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ミステリの祭典

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休日の断崖

作家 黒岩重吾
出版日1960年01月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 斎藤警部
(2017/04/26 00:11登録)
上等な紙巻き烟草の如く味わい深い造形の探偵役川草。物語の根幹は、社会派より所謂「会社派」の匂いが強い本格ミステリだが、この川草の立体的に苦い存在感には鮮やかな社会派フラグが遠望出来る。

最後、物理的にはともかく心理的に唐突感有りの微妙にバカなアリバイトリック推測&自白暴露になだれ込んじゃって。。ミステリのスケール感が縮んで大きく減点だなあ、惜しくも7点に届かない6.43まで落ちました。なお余裕の合格点ですけどね。

No.3 6点 クリスティ再読
(2016/09/05 21:09登録)
本作は無頼派の業界紙社長が、友情の名のもとに、ビジネスマンの友人の死の真相を探るのと同時に、いわれなき汚名を晴らそうとする...というわけで、一見ハードボイルドっぽく見える筋立てなんだけど、「背徳のメス」と比較するとそれほどハードボイルドな印象ではない。
まあ、イマドキの私立探偵小説だったらこんなんもアリなんだろうけど、主人公は友情とか正義とか大義名分の立つ感情に則って動いている分、「社会派」になっている感じもするな。
あ、本作一応アリバイ崩しもの。清張の「点と線」とか「時間の習俗」だって社会派アリバイ物のわけだが...まあリアリティはあるけど、期待するようなもんじゃないか。どっちかいうと共犯者の動きかたとかもう少し工夫ができたかな、とも思う。
まあ、ママのいるクラブっていういかにも昭和なオヤジ世界を中心に描いた作品で、そこらにレトロな価値を見出すのもアリかもしれないね(あと飛田とか今でもあんな感じみたいだよ。時が止まってんな)。

No.2 7点
(2011/02/10 21:02登録)
同じように松本清張から影響を受けて、社会派と呼ばれるようになる推理小説を同時期に書き出した作家の中でも、水上勉の暗い叙情性に対して、黒岩重吾の持ち味は、臣さんも書かれているようにハードボイルドっぽい感じもする、肉食系の粘っこい力強さのようです。
犯人が使ったトリックは平凡ですが、これくらいの方がむしろ小説のスタイルに合ったリアリティがあると思いますし、犯行計画全体として見ると無駄なくきっちりと組み立てられています。まあ真相解明部分については、こんなことをして証拠能力があるのかと思えるところは気になりましたが。
被害者の未亡人の人物設定は意外性もありますし、非常に印象的です。彼女に対する、主人公である新聞社社長の感情も、なかなかいい感じです。

No.1 7点
(2010/09/12 18:07登録)
「背徳のメス」の直前に直木賞候補になった作品です。
冒頭から事件発生までの導入部は秀逸です。これぞミステリ、背筋がぞくぞくしましたね。このうまさは清張作品なみ。清張だといわれれば信じたかもしれません。主人公・川草のキャラクタもハードボイルドっぽくて良い感じが出ています。
主人公の友人・十川の突然の死の謎を川草が仕事を犠牲にして追う展開。ミステリとしては、アリバイ崩しがメインで、トリックというほどのものもなく、全体として初心者向きかもしれませんが、伏線はうまいように思います。それに、女性が多く登場し、素人探偵・川草とのやりとりなど、人物がうまく描写されており、物語性とあいまって読者を引き寄せてくれます。その辺は抜群のテクニックです。
好みからいえば「背徳」よりは上、黒岩らしさからいえば「背徳」が上なのかもしれません。二作しか読んでないので、本当のらしさはわかっていないのですが。

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