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ミステリの祭典

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せどり男爵数奇譚

作家 梶山季之
出版日1983年02月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 斎藤警部
(2018/05/19 10:37登録)
おいら、人様の病膏肓(やまいコーコー)趣味話をうかがうのが好きでしてねえ。自分は絶対そこまでしねえよ、と呆れつつ、その道の専門家様が滔々と語り紡いでくれる魅惑のストーリーにはついウットリ聴き入ってしまうのでございます。。なわけで、ハイエンド古本売買の魍魎世界に材を取り、薄ッすらミステリ香漂う本書は私にとってマグネット効果覿面のちょっとしたB級グルメはしごツアーなのでございました。

色模様一気通貫/半狂乱三色同順/春朧夜嶺上開花/桜満開十三不塔/五月晴九連宝燈/水無月十三么九

本書、前述した如く、探偵小説要素は霞のようにうすら淡い短篇が主体ではありますがその淡さこそ、えも言われる魅力の大事なバランサー要素でございますね。そんな中で突出してミステリ領域に喰い入って来るのが「十三不塔」。これは異色作ですが、一般娯楽小説に近い他の作品群と連環してみなそれぞれの読み応えがあります。 尚、全作とも麻雀の上がり役に因んだ表題が付けられており、それぞれのストーリーを暗示しておるわけで。。。(みんな、もっと麻雀しようよ!) 清張譚との接点が何気なく連発するのも魅力です。 近年「ビブリア古書堂」で言及され、知名度が回復しました。

No.3 7点 makomako
(2013/03/14 21:20登録)
 なかなか面白い。発行当時の感覚と今は多少のずれがあることにちょっとビックリ。私にとってこれが発表されたのはちょうど大学時代から社会人となっていった時期なのだが、そういえばこんな感覚だったようにも。
 中共やソ連といった言葉も久しぶりです。最近は大学時代は講義よりクラブとマージャンの時間が長かったような気もするのですが、最近ではマージャンもあまりやらなくなり、各話ごとのマージャンの役の名前もひょっとしたら若い人たちは分からないのかもしれない。
 そういったことも含めてわたしとしては面白く読めました。

No.2 5点
(2011/01/11 14:28登録)
年末に新聞で著者に関する記事を読んだこと、そして「せどり」という字句から興味を抱き、読んでみた。
主人公であるせどり男爵こと笠井菊哉が数奇な人生を歩んだわけではなく、その職業柄出会ったビブリオマニア(書物蒐集狂)に関する奇妙な出来事を連作短篇形式で語って聞かせるという程度のものである。なかには猟奇的でぞっとする話もあったが、どの短篇も謎解き要素はすくなく、最終話で一挙解決というような連作物の定例パターンもない。とはいえ、古書蒐集にまつわる薀蓄にはけっこう楽しめた。6話あるが、そのサブタイトルに麻雀の役名が含まれているのが面白い。十三么九(シーサンヤオチュー)というのがあったが、これは国士無双の別名のようだ。知らなかった。
ブックオフで買ってアマゾンかヤフオクで売るのが当世のせどりだが、本書の「せどり」はスケールが違っていた。

No.1 7点 江守森江
(2010/08/19 12:39登録)
作者得意のスケベなサービス精神を発揮したエンタメ作品ではなく、世間から見れば一風変わった別世界である古本業界での珍事を描いた異色ミステリー。
今では普通に使われる「フェチ」の存在を世に知らしめたのが作者の作品の数々で、この作品は古本フェチ日記と言った趣で、古本のせどり(背取)の世界が描かれる。
面白いか?と問われれば「否!」と答えてしまう作品だが、本にたいしてのフェチな愛着には非常に共感できた。
収納の問題で蔵書の8割方を古本屋に売却した時は、失恋同様に心が張り裂けそうだった事が思い出される。
この作品を初読した当時は「蔵書に埋もれて死にたい」と本気で思っていた。
※余談
今では地元図書館が自分の書斎で、23区内の図書館全部が大きな書庫だと考えている。

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