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ミステリの祭典

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黄色い風土

作家 松本清張
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 7点 斎藤警部
(2017/01/18 00:35登録)
清張たのしい通俗。人が快調にヒョイヒョイ死ぬよ。まさかの人までヒョイと死ぬ。調子いい偶然ポンポン弾け、いよいよおォッと目をミハる、ってな寸法だ。

社会派を確信犯でダシに使ったつもりが、ついうっかり滲み出ちまった深淵なる社会派魂にちょいと染め上げられてしまいました、そんな感じだ。それでも、物語の核たる部分は飽くまで通俗スリラー(陰謀系)ではなかろうか?

思うに、しまそうの「奇想」なんかはその真逆で、本人の社会派たる覚悟にはいささかの踏み込み浅さが垣間見えるにも関わらず、物語そのものはほぼ完璧なる「本格にして社会派」として立派に成立しているんでないか? やはりバランスの問題か? 不思議なものだ。

鰊に、古代文字。。 わたしも日本のO.V.Wrightこと宮史郎さんは大好きなんですが、本作の主人公は若宮四郎という名の爽やかなる青年。熱海に住まう「松村京太郎」氏の名前も気になる。その夜の銀座裏はいいね。。

犯人は意外な人物です。でも途中でその「いかにも意外オーラ」と露骨度強のヒントちら見せで分かっちゃいます。だけど最初に登場した場面ではまったくのノー・ノー・ノーマークでした。いつこっそり物語に合流したのかさえ記憶は曖昧。相当に手練れの犯人隠匿と思います。嗚呼、清張。



【ここから、犯人イニシャルネタバレ】

今時の作家だったら、真犯人にして黒幕のMをむしろダミーに、Kを真犯人に設定するのかな、なんて途中で思ったけど、Mを黒幕にする昭和らしい設定も大いに味わい深いです。うん、Kが黒幕を張るような世界は嫌だな!短篇小説だったら面白いが。

【犯人イニシャルネタバレここまで】



突然の犯人視点で締めるエンディング、めちゃめちゃ残りますね。

それと、あの●●が最後に颯爽と艶やかに登場、なんて事にはしなかった清張の剛直な筆さばき、何とも言えねえ!

No.3 5点
(2012/05/26 19:18登録)
これも久々の再読ですが、覚えていたのはラスト・シーンだけで、事件概要も黒幕の正体も全然記憶にありませんでした。確かにこのラストは、今読んでみてもなかなかインパクトがあります。
文庫本で750ページ近い大作で、殺される人間の数も10人という多さです。自殺や事故死に見せかけた溺死が多いのですが、明らかな殺人もあり、犯罪者一味はそれらにどう区別をつけていたのか、考えてみればかなりいいかげんです。まあ論理的に詰めていくと、松本清張作品の大部分はかなり穴があるものですが。またseiryuuさんが指摘されている2つの偶然の内でも、由美のことがわかる方は、いくら何でも安易すぎます。
それでも組織の見当がついてくるあたりまでは、やはりおもしろく読ませてくれたのですが、最後に明らかになる黒幕の正体は、何だかなあという感じでした。
なお、雑誌連載時には『黒い風土』のタイトルだったそうですが、作者が好んで使う「黒」をなぜ「黄色」に変えたのか、不思議な気もします。

No.2 6点 seiryuu
(2010/11/07 15:16登録)
主人公の移動距離がすごいw
交通費はいくらになるんだろうと思ってしまった。
緻密な設定と複雑な人間関係で
被害者も多数で中盤までは読み応えがありました。
でも主人公と由美のつながりと岩淵の身元判明は偶然すぎてできすぎに思いました。
後半のサスペンスも面白かったけど、結末は中途半端で清張作品らしくないなあと思いました。
叙情シーンがないのも寂しい。
ラストシーンは用意周到な犯人らしくないと思いました。

No.1 6点 kanamori
(2010/08/12 18:17登録)
「影の地帯」などと同系統の陰謀物サスペンス大作。
雑誌記者が、ふとしたことから連続する殺人事件に巻き込まれ、事件の裏には謎の集団が、というお約束の展開です。
シリアスな社会性とか抒情性とかはどちらかと言うと二の次で、謎を追うサスペンスが一番の読みどころ。ご都合主義でプロットにも細かい破たんがありますが、リーダビリティは抜群でした。

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