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ミステリの祭典

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シューマンの指

作家 奥泉光
出版日2010年07月
平均点4.60点
書評数5人

No.5 7点 麝香福郎
(2022/07/13 19:23登録)
かつて音大を目指す自分の前に現れた年下の天才少年ピアニスト修人に、憧れを募らせながらも、彼が指を失った事件をきっかけに、音楽の世界とは縁を切った「私」が、三十年前を振り返る手記という形で展開される。
「私」の卒業式の夜、音楽室のピアノで修人が奏でたシューマンの「幻想曲ハ長調」。その類まれな演奏に聞きほれているさなかに起きた殺人事件。
シューマンの生涯と楽曲をモチーフに、若き芸術家の苦悩という古くからある文学テーマを奏で上げた、美しい音楽本格ミステリ。音楽は「イデアの中に在る」という意見を中心に展開される音楽論も、知的好奇心をそそって魅力的。

No.4 4点 makomako
(2019/11/18 18:40登録)
 私はクラシック音楽が大好きです。それでもこの作品を読むのは大変でした。
 ドイツ語の地名がたくさん出てくる。日本語で書いた方が断然読みやすいが、原語が作者の好みなのでしょうね。
 こんな小難しいシューマン論を延々とされて、しかも音楽は演奏しなくてもそのままでよいなどと言われても、おおいに感動というわけにいかないのでは?
 だいたいダヴィット同盟や謝肉祭などはかなりのクラシックファンでなければあまり聞いたことがないのではないでしょうか。
 奥の方にしまってあるダヴィット同盟のピアノを引っ張り出して聞きながらこの本を読んでみたのですが、やっぱり私の趣味には合わないようです。
 最後は推理小説となってはいるのですが、途中で大体内容が推察できてしまい、まあこんなもんだなあといった感想でした。

No.3 7点 びーじぇー
(2019/08/06 17:18登録)
天才ピアニストの永嶺修人が、指を失って30年。私は修人の指が心霊手術で復活したとの噂を聞き、シューマンに魅せられた修人と過ごした高校時代の回想を始める。ピアノから遠ざかっていた修人が、奇跡のようなシューマンの「幻想曲」を演奏するのを聞いた日、私は、殺された女生徒がプールに投げ込まれるのを目撃する。
オカルトの秘術を使った指の再生、「幻想曲」が鳴り響く中で行われる殺人劇、悪魔と音楽をめぐる議論などの夢幻的な要素も濃厚だが、事件の謎はきっちりと論理的に解明されている。
殺人事件というよりも、シューマンの生涯や音楽論、私が天才の修人に抱く羨望と嫉妬が軸になっているので、芸術家小説、青春小説としても面白いが、謎解きの場面では、事件とは無関係に思えた記述が、実は重要な伏線になっていることが明かされるので、衝撃も大きい。緻密に構築された物語だけに、すぐに再読したくなる。

No.2 3点 yoshi
(2014/09/22 21:03登録)
「グランドミステリー」や「軍艦橿原殺人事件」など、ミステリーファンならばつい手に取ってしまうタイトルを著して来た著者ですが、実際読んでみると、とてもミステリーとは言えない代物ばかり・・・。
それらと比べると、まだ納得いくオチがつけられているだけマシかも知れませんが、このオチはやはり微妙。

No.1 2点 abc1
(2011/03/25 16:11登録)
シューマンの薀蓄は面白かったが、ミステリとしては一番嫌いなオチだった。そもそも薀蓄と事件が全然結びついていないし。作者はただシューマン論を書きたかっただけでしょう。
ミステリと芸術論を見事に融合させている深水黎一郎の偉大さを改めて実感。

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