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ミステリの祭典

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機械探偵クリク・ロボット

作家 カミ
出版日2010年06月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 8点 クリスティ再読
(2024/01/22 12:54登録)
いやこれ素晴らしいよ。「ルーフォック・オルメス」「エッフェル塔の潜水夫」より凄い。クリク・ロボットが代表作で評者は異議がない。
この本は中編集で「五つの館の謎」「パンテオンの誘拐事件」の2中編に、ハヤカワ文庫版はコント2つをオマケ。「推理バルブ」「仮説コック」「短絡推理発見センサー」「思考推進プロペラ」「論理タンク」「真相濾過フィルター」などなどをフル装備した機械探偵クリク・ロボットが、発明者のジュール・アルキメデス博士と共に、難事件に挑む!クリクは四角い顔にチロリアンハットをひっかけ、口にはパイプ(でも仕掛けで催眠ガスを出すぞ!)、金属的な声でしゃべったりもするし、録音したりTVで中継したり....のくせに、肝心な推理は判じ物のなぞなぞを印刷して口から出す(苦笑)。名探偵の思わせぶりってモノだ。
「五つの館の謎」は銃声が響いたのに、額に突き立ったナイフで死ぬ男。その真相を巡っての「本格推理」。いやちゃんと「合理的」な解決がある(苦笑)。これもなかなかイイんだが、偉人の遺骸を祀ったパンテオンからヴォルテール・ルソー・ユーゴ―・ゾラの遺体が身代金誘拐される「パンテオンの誘拐事件」はホントに素晴らしい。特に誘拐の動機やら完全犯罪?なオチが評者は大のお気に入り。確かにアメリカならマーク・トゥエインやチャップリンがパンテオンに祀られるよね~と大納得する。ユーモリストの面目躍如。

いちばんユーモアにあふれているのは、"死神"だということになるね。

メルヘン的なユーモアに満ちているから、子供向けと思われるかもしれないけど、実はユーモアをユーモアとしてしっかり理解するのは、大人の仕事なんである。

この本はダジャレが多いんだけど、しっかりダジャレを翻訳(というか日本語にアレンジ)した訳者のご苦労が偲ばれる。さらにカミ自身による挿絵が大量に入っていて、これがまた素晴らしい。

No.3 5点 八二一
(2019/11/28 14:22登録)
フランス語のダジャレを、片っ端から日本語のダジャレに変換した、この翻訳は神業。ほっこりする素敵なユーモアミステリ。

No.2 6点 kanamori
(2014/03/06 20:54登録)
古代ギリシャの天才発明家の直系子孫であるアルキメデス博士と、彼が発明した機械仕掛けのアナログ・ロボット”クリク”とのコンビによる推理・冒険譚の中編2編収録。文庫版には特別付録としてショートコントが2題付加されています。
フランス風のとぼけたギャグと、数ページ毎に出てくる素朴な挿絵で、思わず口元が緩むユーモア・ミステリ。クリクが口から出す暗号文の推理回答や数々のダジャレが、日本語でも意味が通じるように意訳・改変された内容になっており、この翻訳者の仕事ぶりがお見事です。

「五つの館の謎」は、フーダニット&ハウダニットを問う謎解きモノの本格ミステリ風で、連続盗難事件、銃声、凶器のナイフという3つの伏線をつなげた真相が鮮やか。
「パンテオンの誘拐事件」は、フランスの偉人が眠る霊廟を舞台にした冒険スリラー風。地下墓地(カタコンベ)の細部描写も堂に入っており、ドタバタ劇で使用するのはもったいないぐらいwの魅力的な設定がいい。
ともに、ハチャメチャな展開のように見えて、最後はキッチリ収束させており、お笑いだけのミステリでないことに感心しました。

No.1 6点
(2012/10/20 14:34登録)
著者は正しくは、ピエール・ルイ・アドリアン・シャルル・アンリ・カミ(1884-1958)。ホームズ時代のフランスのユーモア・ミステリー作家です。

本の裏表紙の解説を見ると、「五つの館の謎」「パンテオンの誘拐事件」の二大巨篇を一挙収録とある。あとで読めば、この文章自体にも笑えます。というぐらい本篇は大爆笑ものなのです。10点満点に匹敵するほど、印象に残る作品でした。

クリク・ロボットはアルキメデス博士の発明品で、クリクには眼窩式カメラ、鼓膜式録音マイクなどのアホらしい道具が搭載されています。ネーミングがドラえもんのひみつ道具みたいで、日本人にも親しみやすいのでは。
それに挿絵がなんとも味わい深い。これだけでも評価できます。ちょっと読み返すときなんかは重宝しますしね。

話そのものは2篇とも、クリクが吐きだす暗号文が事件を解く手がかりになります。この暗号文をもとに解決に至ります。なお暗号文は日本向けにアレンジしてあり、これももちろんお笑い謎解きです。
日本語の多くの駄洒落も登場しますが、翻訳者の高野優さん、ほんとうにご苦労さまです。

それにしても、『五つの館の謎』の、「庭に一発の銃声が鳴り響き・・・額にナイフの突き刺さった男が倒れた」という第一章で提起される謎はなんとも魅力的ですね。クリクとアルキメデス博士は、この謎をいかに解明するのでしょうか?

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