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ミステリの祭典

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警視庁草紙
明治もの

作家 山田風太郎
出版日1975年01月
平均点8.00点
書評数4人

No.4 6点 ボナンザ
(2021/11/23 22:42登録)
良くできた物語だと思う。本当に見てきたかのような描写が見事。

No.3 8点 虫暮部
(2021/11/21 12:43登録)
 ミステリ的な捻りは乏しく、物凄く面白い話と言うわけではない。結構悲惨なエピソードも含む。
 しかしそれでも尚、行間のそこここに“碌でもないことばかりでも、どうにかやって行くしかないのヨ”と嘯いているような、浮世に対する清濁併呑の肯定性が感じられて、それがとても良い。出しゃばり過ぎないユーモアも効いている。
 個人的偏見だが、それは横溝正史『悪魔の手毬唄』で感じたムードに似ている。
 
 ただ、俄に納得しがたい結末には暫し呆然……。

No.2 10点
(2019/01/23 08:25登録)
 「魔界転生」「妖説太閤記」とともに、作者が自選ベスト3に選ぶ力作。とんでもない密度の娯楽小説です(特に上巻)。
 たとえば第一話「明治牡丹灯籠」ではオリキャラの主人公たちがある事件の嫌疑をかけられた三遊亭円朝(実在の落語家)を助けるのですが、その事件が円朝作品の「怪談牡丹灯龍」をなぞった密室殺人であり、さらにその疑いを円朝自身が寄席で「怪談牡丹灯籠」を発表することによって晴らすという趣向になっています。
 つまり、山風作品が円朝作品に取り込まれ、さらに円朝作品の元ネタになっているという、ウロボロスの蛇のような構造になっているわけです。
 さらに第一話を読んでいくと、しれっと三河町の半七が実在人物として登場します。このお話では実在の人物だけでなく他人様の作品のキャラも出て来ますよ、という作者の合図です。
 一話ごとにこのような趣向を凝らした短編、全十八話で構成されています。
 この作品は独立して読める短編を数珠つなぎにした連作短編ですが、ある話のチョイ役が別の話では意外な役割を努めたり、モブかと思われた人間が歴史上の人物だったり、二百人を超えるであろう実在架空の人物たちが入り乱れる中、縦横に複線が張り巡らしてあるので全く油断出来ません。
 さらに前述のように短編自体が三遊亭円朝のパロディだったり、森鴎外のパロディだったりします。架空の事件を解くだけでなく中には歴史推理、明治維新史上の未解決事件を解決するものもあったりします。
 これだけのアイデアを一作にぶち込んだのは、明治時代を舞台とした時代小説が発表前までほとんど無かったからでしょう。全く新しい分野を自分が開拓する、読者に受け入れられなければこの一作で打ち止めになるかもしれない、そんな気持ちで書かれたものだと思います。
 幸い、山風の明治物はこの後も書き継がれますが、ここまでの密度の作品はこれ以後にもありません。
問題があるとすれば、溢れんばかりの趣向を読み解く力が読者にあるかどうかでしょう。噛めば噛むほど味が出る、スルメのような小説です。

No.1 8点 kanamori
(2010/07/10 18:09登録)
警視庁創設まもない明治初期を舞台に、新警察体制相手に挑戦する面々を描いたコンゲーム風連作時代小説。
元南町奉行所の面々が川路大警視をはじめとする新体制側をおちょくる数々の策略が痛快です。
当時の有名政治家や文豪が思わぬところに顔を出す読者サービスも満点で、時代の雰囲気が実によく出ていると思いました。
新体制VS旧体制という構図の行く末は予測がつくものの、非常に余韻の残る終り方です。

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