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ミステリの祭典

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真赤な子犬

作家 日影丈吉
出版日1959年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 斎藤警部
(2020/01/23 18:00登録)
「ちかごろの探偵小説では、こういう人を犯人にするのは流行りません。」

或る女性登場人物の性質が象徴するような、奔放な形態の中でクールな諧謔をふりまき散らすコンパクト長篇。まあ安易に平たく言えばおフレンチ。 始まってしばらくは、読者だけに真相(?!)が明かされる歯がゆいサスペンス加速で魅せる。これは果たして見た目通りのサスペンスなのか、それともまさかの本格なのか。。って読者の気持ちを上手に弄んでくれます。 ’いもしない’犯人話?!? いつも二人セットでいるという先入観で!?!? まさかの探偵当て趣向も絶妙にフレンチな斜め前感。 クリスティ魂を凌がんとする真犯人意外性と、それすら上回らんとする動機の意外性!!そして意外極まる瞬発性!! だが、’もう一つの方’のホヮィは、、、たまらんのよ、この念押しの晒し方が。

「だが、殺すほどの必要もないのに殺すというと、たとえば、どんな場合ですかね?」

“雪上の足跡”トリックもなかなかどうして面白いぞよ。。(ちょっと笑うヴィジュアル含め) いっけんポップにふわふわしてるだけみたいな表題も、実は事件の核心部に位置しまくりだ。。。。 でもな、お洒落過ぎるのが悪いってのは無いだろが、何処かに不思議なお手軽さがあるのよね。もうちょいだけ業の深さで息も止めてくれたら、ミニマム8点でしたね。 そいや本作、女性登場人物率が異様に低いのに、何故か全体的にフェミニンな雰囲気横溢なんですよね。。。。或る気取り屋が「ノンサンス云々」と言う所に「ナンセンス云々」で言い返すくだり、笑いました。

「さいわい第二の事件があるので、これは二項方程式を解く時のように考えてみたら、いかがですかな?」


短い各章の表題がなかなか唆るので、晒しておきます。

A 危険な贈物
B 凝りに凝った呆気ない死
C 国務大臣秘書の異常な体験
D 死の利用価値
E 読者だけが知っている
F 本格物の退屈な部分
G 美食学的な死の前後
H お化け犬
I 家の中の山登り
J 推理の道標は曲がっていた
K 高雅な死と卑俗な蘇生
L 時の人は静かに寝てもいられない
M 手に負えぬ人々
N 推理の表と裏
O のんきな影武者
P 小犬の咀嚼力の問題
Q 探偵小説ファンは推理が上手
R 眼のよるところに玉
S 雪の上の死体とビヤ樽
T ダブル犯人説
U 二つの事件はどこでつながっているか?
V 緋色の研究(スタディ・イン・スカーレット)
W 人間的関係
X 綜合と集約
Y 殺人心理学
Z 結局どうなる?

↑ こう並べてみると、今時のJ-ROCKバンドの曲名一覧みたい、若干。


「放心の犯罪?」

No.2 6点 nukkam
(2015/01/27 13:30登録)
(ネタバレなしです) 1959年発表の長編ミステリー第2作で、作者のトレードマークである幻想的作風はまだ見られませんがそれでも初期代表作と評価されるにふさわしい本格派推理小説です。同時代の社会派推理小説とも味気のない本格派推理小説とも違うところを目指していただけあって個性豊かな作品です。自殺希望者が殺されるという不思議な事件に始まり後半には不可能犯罪も発生しますが、謎解きだけでなくバラエティーに富む人物描写や控え目なユーモアも作品の個性です。

No.1 6点 kanamori
(2011/02/05 13:46登録)
昭和30年代に出版されたとは思えない、軽妙で垢ぬけした本格ミステリでした。
まず、個性的な登場人物が揃っています。国務大臣である父親と歌手の娘のコンビもいい味を出していますが、大臣の影武者にさせられる探偵小説マニアの守衛のおじさんがいい。この時代にセイヤーズを読みながら、終盤に意外な役割をします。
ふたつの事件、社長の墜落死と足跡のない殺人は、バカミス的な真相かと思っていたら、割とまともだったのは残念。

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