場所の錯誤、人物の錯誤、またはその組み合わせな訳で、トリック自体は大した事ないのだけれど、探偵役の気づきに繋がる小道具の使い方が巧いです。そういう点で「北の女」や「汚点」などが特に印象に残った。
中編の「夜の疑惑」は、トリックそのものは面白味がないが、ノンシリーズならではの結末のつけ方が強烈でした。

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